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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
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39.夕食の場で報告

 お風呂から上がった僕達は時間的にも丁度良いので夕食を摂ることにした。といっても僕は食事の合間に伯爵に報告する必要があるので別行動だ。フィディはともかく他の皆は突然ここの一番偉い人と食事だって言われても、緊張させて困らせてしまうだけだろうから客室で食べてもらう。そっちはサラとティーラに同席してもらってるし問題は無いだろう。


「なるほど、事情は分かりました」


 食事を摂りながら今日あった事を掻い摘んで説明すれば、伯爵は特に問題ないと頷いてくれた。


「しかし問題はその新アルフィリア教の司祭を名乗る男ですね。

 先に伝え聞いた情報によれば誘拐、奴隷売買の他、密輸などにも手を出している様子。

 早々に捕縛すべきですな」

「それなのですが、少し泳がせようと思っています」

「ほう」


 別に今日あの場で司祭を消してしまっても良かったんだけど。折角だからもう少しだけ役に立ってもらう予定だ。


「見たところあの司祭はそこまで特出した能力は持って無さそうでした。

 つまり地下に捕らわれていた者たちを自力で捕らえたとは考えられません。必ず誘拐や密猟を専門とする者と繋がりがあります。またあの地下にはかなり目立つ魔獣まで居ました。あれを領都内に運び込むのは通常の手段では無理です」

「ふむ。内通者が居るという事ですな」

「ええ。まぁ単純に賄賂を貰って通したという可能性もありますけどね」


 今回の事で司祭がどう動くか。

 まず目が覚めれば屋敷の中に自分しかいない事にすぐに気付くだろう。彼からすれば金貨2000枚で僕に売った認識だ。その前のタリスマンも合わせれば金貨2020枚か。相当な額だな。きっとすぐに回収しようとするだろう。だけど証文はない。なので正規の手段で取り立てることは出来ない。

 司祭が取れる行動は恐らく3つ。

 1つ目はどうにかして僕と直接接触して支払いを求めることだ。子供の僕相手なら証文が無くても何とかなると考えるかもしれないし、今日と同じ手順で屋敷に招いて毒草茶で言う事を聞かせればいい。

 2つ目は自分の内通者に連絡を取って支援を取り付けること。内通相手が定期的にあの屋敷に来るのかどこかで待ち合わせするのかは分からないけど、多分そう遠くない内に会うはずだ。

 あと最後に新アルフィリア教の教団員にお布施(カンパ)を求める。ただこれは余程敬虔な信者じゃないと大した額は出してくれないだろう。信者の中には商人なども居ると思うけど、そういう人達はお金の匂いに敏感だから司祭が落ち目だというのにすぐ気づくはずだ。そうなれば見限ってしまうだろう。


「僕としては彼が内通者と会っている所を取り押さえたいと考えています。

 もしかしたらその内通者が僕を誘拐しようとするかもしれませんし。その場合は敢えて捕まって彼らのアジトを突き止めるのも手ですね」

「あまり危険な事をして欲しくはないのですが。王子には言っても無駄でしょうな」

「大丈夫ですよ。直接僕に何かしてくれるのであれば大抵の事は防げますから」


 むしろ警戒すべきはサラやティーラに手を出してくるパターンか。たかだか7歳の子供相手にそんな回りくどい手を使ってくるとは考えにくいけど、仮に相手がプロなら子供相手でも油断はしてくれないかもしれない。


「仮にサラ達を人質に取るようなことがあれば……」

「……お、王子?」

「あ、いえ。そうならない事を祈りますよ」


 いけない。ついつい黒いオーラを発してしまった。食事中にそういう暗い話は良くないよね。ここはちょっと明るい話に変えてしまおう。


「そうそう。聞いているとは思いますが、その司祭の屋敷で捕まっていた子たちを保護しました。

 今日の所は客室をお借りしてそこで寝てもらう予定です」

「ええ。聞いたところによると、ゴブリンに翼人にエルフですか。

 ゴブリンはともかく他の2人は珍しい種族ですな」


 王都ならともかくこの伯爵領ではほとんど見かけないからね。多分外に出れば注目を浴びること間違いなしだ。そうなればすぐに司祭の耳に届くだろうしちょっと面倒かも。


「それで明日以降はどうするのですかな?」

「実はまだ決めていません。時間もあまりなくてまだ彼女らの事情を聞いてないんです。

 ゴブリンのキャロはゴブリン王国から来たと思われるので本人が帰りたいというのであれば明日にでも森に送り届けて来ようと思います。

 翼人のエンジュは恐らく行くあては無いでしょう。なので本人が嫌がらなければ僕の付き人のひとりになってもらう予定です。

 一番の問題はエルフのフィディです」

「エルフの幼女ですからね。後ろ盾も無いとなればまず間違いなく良くない者たちに再び攫われるでしょう。その先は好色家に売られるのが関の山でしょうか」

「あ、いえ。その心配はあまりしてません」


 少し話しただけでも分かったけど、フィディはかなり強かだ。今回あの地下室に捕らわれてたのだって自分で入っていた可能性もあると見ている。


『あれならタダで食べ物と寝床が手に入るでしょ?』


 とか言いそうだ。

 サラくらいの年齢なら愛人にしてしまおうと考える変態が続出するだろうけど、幼女と言えるあの姿なら手を出すド変態は少数派だし、それも計算に入れてるだろう。魅了の魔法も使っていたから、いざとなれば攻撃魔法も駆使して逃げ出すことだって出来ただろう。

 

「まあ根っからの悪い子ではないと思いますので大丈夫です。

 少なくとも伯爵達のご迷惑はかけさせません」

「ふむ。その心配はしていませんよ。

 むしろ私としては3人共将来は愛人として囲み込みたいと言われても驚きはしません」

「伯爵は僕の事をどう見てるんですか」

「はっはっは。良い男にはそれだけ良い女を求めるものです。

 あ、いえ、も、もっとも。私は妻が居れば十分ですがね!!」


 途中からじろりと夫人に睨まれて補足を入れる辺り、だいぶ尻に敷かれてる感がある。まぁ幸せそうだから良いんだけど。



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