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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
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37.さあ帰ろう

いつもお読みいただきありがとうございます。

実はこの辺りの話は元々1、2話くらいでスパッと終わらせる予定だったんです。いっぱいキャラが増えてますが、彼女らも当初出てくる予定はなく。

まぁ出てきたからには頑張ってもらいましょう。


 ようやく外に出れた。元々新アルフィリア教ってどういう集団なのか実際を知りたくて誘いに乗っただけなのに随分と色々あったな。振り返れば翼人にゴブリンにエルフに狼とまるで種族のバーゲンセールだ。って、このまま街中を行くのは問題があり過ぎるな。特に狼。


『えっとごめんなさい。あなたが街中を歩くと大騒ぎになりそうなんだ』

『うむ、そうであろうな。

 こちらとしては助けてもらった礼が済めば早々に街から立ち去るつもりだ』


 お礼かぁ。今は特に困ってることとかも無いんだよね。むしろバックラー伯爵も突然僕が狼を連れて帰ったら困ってしまうだろうし。


『なら街から去った後、人間をあまり襲わないで欲しいんだけどお願いできる?

 もちろん攻撃されたら自由に反撃して良いし、あなたを攫った奴らが相手なら気にせず攻撃して良いんだけど』

『ふむ。それくらいならお安い御用だ。他にはないのか?』

『今は無いかな』

『そうか。なら仕方ない。礼はまたの機会にするか。

 長居して迷惑をかける訳にもいかない。夜を待って街を出るとしよう。

 それまでは、適当に屋根の上で昼寝と洒落こむか。

 ではまた会おう。さらばだ』


 一瞬、僕のお腹に鼻先を付けた狼は風のように屋根の上に行ってしまった。まああそこなら同じように屋根に上らない限り見つかることも無いか。

 去って行った狼を見送りグントに向き直る。


「グント、伝言をお願いしていい?」

「はっ、魔物ハンターギルドと警備隊詰所で良いですか?」

「うん、それで」


 グントには関係各所に白い狼を見かけても攻撃しない様にと伝達してもらう。これで少なくとも人間側からあの狼を討伐したりすることは無いだろう。

 後はこの異色パーティーを目立たずに領館に招待するだけだ。でもこれ、絶対目立つよなぁ。1人くらいなら僕が隠せるんだけど3人は厳しい。

 と悩んでた所でフィディが胸を反らして言った。


「仕方ないから手を貸してあげるわ」


 サッと手をかざせばフィディを含めた3人が魔法の光に包まれる。その光はすぐに消えて、出てきたのは人の姿をした3人だった。といっても、フィディはエルフの特徴とも言える耳が髪に隠れて、エンジュは背中の翼がマントに見えて、ゴブリンの子は肌の色が僕らと同じようになっただけだけど。


「他人からの見え方を変えただけだから違和感とか無いでしょ?」

「?」

「ん、おぉ。手が白い。マジュルカの汁を浴びたみたい。変!」


 いまいちわかってないエンジュと、ちょっと嬉しそうなゴブリンの子。っていつまでもその呼び方は良くないな。


「よし、問題なくなったのなら行こうか。

 それと君はなんて呼べばいいの?」

「あたしか? キャロって呼んで」

「キャロか。僕はアル。

 よろしくね、キャロ」


 歩きながら握手を交わすとなるほど。見た目は人間の女の子とほとんど変わらないのに手の感触はちょっと硬め。ゴブリンだからっていうのもあるけど、日頃から農業なのか狩猟なのかは分からないけど道具を振り回している人の手だ。

 キャロはキャロで僕の手を握るとどこか嬉しそうだ。


「アルの手はあったかいな。お日様みたい。ポカポカだ」

「お、そうなのか」

「アル様は無意識に触れた相手に癒しの魔法を送ってますからそのせいかと」


 あぁなるほど。日常的な訓練として常時体内の魔力を循環させてるからね。触れた相手にはその魔力が伝わってしまうのか。

 そう思っていたらエンジュがちょっと羨ましそうに僕らを見ていたので、空いている方の手でエンジュの手を握ってあげた。


「ご主人様の手、あったかい」


 はにかむ様子はどことなく小動物を彷彿とさせるな。手が空いてたら頭を撫でてしまう所だ。

 そう言えばエンジュの治療は応急処置しか出来ていなかったし帰ったらやろう。

 並んで歩く僕らをティーラとフィディが楽しそうに見ている。


「ふふっ。アル様、両手に花ですね」

「英雄色を好むって奴かしら?

 なら折角だから私もくっついてあげるわ。とうっ」


 何を思ったのかフィディが僕の背中に飛び乗って来た。これで僕は両手と背中が塞がってしまって残るは前だけ。ふとその様子を見ていたティーラと目が合うけど。


「えっと、流石にティーラに前からくっつかれたら歩けないからね」

「わ、分かっております」


 どこか残念そうに言うティーラ。帰ったらサラも一緒に何か埋め合わせしておこう。

 僕らはくっついたまま貴族街を抜けて商店街へと出てきた。時刻は夕暮れ時とあって人はまばらだ。僕らはフィディの魔法で変装しているから目立たない、なんてことは無かった。


「ようアル。モテモテだな!」

「なんだよアル。また新しい子に手を出してるのかい?」

「サラさんとティーラさんだけじゃ足りなかったってか」

「ちょっ。人聞きが悪いよ。またって何!?」


 口々に僕の事を揶揄う商店街のみんな。いつも視察で歩き回ってるからね。普段からサラとティーラを連れてるのは知ってるし、気心が知れているというか友達感覚で僕を弄ってくるんだ。


「よし、残りもんで悪いが、良かったら持っていきな」


 そう言って果物屋のおじさんがリンゴを皆に渡してくれる。フィディはさも当然と言った感じで受け取り、キャロも素直に受け取ってる。でもエンジュはちょっと困惑しながら僕を見た。多分見知らぬ誰かから施しを受ける事になれていないんだろう。


「こういう時はありがとうって言って受け取って良いんだよ」

「えっと、その、ありがとう、ございます」

「お、おうよ!」


 お礼を言われたおじさんの方が顔を赤くしてドギマギしている。すると後ろからやって来たおばさんからゲンコツが飛んでくる。


「なに余所様の子供を見て顔を赤くしてるんだい」

「いでっ。いやその、うちにも娘が居たらこんな感じかなってな」

「んなこと考えるなら作ればいいだろ? バカ息子も手が離れてきたしね」

「お、おう」


 なんかおかしな方向に話が進んだけどまあいっか。

 僕たちは果物屋のふたりにお礼を言って領館へと帰ることにした。



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