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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第1章:忘れられた盾の勇者
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3.伝説の勇者の物語

 レントン先生は一通り診察を終えると部屋を出て行った。恐らく国王陛下つまり父上に報告に向かったのだろう。


「王子。流石にリンゴひとつではお腹が空いてますよね。

 私厨房に行って何か作ってきてもらってきます」


 サラもそう言って部屋を出て行くと、20分程して土鍋を抱えて戻って来た。鍋の蓋を開ければ出汁の効いたスープの香りが部屋に充満して食欲をそそる。


「病気が治ったと言ってもまだ病み上がりですからね。

 こうしてご飯を食べて、早く元気になりましょうね!」


 レンゲで掬ったスープを僕に食べさせながらサラはにこにこと話し掛けてくれる。


「ありがとうサラ。元気なサラを見てるだけで僕も元気になれる気がするよ」

「ふふっ。そう言って頂けるならもっともっと頑張らないとですね!」

「そういってまた花瓶を割ったりしないでね」

「あ、あれはですねぇ」


 なんて他愛のない話をしていたらいつの間にか土鍋の中身は空になっていまった。やはりここのところ碌に食事も出来ていなかったので身体は栄養を欲していたみたいだ。

 お腹がいっぱいになったら次に来るものと言ったら睡魔なのだけど、寝るまでにはまだちょっと時間がありそうだ。


「ねぇサラ。何かお話聞かせて欲しい」

「あら、何が良いでしょうねぇ」

「昔話とか伝説みたいなのって何か知ってる?」

「それでしたら昔この世界を救った6英雄の物語なんてどうでしょう」

「6英雄?うん、聞きたい!」

「ふふっ。王子も男の子ですからね。やっぱり英雄には憧れがあるんでしょうか。

 そうですねぇ。昔々、といっても今から200年程前になります。

 この世界にはとっても恐ろしい邪神龍が居ました。邪神龍はその強大な力で世界中を荒らしまわり多くの国が被害を受け大勢の人が亡くなったそうです。

 このままでは世界は邪神龍によって滅ぼされてしまう!なんとかして討伐しなくては!

 世界中の国々が団結し邪神龍に立ち向かいましたが軍隊で立ち向かっても被害が大きくなるばかり。

 そこで各国から最強の若者を集め少数精鋭で奇襲をかける計画が立ったのです。


 剣の国からはカリバー・バスタード。

 槍の国からはロンヌス・ランサー。

 槌の国からはミョルル・ハンマー。

 弓の国からはスザク・バリスタ。

 魔法の国からはダムド・バルス。

 癒しの国からはエリク・ヒール。


 彼らは魔物蔓延る暗い森や険しい山脈を越え遂に邪神龍のねぐらへと辿り着きました。

 戦いの口火を切ったのは槍の勇者だと言われています。

 そこから7日に渡り激戦を繰り広げました。その戦いの激しさと言ったら近くにあった山が崩れ、大地には巨大な亀裂が創られる程でした。その亀裂は剣の国の北側にまで延びていて冒険者が一度は見て見たい絶景ランキングに登録されています。っと、それは余談でした。

 そうして死闘の先に、魔法の勇者の放った魔法が邪神龍を地に落とし、槍の勇者と弓の勇者によりその翼は地に縫い留められ、槌の勇者が足を潰して立ち上がれなくして、そして癒しの勇者の加護を受けた剣の勇者の一撃が邪神龍の眉間に突き立てられたのです。

 地に倒れ伏した邪神龍を、本来なら討伐証明として首を切り落として持ち帰るところなのですが、勇者たちはいたずらに穢すべきではないと、そのままその地を去りました。

 こうして世界は救われ人々は平和に暮らしました」

「……」


 だいぶ簡略化して分かりやすく話してくれたサラの話に、しかし僕は首を傾げずにはいられなかった。


「ねえ、盾の勇者は?」

「残念ながら居りませんよ。我が国の代表だった勇者は道半ばで倒れ邪神龍との決戦の時には居なかったそうです」

「ならもっと昔にも邪神龍が居て、その物語の邪神龍は2代目だっていうことは?」

「うーん、私は聞いたことがありません」

「……そっか」


 明らかに気落ちした僕の様子を見てサラが心配そうにしている。

 って、いけないいけない。折角僕を楽しませようとしてくれたのに、これじゃあガッカリさせちゃうよね。


「お話してくれてありがとう、サラ。

 その物語に盾の勇者が出てこないなら、僕が頑張って勇者になって皆を護れば良いんだよね?」

「そ、そうですね!王子ならきっと伝説の勇者にだってなれますよ」


 ちょっと強引な感じはあったものの、サラが元気になってくれて良かった。

 それにしても。思い出した記憶と今聞いた内容が随分と違う。登場人物の名前こそ同じだったけど邪神龍との戦いの内容がまるで別の話だ。考えられるのはあの時あの場に居合わせた彼らが帰ってから事実を伏せて説明したってことくらいだけど。

 ……いったい何があったんだ?




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