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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第1章:忘れられた盾の勇者
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24.ゴンの戦い

〜 Side ゴン 〜


 それにエナが気付いたのは後から思えば必然だったのだろう。不意に西門の方の通りを指差して小さい声で俺に告げて来た。


「ゴン兄ちゃん、あの人なんか怪しい」

「ん?どいつだ??」

「あたしちょっと追いかけて来るね!」

「お、おい、ちょっと待て」


 エナは言い終わるやいなや、直ぐ様駆け出して行ってしまった。どうやらその怪しい人というのは西門から外に出ようとしてるみたいだけど、俺の目には門番しかいないように見える。

 って、最近外は魔物が多いらしくて危険だから出ちゃ駄目なんだって。って止めようと思ったら居ねぇ!


「くそ、あいつ鬼ごっことかでも妙に足が速いんだよな。アルの奴が遊びに来るようになってから特に。

 なんて言ってる場合じゃねえな。連れ戻さないと」


 俺は今まさに西門を出ようとしてるエナの背中を慌てて追い掛けた。

 そうして街を出て20分くらい走ったところでようやく追い付く事が出来た。というのもエナが立ち止まったからだ。


「ガルルッ」

「ひ、やっ」


 エナの前を塞ぐように狼の魔物、確かウェアウルフっていうのが数匹立っていた。そいつらに睨まれたエナは足を震わせて動けなくなっている。


「エナ、こっちだ。走れ」

「ゴン兄ちゃん!」


 急ぎエナの手を掴んで走る。どっちに行けばいいかなんて分かんないけど、あいつらだって木が多い方が速くは走れないと思って右手の森の奥へ向かった。

 だけど走りにくいのは俺達も一緒だ。


「きゃっ」

「エナ!」


 エナが木の根に足を取られて転んだ。魔物達はすぐそこまで迫っている。

 くそっ、ここまでか。

 せめてもの抵抗にと落ちていた木の枝を構えるけど子供の遊びじゃないんだ。全く役になんて立たないだろう。

 それでもエナの事は最後まで俺が護る。


「グラァッ」

「くっ!」


 魔物が飛び掛かってきた。あの爪が届けば俺なんて簡単にバラバラにされてしまうだろう。

 不思議と恐れはなかった。代わりに妙にゆっくりに感じる時間の中で、それでもなお目にも止まらぬ速さで飛んできた何かが魔物の頭を叩き潰した。

 その凶暴さが嘘のように、コロンと俺の足元に落ちてきたのは円い鉄の盾?なぜこんな所に突然盾が飛んでくるんだ?

 そう呑気に首を傾げた俺を叱責するようによく知っている声が届いた。


「ゴン、盾を取れ!」

「その声はアルかっ?」


 アルがなぜこんな所に居るんだとか色々疑問に思ったけど、次の言葉でそんな暇は無いと思いだした。


「良いから早く盾を取れ。ウェアウルフが正気に戻るぞ」

「お、おお!」

 

 慌てて地面に落ちている盾を持ち上げた。見るからに鉄で出来たその盾は、しかし見た目に反してすごく軽い。なにより持っていると全身に力が漲ってくるようだ。さっきまで全力て逃げて疲れてるはずなのに。

 これならアル達が助けてくれるかもしれない。だってよく見ればアルの隣にはいつもアルと一緒に居る騎士のお姉さんが槍を持って立っているし。彼女が来るまでの間なら時間を稼げるかもしれない。

 だけどそんな甘い考えはアルに吹き飛ばされた。

 後ろを見ればエナが不安そうな顔で俺を見ていた。不安にさせてるのは……不甲斐ない姿を晒している俺だ。


「安心しろエナ。エナの事は何があっても俺が護るからな!」

「うんっ!」


 騎士のお姉さんが助けてくれる?それまで時間を稼げる“かもしれない”?

 馬鹿を言うな。俺はなんだ。誰かに護られるのを待つだけの弱虫か?大切な仲間が殺されても仕方ないって諦める敗者か?違うだろ。

 そう思った瞬間、脳裏にいつも騎士ごっこで言う口上が自然と出てきた。


「俺はアルファス騎士団のゴン。

 護るものが後ろにある限り、アルファス騎士団は決して負けない。

 命が惜しくば去るがいい。

 だが向かってくるのなら容赦はしないぞ!」


 魔物たちに向かって力の限り宣言する。そうして自分の事も鼓舞しながら盾を構えれば不思議と負ける気がしない。


「グルアッ」

「ふんっ」


 キンッと盾の表面を魔物の爪が当たる。その力に逆らわず横から押せば意外なほど簡単に魔物の攻撃を防ぐことが出来た。

 行ける。さっきは必殺の一撃に思えた魔物の攻撃もこの盾さえあれば俺でも十分防げる。なにより落ち着いて睨みつけてやれば、普段街でアルを相手にしてるのに比べたら全然怖くない。いやほんと、盾を構えたアルはマジで怖いんだよ。

 ただ困ったな。盾で防げるようになったとはいえ今の俺には攻め手がない。俺じゃあアルみたいに盾で護りも攻撃もとはいかない。それに多勢に無勢でこのままだと俺の方が先に体力切れで動けなくなるだろう。そうなる前に何とかしないと。


「ガルルルッ」

「グルルッ」

「くっ」


 複数体からの同時攻撃はさすがに防ぎきれずに腕や足に切り傷が増えて行く。だけどまだだ。俺はまだ立っていられるし盾だって持てている。ならエナのことは何が何でも護り抜いてみせる!

 そうして何度も魔物の攻撃を防ぎ、意識が朦朧としてきたところで魔物の攻撃が止んだ。

 ……どうしたんだ?


「よく頑張ったな、少年」


 すぐ近くから男性の声。恐る恐る盾を下げつつ周囲を警戒すれば、さっきまで俺を襲っていた魔物は近くで倒れていた。その首筋には刃物で切り裂いたように傷が出来ていた。

 声の方を見れば見覚えのない男性が立っていた。手に持つ黒塗りの剣には魔物の血が付いてることからこの人がこれをやったんだろう。正直この人とは戦っても勝てる気がしない。

 だけど、ひとまず俺は無事にエナを護れたようだ。緊張から解放されて力を失った俺はその場にへたり込んだ。


「ゴン兄ちゃん」

「大丈夫だ。

 とそうだ。アル達の方はどうなったんだ?」


 慌ててアルが居た方を見れば、こちらとは比べ物にならない程大量の魔物の死体が転がっていた。

 あれ全部、あの騎士が倒したのだろうか。本物の騎士は凄いな。

 


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