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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第1章:忘れられた盾の勇者
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21.脱走兵

(くそっ、付き合っていられるかあんな化け物)

(おい、余り声を出すな。見付かって捕まれば殺されるぞ)

(いやもし追手が掛かっていたとしても普通はこっちには探しに来ないだろう)


 月も雲で隠れた夜中に森の中を急ぎ目に移動する3人の男は、しきりに後ろを警戒しながら森の奥へと進んでいった。


(しかし夜の森ってのは意外と静かなんだな)

(そうだな。ま、魔物だってこの暗闇の中じゃまともに活動出来ないのかもな)

(俺達は『夜目』スキルを習得してるからある程度見えてるけど、馬鹿な魔物には無理か)


 森の中をしばらく進んで、もう街からも離れたので警戒を緩めた。周囲には自分達が踏み締めた草の音しか聞こえない。

 この森には今、自分達しか居ない。もっと奥深くに進めばゴブリン達のナワバリになる事も聞いているので、奥までは行かない。目的地はもっと手前だ。


「お、あったあった」

「あれが狩猟小屋か。ボロそうだけど一晩休めれば十分だしな」

「夜目が効くとは言っても歩きにくいことに違いないし助かった」


 それは森で狩りを生業にしている人達の休憩所。特別誰のものという訳ではなく、世代を超えて受け継がれてきたものだ。

 もちろん狩人じゃなくても使うことに問題は無い。汚したり壊したりしない限りは。そして時には先客が居ることもあるし、人間以外が使うこともある。

 小屋の扉に手を掛けた彼等は暗いこともあってその小屋の違和感に気付かなかった。

 

……


 薄暗い小屋の中で、数人の人影が小声で話し合っていた。


「実験は順調のようだな」

「ああ。一定の成果は得られた。本部にも既に報告は送ってある」

「ならばそろそろ引き上げるか。あまり長居しては勘付く者も居るだろう」

「そうだな、先日ねずみも捕まった事だし」

「しかし、ここまで平和だと物足りなくなるな」


 それを聞いて数人がクツクツと笑った。


「どこにもずっと続く平和などありはしないのにな」

「誰も彼もが真実から目を背けてしまっている。

 我々が彼らの目を覚まさせなくてはいけない」

「では最後は少し派手に行こうか。

 あの程度では流石にここは落ちないだろうが、我々の目くらましくらいにはなるだろう」

「こちらは痕跡を消してから行く」

「のんびりしすぎて巻き込まれないようにな」 


 そうして2人を残して他は去って行った。

 残ったうちの1人が小窓からそっと外の様子を窺いつつもう1人に話しかけた。


「なあ、お前はここの騎士団をどう見る?」

「平和ボケした雑魚。と思っていたんだがな」

「私もだ。それこそ今ある手札でここを落とせるんじゃないかと思う程に。

 しかし最近の成果を見るにそうでもないようなんだ」

「まあな」


 最近の騎士団と言えば、街道に出た魔物の討伐の為に小隊を組んで出撃していた。

 彼らの見込みとしては魔物との戦闘になった場合、騎士団にも多かれ少なかれ被害が出る、もしくは小隊が全滅する可能性もあると考えていた。

 しかし実際には多少の傷を負う事はあっても重傷者はなし。それは決して魔物が弱くなったからではない。むしろ魔物は以前よりも強くなっているはずなのにこの結果ということは、明らかに騎士団も強くなっている。その原因は何なのか。


「そういえば、最近どこぞの貴族の子供が護衛を引き連れて良く街を歩いているそうだな」

「そうらしいな。それが?」

「先日、目が合った」

「……は?」


 それは一体何の冗談なのか。

 目が合ったという男は警戒心が強く、常日頃から気配を消して行動しているはずだ。雑踏に紛れた彼を見つけるのは仲間であっても難しいだろう。


「護衛とではなく、か?」

「ああ」

「偶然ではないのか?」

「違うだろうな。明らかに何かを見透かした目で俺を見ていた」


 確かその貴族の子供というのは小さな少年ではなかったか。

 ありえない。そう断言して笑い飛ばしてしまいたいが男の態度は頑なだった。


「それが騎士団が強くなったことと関係していると?」

「分からん。だが俺の勘が告げている。あれはヤバいと。

 だからここの掃除も入念に行っていこう。痕跡1つ残さないようにな」

「分かった。しかしお前にそこまで言わせる少年か。興味はあるな」

「お勧めはしないがな。

 俺は先に行く。済まんが任せても良いか」

「ああ。気にするな」


 スッと気配を消して男は去って行った。

 残ったもう1人もせっせと後始末を始めた。


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