116.アルファス騎士団、始動
お盆休みだ。よぉし創作活動しまくるぞ~。
と言いたいところなのですが、会社が休みでもやること山積みでございます。
この作品も佳境に向かってるのでかじ取りが難しいのに(失敗するとエンディングに辿り着けない)
という言い訳をしつつまた少々お待たせさせてしまうかもしれません。
m(_ _)m
その日、僕は元第一騎士団のみんなと一緒に王都郊外の広場に来ていた。
一糸乱れず整列するみんなを前に僕は話し始めた。
「皆さんおはようございます。
まずは今日ここに集まってくれたことに感謝を伝えたい。本当にありがとうございます。
今日からみんなは盾の王国の騎士ではなく僕の直属の騎士になります。なので名声などはありません。給与は僕のポケットマネーから出すのであまり期待しないでください。
あ、もしこの中にそんな話は聞いてないって人が居たら、今ならまだ戻れるから遠慮なく言ってください」
えっと、特に驚いてる人は居ないし大丈夫かな。この話は1月以上前から告知しているし、半数以上は王国騎士団への残留を決めている。なのでここに居る騎士は107名だけだ。むしろ良くこんなに来てくれたなと言うべきか。
「僕らの今後の活動は王国という枠に捕らわれることなく自由に行動し、あらゆる災害から大切な者を護ることです。
あ、別に人類全てを護ろうとか、世界の平和を護ろうとか、そんな壮大な話をしている訳ではありません。正直言ってそんなことは無理です。
無理を通そうとしたら本来護りたかった者まで護れなくなります。なので時には心を鬼にして他人を見捨てる覚悟を持ってください。僕らが護るものは僕ら自身と僕らが護りたいと思った者です。
世界平和とかそんなものは英雄とか勇者に任せましょう。普通の人の僕らはそんな無理はしません」
「ぷふっ」
僕が普通の人発言をするとあちこちで失笑が生まれた。おかしいな。どこに笑う要素があっただろうか。
「おい、普通の人だってよ」
「じゃあ俺達はなんだ?」
「決まってるだろ。普通の人に従う普通の騎士だよ」
え、普通でしょう?別に口から火を吹けと言ってる訳でもないし、手が6本ある訳でもないし。
「えっと、いいかな」
「はっ!失礼致しました!」
僕が声を掛ければざわつきはすぐに納まった。この辺りの統制の取れた姿はティーラの指導の賜物だ。
「僕らの最初の任務は魔王の討伐、ではなくて、その手前に前線基地を構築することです」
「え、あの王子。魔王の居場所が分かったんですか?」
「うん。サラの調査結果と『約束の地』というキーワードで該当する場所は1カ所に絞り込めた。
まず間違いなくそこにいるだろう。
なので今からその基地の建設予定場所に向かいます。
僕らの行軍速度でも5日くらい掛かるから気負わず行こう」
「「はい!」」
そうして僕を先頭にしてアルファス騎士団は出発した。
向かうは東よりやや南だ。ちょうどクママの住んでいる山を南にぐるっと迂回することになる。ちなみに南には剣の王国がある訳だけど、思いっきりその剣の王国との国境を跨ぐ予定だ。かの国に文句を言ってくる余力は残っていないだろうし、仮に文句言って来ても僕たちはもう盾の王国の騎士団ではないので適当に言い訳して突破する気でいる。
適度な休憩を挟みつつ走ること5日。特に大きな問題も無く僕らは目標にしていた場所に到着した。
「聞いたか、特に問題なかったって」
「そりゃまあ、途中で魔物に遭遇するのは想定内だろうしな。
盗賊なんかも見かけた端から殲滅してたというかむしろ積極的に探してアジト潰してきたけど。
俺達の収入源ってもしかして盗賊の溜め込んだ宝だったのか?」
「それだと若干ショボいけどな。
だけどアジトに捕らわれていた人が助けられたから良かったけどな」
「ああ、でも助けた人たちが元居た村に帰ろうとしないで俺達に付いてきたのは誤算だったけど」
騎士の皆が言うように、当初僕らを含め110人だったのに150人にまで増えている。盗賊に捕まっていた人達は例外なく傷を負っていたけど、肉体的なものは魔法で治療しつつ精神的なものは時間を掛けて癒していく他ない。幸いこの後はその人達にも出来る事が沢山あるので、頭を空っぽにして働いてもらおう。
僕らが今居る場所は近くに何もない平原。ちょっと移動すれば川もあれば森もある。更に言うと過去に開拓しようとした痕跡もあったりする。立地としてはかなり良い場所だから当然と言えば当然だろう。唯一魔物が良く出るという点を除けば。
「ではこれよりこの場所に前線基地を構築する。
区割りはそこの掲示板に張り出したから、各自確認してほしい。
騎士団の皆はそれに従ってまずは地ならしと井戸掘りだ。
今日中に水の確保が出来なければ川まで汲みに行ってもらうからそのつもりで」
「「はいっ」」
「女性陣は炊き出しと、井戸が出来次第、洗濯などをお願いします。
魔法で多少清潔にしてるとは言え、騎士団なんてものはほとんど男所帯で多少汚かろうが臭かろうが気にしない人が多いから、そういう人達には『あなた臭くてそんなんじゃ女性にモテないよ』とばっさり言い放ってあげてください」
「「は、はい」」
ここで言う女性陣というのは盗賊に捕らわれていた人達の事だ。理由は何となく分かるけど捕まっていたのは若い女性がほとんどだったから。
日が暮れる頃には無事に井戸が10基ほど完成し、その近くで美味しそうな肉の焼ける匂いが広がった。
「ではいただきます」
「「いただきます」」
移動中はのんびり料理する暇は無かったから本格的な料理は久しぶりだ。だからみんな嬉しそうに焼き立ての肉を頬張り、熱々のスープを口にしている。
「お替りもありますよ」
「おう、ありがとう」
騎士の皆に女性陣が甲斐甲斐しく世話を焼いている姿があちこちで見られる。みんな満更でもない表情をしてるのがなんとも。王国騎士団に所属していたんだから皆女性には慣れてるのかなと思ってたけどそうでもないのか。
「何というかさ。女性は逞しいね」
「はい」
ついこの前まで盗賊に誘拐されて乱暴されていたんだ。中には同じ男性に近づくだけでも恐怖を感じる子も居るだろう。なのにそれを一切表に出さずにああして尽くしている。それは助けてもらった感謝も含まれているのかもしれないけど、それ以上に今後生きて行く上で彼らと仲良くなっておくに越したことはない。あわよくばお嫁さんにしてもらおうっていう打算も含まれていると思われる。
そう言った意味では僕が一番ねらい目なんじゃないかなと思わなくもないけど、今の所誰一人として僕に近づく女性は居ない。目が合っても何故か慌ててお辞儀をして逃げるように去って行くんだ。
「僕は嫌われてるのかな」
「いえそんなことはないでしょう」
「そうなのかなぁ」
サラをお供に皆の様子を見て回ってるんだけど例外なく近づいては来ない。
「はっはっは。アルファス王子。
そんな怖いお目付け役と一緒に居たら女遊びは出来ませんよ」
「あ、ラバック」
首を傾げる僕に気安く声を掛けてきたのは元第一騎士団裏の騎士団長だったラバック。というか彼と副官のチェッタもこっちに来てしまってるんだけど、裏の方は大丈夫なのか?ちゃんと引き継ぎしてきたのだろうか。
それよりもだ。お目付け役ってサラの事かな?サラはいつも通り僕の隣を歩いてくれてるだけなんだけど。
「ご安心くださいアル様。アル様に余計な心労はかけさせません」
「あ、うん」
にっこりと笑うサラ。
なるほど、これは駄目なやつだ。昔こういうの見たことある。きっと僕が変な女に捕まりそうになったら翌日には誰にも気付かれずにその女はこの世から姿を消してるパターンだ。彼女達も女の本能でそれを察知して近寄らない様にしてるのだと思われる。
もっとも、僕が女の色香に惑わされる心配はまずない。仮に僕を誘惑しようとする女性が現れたらサラ達を見せて「鏡見たことある?彼女達より自分の方が魅力的だと本気で思ってる?」って訊ねれば良いだけだ。それでもうんと頷くナルシストな女性からは距離を置きたい。




