第98話 転移門
石造りの門が見えてきた。
その門の間には、何か垂れ幕のようなものが下がっている。
(何やら文字が見える……うん?)
「ようこそ!エルフの里へ!!」
俺はズっこけた。
「おい!秘密にしてるんじゃないのかよ!なんでこんな歓迎してるのよ?」
「実はここまで辿り着くのに結界をいくつも越えてるんだ、ボクが解除していたから気がついていなかったでしょ?」
「そ、そうだったの?」
確かにルシナはたまにポイントポイントで、何かお祈りみたいなことをしていた。何かエルフの習慣みたいなものかと思っていたが。
「だから辿りついたってことは、友ってことなんだよ」
「そ……そういうものなのか?でも垂れ幕必要ないんじゃ……」
俺の疑問を他所に、ルシナがその巨石の門に近づいた。左側の石柱の背の高さ程度の場所にルシナが立ち、そこに小さい魔法陣が刻んである。ルシナは、その魔法陣に向かって詠唱を開始した。
「エルフの永遠なる森の奥に……」
ボコ……
そういうと、石柱の魔法陣が凹み、ちょうど手形に窪んだ箇所が発生した。
「ここに手を当てるんだ……」
そういうとルシナは躊躇わず、そこに手をはめる。すると……
ゴガン!
巨石の門が発光しはじめ、門と門のあいだが虹色に変色した。
リリスが興味深そうに門を見つめた。
「ほう……転移陣と聞いていたが、転移門じゃなこれは……」
ルシナが先頭にたち俺たちについて来いとジェスチャーする。
「ついてきて」
「そ、その門に入るのか?怖いんだけど……」
「あはは!大丈夫だよ、入るだけだ」
「なんか虹色に光ってるし……」
「ヤマトは怖がりだなぁ。クローベアーを倒した男とは思えないよ」
「そ、それとこれとは……」
「じゃあ、ボクが先に入るからついてきてよ」
ルシナは先にその門に入っていった。
スゥー……
虹色の光に吸い込まれるように消えていくルシナ。
転移門をくぐり姿が消えていったルシナ。
「おぉ……消えた!四次元空間みたい!」
俺は動物型ロボットのアニメを思い浮かべた。俺の心を読んだリリスが質問をする。
「なんじゃ、そのロボットというのは?」
「青い色の動物型ロボットが、不思議道具ですべてを解決していく話だよ」
「ほう」
「大体がダメ飼い主の尻ぬぐいなんだけどね」
「泣ける話なのか?」
「全然……」
「それよりもヤマト。オヌシも転移門に入るんじゃ」
「わ、わかった。入ってみるわ……」
俺は意を決して門の中に、足を踏み入れる……。
ブア……。
俺の肌に一瞬何か触れたような気がして俺は背筋が冷たくなる。
「うわ……なんだこの感覚……」
一瞬引き返そうかと思ったが、リリスがテレパシーで声をかけてくる。
(大丈夫じゃ、そのまま進め)
(わ、わかった……)
リリスに励まされ、俺は二歩三歩と目を閉じながら進む。やがて、俺のとじた瞼越しに太陽の光が飛び込んでくる。
「眩し……」
俺がしかめ面で目を開けると、目の前に広がる空間に俺は驚いた。
「外?山の上?」
ここは山の上なのだろうか。先ほどまでいた場所とはまるで違う光景が広がる。目の前には、連なる山脈が見えている。登山好きにはたまらない光景だろう。地上何百mというとても高い山の展望台のような場所に俺はいるようだ。立っている場所を観察をすると、この展望台は100m四方になっているようで結構大きい。
「展望台?エルフの国って山にあるの?」
「あはは。まさかぁ。ここは転移門の連結先、もし門が突破されていきなり王都に出たら大変でしょ?」
「たしかに……」
「さあ、この展望台から遠いけど、エルフの王都ブルーサファイアが見えるよ!こっちにおいでよ。ヤマト」
そういうと、ルシナが展望台の端のほうまでスタスタと歩いていく、俺もその後ろをついていくと……俺は眼下に広がる光景に驚いた。
ここの展望台は相当に高いので、どんなものでも小さく見えるはず。しかし、視線の先に広がる光景は、地平線の先まで続く城壁と街並み。広大な土地にある巨大都市だということがわかった。
「ま、まさか。あれが?ブルーサファイア?巨大都市じゃん!!」
さらに目を凝らして見てみる。俺の視力はとても良い。安い望遠鏡なみの視力を持っている。
目を細めて街の内部を見ようとすると、おぼろげに見えてきた。
都市の中はかなり高度に発展しているようだ。どこまでも続く街並み、ヨーロッパのような美しい建造物が立ち並んでいる。その街並みはすべて中心に向かっていて、大通りが放射線状に伸びていて、都市整備は行き届いていそう。
街全体には、めちゃくちゃ高い城壁がぐるりと城を囲んでいる。警備も厳しそうだ。




