第94話 ゼナ
ルシナの後ろに誰かいる。俺はその子が気になっていた。小さい女の子のようだ……。
その女の子がルシナに話しかける。淡々として抑揚のない声だ。
「その子……?ルシナが言っていた少年というのは……」
ルシナは、後ろの子を前に押し出すようにしながら……。
「そう!ゼナ!この子よ!!問題の子は!!」
(も……問題って、言い方!)
俺は、その子をルシナの肩越しに見てみる。
(うわ……美幼女)
見ると、お人形のような顔をした小さな女の子が立っていた。年齢は俺と同じくらいに見える……。輝くようなシルバーカラー。腰まで届くロングへアーだ。
(この子の瞳……)
俺は、そのエルフの瞳に注目した。瞳の色が特徴的なのだ。瞳色が、金色を通りすごして白銀なのだ。パっと見。瞳がないように見えてしまう。
この女の子の容姿がすばらしく美しくなければ、「白目!?」と、ギョッとしてしまうかも知れない。
とにかく目がクリクリで大きい。アニメに出てくる美少女そのままだ。
(む、むちゃくちゃ美幼女だけど、まだ幼い……)
おそらく年齢的には俺と大差ないんじゃないだろうか。背丈は俺と同じくらいか、少し小さいくらいかな……。
「萌え少女」と俺は認定した。
しかし、一方で彼女はとても神秘的だ。彼女の目からは知性を感じる。なんでも見通してしまうかのような不思議な目だ。幻想的な雰囲気を出している。
俺が見ていると、相手もこちらを見つめていた。
ジー……
ゼナと呼ばれた子は、俺のことを見つめていた。
(な、なんだろう……。俺が見ていたから気分を害したのだろうか?)
俺は自分から挨拶をしてみることにした。
「こ、こんにちは。ゼナちゃん?俺はヤマト」
「…………」
「あの……ゼナちゃん?」
ゼナは無表情に俺に応える。
「”ちゃん?”……」
やべ……フランク過ぎたか。怒らせてしまったのかな……。俺がポリポリと頭をかきながらゼナに向かって 「あはは」 と笑顔を見せながら謝罪した。
「あれ?まずかったかな。俺と同じ歳くらいに見えたから……」
「……別にいい。ちなみにあなた、いくつ?」
(や、やけに無機質な声だな……)
俺は抑揚のない彼女の喋りかたに違和感を覚えた。まるで感情がないようにも感じる彼女の声……。
「ご、5歳だけど……」
「じゃあ、私と同じ」
(同じ歳なんかい!)
ゼナがルシナを見て頷いた。ルシナも同調する。
「ゼナ、この少年は精霊誓いを済ませている。名乗っても平気だよ」
すると、ゼナはコクリと頷き、俺のほうへ向き直る。
「私の名前は、ゼナ=オブ=トールスナ。トールスナ家の末っ子。5歳」
「あ、それじゃあ。俺と同い歳だね」
「……」
「(む、無反応かよ)」
俺の回答を待たず、ゼナと呼ばれた子はルシナのほうへ振り返ると、ようやく話しだした。
「この少年は善なる存在。それは判った。でも、読み取れない……こんなことはじめて……、そこにいる女性もそう」
そういうとリリスのほうも見つめてゼナは言った。
「ワシ?」
すると、ゼナはコクリと頷いた。
ルシナは驚いたような顔をして俺達に告げた。
「試すようなことをしてごめんね。この子は、ゼナは真理眼を持つエルフなの」
「し、真理眼?」
「ほう……」
リリスは何かに気がついたようだ。
「リリス?何か知っているのか?」
「うむ。話には聞いたことがある、真理眼。魔眼の一種じゃ」
「魔眼とは特殊なスキルを帯びた眼と考えれば良い」
「それで、真理眼とはどんなスキルがあるんだ?」
そこまで言うと、ゼナが口を開いた。
「そこからは私が説明する……。真理眼は、悪しき魂なのかの判断と、相手が嘘をついているのか。本当のことを言っているのか読み取れる」
「嘘かを見分けられるってこと……?」
コクリと頷くゼナ。
「判別する方法は質問形式に限る……」
「それでも凄いよ……」
「凄いけど嫌われる……」
ゼナは少し悲しそうな顔をした。
「嫌われる?」
すると、リリスが横から口を挟んだ。




