第92話 少年の力
『ルシナ視点が続く』
ドガ!!
あの小さい少年が、ベアーを後ろから蹴り飛ばしたのだ。
意味がわからない。さっきまで少年はベアーの前にいたはずだ。
(い、いつ回り込んだの?ここから見ていて見えなかった…)
そのあとは、あの邪神への祈りのような動きで腕を上から下に下ろすと、ベアーから血が吹き出た。
遠目からは、例の風魔法を使ったように思える。
「す、すごい……?鎧のような体を持つクローベアーに傷を負わせるなんて……」
クマが傷を負って怯んだように思える。
「まさか、効いてる?え?ちょっと!ちょっと、次は魔法!?」
そして、信じられないことに次に少年が火魔法を使ったのだ。そのファイアーアローが致命的だった。二匹のベアーは火ダルマになって死んだ
「うそでしょ?に、2属性!?」
でもこれは事実。紛れもなく、あの少年が火魔法を使いクローベアーを一人で仕留めたのだ。さっきのが風魔法として、今度は火魔法を使ったのだ。
こんな話を誰かにしても、誰も信じてくれないだろう。ボクはさらに様子を伺うと。
そのあとは、少年がベアーの死骸に近づいていく
(解体でもするのかな……ん!?)
何やら急に少年が苦しみ出した。
(うん?傷を負っていたようには見えなかったけど……)
しかしそれも1分くらいしか続かなかった。すぐ立ち上がり、少年が女に向かって笑うと、クローベアーを担ぐ(これもあり得ないんだけど)、満足そうに洞穴にもどっていった。
「あの、動きは何?一体なんなのーー!?」
不可思議すぎる。
【ヤマト視点】
ある日、魔獣を探しに森にいったら、クローベアー2匹に出会った。森のクマさんに出会ったって……まぁ、それは良いとしてだ。
おんなじ魔獣に出会って少しガッカリだがそうも言ってられない。向こうからすると俺は食料。俺から見ても食料。ん?食料対決?
「グオオォ!」
猛烈に襲いかかるクローベアー。
しかし、
シュバ!!
「疾風爪!?」
「避けろ!ヤマト」
「瞬転!」
疾風爪をクマが使ってきたが、瞬転を使い俺は後方に回りこむ。
シュン!!
真後ろに立った俺に向かいリリスが叫ぶ。
「魔法で殺れ!」
「うらぁ!」
しかし、俺は蹴りを出していた。
ドガ!!
後ろから熊を蹴り飛ばすと
(ベキキ……)
というクローベアーの背骨の骨が折れる音がした。
「今のは……なんかすげー痛がってない?クローベアー?」
「うむぅ。魔法を使えというのに…。オヌシの今のステータスはクローベアーを軽く凌駕しているのじゃろう。すさまじいのぅ」
この前の戦闘とは比較にならないくらい楽だ。クローベアーの動きが止まって見えるほど、俺のスピードは速かった。
「爪に気をつけろ!ステータスは高いが、オヌシはまだ子供。防御能力は未知じゃ。やられたら死ぬ可能性もある。何度も言うが魔法で遠隔からやれ!」
たしかに……今度俺の防御ステータスも確認しておかないとな。
(魔法中心で戦おう……)
その後、火魔法で難なく倒せた。
もはや、クマ公は敵ではなかった!
「ふはは!食料ゲット!」
瞬転が優秀すぎる。
その後、俺はリリスに確認したうえで捕食を実行することにした。やりたかないけどね……
「ぎゃああああ!!!痛ぇ!!やっぱり痛い!!」
地獄の苦しみがはじまった……。しかし、今回の捕食は前回と違った。前回はたっぷり1時間ほどは苦しんだのだが、1分程度で終わったのだ!
「はぁはぁ……あれ?すぐ終わった?」
「そうじゃの……何故じゃ」
「謎過ぎて怖い……この捕食ってスキル……」
「むぅ……。以前に捕食したからか?ヤマトのステータスはすでにクローベアーを上回っているからか?それとも同じ魔物だったからか?どれも当てはまる気がする」
「はぁ……はぁ……もう疲れたから帰るわ」
理由は判らないけど、すぐに捕食は終わった。俺はよっこいしょ!とクローベアーを担ぎあげた。
「怪力じゃのぅ……成人した龍人と変わらん」
その後、洞窟横に堀った(爆破して作った)穴倉にベアーを置いてひと息つくと、ステータスを確認したが特段新しいスキルは手に入れていなかった。
「な、なんで!?」
「いや……弱飢餓状態から、正常になっておるぞ?変化はある」
「いや!いや!いや!捕食してステータスの大幅アップじゃねーと意味ないだろ!」
「スキルも手に入れてないようじゃのぅ……倒し損じゃったか」
「はぁ……むちゃくちゃ痛かったぞ?捕食……」
「1分じゃったろうが」
「1分でも痛いものは痛いんだっちゅうの!お前、神経を1分間触られ続けたことある?あれの数倍痛いんだぞ」
俺がプンスカ怒っているが、リリスは今回の結果について分析しているようだ。
捕食とは何なんだろう?
俺は、もう一度ステータスをみる……。
(よく見るとスキルじゃねーんだよな)




