第90話 監視開始
一気に話の判る人になってくれたエルフ。俺は、そもそもの会話に戻ることにした。
美少女エルフ ルシナも今では微笑すら浮かべてくれている。今ならフランクに話すことが出来るだろう。
「しかし、ここの洞窟に俺達がいるってよくわかったね。」
「そりゃ……こんな異様なものと匂いをさせていればね……。」
そういうとルシナは、俺の洞窟の前にある干物たちを指さした。猛烈な匂いを発している干物たちは、言われてみれば注目されても仕方ない。
これ臭いもんな…………。ちょっとアホな行動だったかも知れない。
「あはは……」
俺は苦笑いをせざるを得ない。
「ふふ。でしょ?まぁ、こんなことする人達は悪い人じゃないとは思っていたんだけど、まさか子供だとはね。ボクもビックリしたよ」
すごく丁寧に「アホな人達だと思ってた」といわれている気がしないでもない……。
しかし、疑いが晴れてよかった……良かった。
「疑いも晴れたし、晴れて放免かな?」
「悪い人達ではないのは判ったんだけど。それでもここはブルーサファイア王国の領地。放置はできないよ」
「え?」
どうやら、完全に放置はしてくれないようだ……。ここは丁寧にお断りしよう。リリスと俺が龍人の里へ行くまで、エルフに付き纏われていたら、やりにくい……。
「いえ、大丈夫です。心配してくれてありがとう」
丁寧にお断りを入れてみる俺、しかしエルフの表情は真剣だった。
「いやいや、お礼なんて言われても困るよ。ボクが言っているのはそうじゃなくてさ。放置できないって」
「えぇ?じゃあ、あの儀式何だったんだよぉ」
子供みたいに不平をたれる俺。あからさまに嫌そうな顔をした。そのときの俺の表情は無邪気な子供みたいだったかも知れない(実際に子供なんだけど……)
その顔をみて、ルシナは苦笑いをした。
「君は整っている美少年だと思うけど、表情が豊かだね」
「そう?整ってる?」
「うん、稀にみる美少年だよ。最初見たとき驚いた」
「そりゃどうも……(まぁ俺の前世を知ったら、もっと驚くだろうけどね)」
「あんまり自分の顔を自慢しないんだね。人族にしては珍しいね……」
俺は自分の顔を褒められても素直に喜べないところがあった。自分の顔であって、自分のものでない感覚。どこか、俺の前世と切り離せない自分がいるのだった。
「まぁ、自分の顔とかよりも大事なものがあるから……」
「へぇ……、ますます好感が持てるねぇ。ボクは気にいったよ。キミのこと」
「ありがとう」
「ふふふ……。じゃあ悪いけど、この森にいる間、監視させてもらうよ」
さらっと怖いことを言うエルフ。俺は驚いた。
「え?監視?」
「当然だよ、ここはボクたちの土地だもの」
「(人族側はここはエルフ領地と人族は認めていないんだけどな……)」
俺はリリスと顔を見合わせる。
「リリス、どうする?」
「ふん、問題なかろう。こちらは魔獣狩りと修行だけできれば良い」
それを聞いて、ルシナは笑った。
「魔獣狩り?そんなの人族には無理に決まってるよ。ましてや子供になんか」
「そ、そうだよ……ね」
感覚的におかしくなっているが、たしかに魔獣を狩れる5歳児なんか見たことも聞いたこともない。
俺らはエルフに監視されることになったようだ。
「じゃあ、ちょくちょく来るから。今日はここらで失礼するよ」
「いや。もう来ないでも平気だよ?」
「……来るからね」
そう言って、ルシナは南の方面へ消えていった。
「行ったな……」
完全に消えるのを見て、俺は呟いた。消えたと見せて……、どこかで監視しているのかも知れないから、一応小声だ。
リリスは疲れたような顔をして笑った。
「まったく、騒がしいエルフじゃったわい」
「監視するってさ」
「ふん……好きにさせるが良い」
「いいのかよ?なんだか心配だな……」
リリスは微笑みを浮かべた。
(ほう……、警戒心が出てきておるのか。感心じゃ……森に来て正解だったかも知れんのぅ)
「心配無用じゃ。あれは危害を加える者ではない」
「いや……用を足すときとかも見られているのかなって」
「そっちか!」




