第84話 エクリプス王の苦悩
//////ラスタリス王国内//////
ラスタリス王国 エクリプス王は謁見室で奇妙な報告を受けていた。
豪奢な金色の髪を肩まで靡かせ、凛とした眼光は王というより戦士のものを思わせた。
謁見室には大きな王座がしつらえてある。その前に、文官達が数名報告書をもとに王に国内のニュースや議題を報告していた。
エクリプス王は、不機嫌そうな様子で椅子に肩肘をついていた。今にも斬りつけんばかりの眼光に、文官の手が震える。
「何……魔獣の森で?」
「はい。何やら山火事が起こったとのこと」
「あそこは確か……」
「はい、あそこの木々は魔素が強く。通常の火では到底燃えません」
「それが山火事とは、不可思議な……して?」
「それと、奇妙な報告もされております」
「なんだ!原因究明へのアクション報告はどうした?」
「は、はい!まだ指示しておりませんで……」
エクリプス王は、北方にあるサザーン王国との密漁問題で不機嫌になっていた。
国王としての政務は毎日多忙である。優秀な参謀が居ればいいのだが、国内でも色々と問題が多い……。結局は自分でやるしかないのだ。
「まぁ良い……で?その気になる報告とは?」
「な、なんでも……その火事が起こった原因が魔法攻撃によるものでは?との報告があります」
「ほう……エルフどもの仕業か?根拠は?」
「はい!ハーンドという新米警備兵が、自国内のラスタリス領土側から大きな炎の隕石が落下したとのこと」
「なにぃ!?なぜ我らラスタリス王国内からそんなものが飛んでいったのだ!?」
「それは……」
「調査部を行かせたのか!?」
「い……いえ!王に決断していただこうと思いまして……」
「馬鹿者!そんなものをいちいち待っているアホウがどこにいる!?」
「は、はぃ……!ではすぐに調査部の派遣を……」
はぁ……と王は溜息をつく。
王国内での優秀な人物は多いが、傑物ともなれば勢力の強い派閥につく。辺境伯や公族に優秀な人物が取られており、肝心の王直属の配下が無能揃いということにも頭を悩ませていた。
王国内には、
■正規派閥(王の直下)
■公族派閥(王族で数グループに及ぶ)
■辺境伯や有力貴族(各地方の豪族や貴族たち)
大きくわけると、これらの派閥がいる。
自分の勢力を拡大せんと人材確保にやっきになっているのだ。王は若くして王座についたとして、敵対勢力も依然多い。しかし、エクリプス王は、他貴族たちを御するのは簡単だと考えていた。一番やっかいな派閥を除いては……。その派閥とは……
■王妃派閥であった。
王妃シーエンサ・フォン・ラスタリス
ラスタリス王国王妃でもあり、王の2番目の正妻でもあった。
エクリプス王は一人目の妻、ラランネ王妃を深く愛しており、ひとり娘であるシャルロッテを産んだあと幸せの絶頂にいた。しかし、難産が原因でシャルロッテが3歳のときにラランネ王妃は急逝している。
ラランネ王妃を失った王は、しばらく女性すら近寄らせなかったが、権謀渦巻く王宮内の策略で、次の王妃を選ばざるを得ない状況に追い込まれた。そして、次の王妃となったのはシーエンサ王妃である。
シーエンサ王妃は、才能豊かな女性であり、また強かな娘でもあった。
有力貴族の娘ではあったが、魔力や剣技においては「天才」の名を欲しいままにしており、何より美貌の持ち主であった。国民からの人気も高く、多くの貴族がシーエンサ王妃に取り込まれている。
実際、シーエンサが王妃の座についたとき、「エクリプス王より女王制度を整えるべきでは?」との声が聞こえたくらいだ。
シーエンサ王妃は、エクリプス王との間の次期王たる王子を産むことを期待されていたが、2年経過しても懐妊報告はされなかったが、突如として王子誕生報告がなされた。
国内は、王子誕生のニュースに喜んだが、首を傾げる者も多かった。
「はて……王と王妃の”営み”は、それほど盛んであったか?」と……。
実際、エクリプス王はシーエンサ王妃を嫌っており、同衾することは稀であった。それがため、王子誕生においては、いくつかの噂が立っている。
「王子は、エクリプス王のまことの子か……」と……。
さすがに、不敬罪に問われる発言を表立ってする者はいないが、その噂は今でも続いている。
話を戻そう……、今 エクリプス王は王国内の敵に囲まれ。そして王国を守るため、外的な敵勢力とも戦わなければいけない状況であった。そして、さらに自身の無能な部下という新しい”敵”とも戦っていた。
「はぁ……」と溜息をついたエクリプス王は、報告を続けさせた。
「続けよ……」
「は!ハーンドという兵いわく、不思議な少年が魔獣の森内で火事を消してくれたとの報告が上がっております」
「不思議な少年?」
「はい、ハーンドからの報告では青い髪の少年が、巨大な魔法で火を消したと」
青い髪……
エクリプス王は、その報告をきいて先日 マリーシアとリカオン達の養子が魔人に殺されたというニュースが頭をよぎった。
「なんと不憫な……」と、憐れんだエクリプス王。養子とは言え、リカオン達は大事に育てていたと聞いている。マリーシア達とは旧知の仲ということもあり、憐れんだ王は多くの見舞金をドラギニス家に渡した。
(たしか、死んだ養子というのも青い髪をしていなかったか……?)
「ふむ……」
しばらく沈黙するエクリプス王。顎に手をおいて、何か考えている。
他の報告官たちの顔が引きつる。
(あ、あいつクビになるんじゃ……。) そんなあってのことを考えつつ。王の動向を見守る分官たち。
そして、王が動きだした。
「あいつを調査に向かわせろ。シェナーンだ」
「!?お、王よ……シェナーン将軍は危険です。あやつはいつ寝返るか……」
「だからと言って、”呪い子”であるシェナーンを向かわせるのは……」
「奴が適任だ。魔獣の森に向かって調査を終えて帰ってこれる人物は奴しかおらぬ……」
文官達は、そういわれると冷や汗と共にシェナーンへの伝令を飛ばした。
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