第83話 金色のエルフ
入口のほうから音を感じたリリスは慌ててヤマトを叩き起こした。
「ヤマト!起きろ!入り口のほうから音がした!」
俺はその声で飛び起きる。
「え?!は!?」
寝ぼけまなこのヤマト。半分寝ている。
「起きろ!ヤマト!」
「え……?山火事!?」
「何を寝ぼけているんじゃ!何か物音がしたんじゃ!」
ようやく思考がまとまってきたヤマトは状況を理解した。
「音?ま、魔獣かな?」
魔獣だとすると厄介だ。この洞窟はまっくらなため、戦いにくい。
しかし、リリスは首を振る。
「ここからでは判らん」
「よし!入口にゆっくり近づいてみよう」
状況を把握しようと、俺とリリスは、ソローリ ソローリと入口に向かう。
(徐々に月明かりで明るくなってきた。確かに何かが入口付近にいる。)
(あれは……獣じゃない。人……人じゃな!)
なんと、人影が確認された。この魔獣の森に人がいたのだ。
(リ、リリス……人がいるぞ!)
(ぬぅ……魔人……では無さそうじゃが)
(旅人か冒険者か?)
(護衛付きの商人などは通るじゃろうが……普通は迂回して海をつかう)
(何者だろう……)
(オヌシ、龍人じゃろう。夜目が効くはずじゃ。見てみぃ)
(おぉ…確かに……)
龍人族は夜目が利く、しかし真っ暗ではそれほど見えるわけではない……。これくらいの月の光があれば十分見えるはずだろう。
(んん?)
目を凝らしてみてみると……。意外なシルエットが浮かびあがる。
(え?あれってもしかして……)
そこには、背の高い月明かりに眩しい、金髪のエルフの女性が立っていたからだ。容姿までは判らないが、耳の形からしてエルフに間違いない。
あのラノベでは必ず出てくるという種族。 俺の憧れの種族……。エルフだ。
俺は相当驚いた。
「エ……エルフ!?」
俺はうかつにも声を出してしまった。
リリスが呆れたように言う
「まぬけ……!」
エルフは驚いて、こちらを振り向く。
「だれ!そこにいるのは?」
エルフは背中に背負った弓袋から矢を、目にも止まらぬ高速持ち換えて弓につがえて、こちらにビタ!と俺に狙いを定めた。
(目にも止まらぬ高速技だ。すごい……)
俺が感心していると、リリスが戒めた。
「感心している場合か、何か応えよ。射られるぞ……」
俺は抵抗の意思がないことを伝えるため、両手をあげて前に出る。
「ま……待ってくれ!敵じゃない!」
月明かりに洞窟の中から出てくる2つの人影。その姿をみて、エルフも目を見開く。
「こ……子供!?」
エルフはひどく動揺している。子供ってところにビックリしているようだ。俺は警戒させないように、声をかけた。
「説明させて欲しい!まずは弓をおろしてくれ」
リリスも口を出す。
「ふむ、ワシらは敵ではない。安心せぇ」
暗闇の中から、リリスも顔を出す。彼女は実体化しているのでエルフにも見えるはずだ。
「ど、同族!?エルフがなぜここに?」
なんか盛大に勘違いしていないか?リリスをエルフとか言い出したぞ。でも、言われてみればリリスはエルフっぽい感じはする外見だ。耳なんかも尖っている。
俺も耳を出せば、同じような耳をしているんだけどな……。
ちなみに龍人の耳は人族に比べて尖っているが、エルフほど尖ってはいない。
俺はさらにエルフに話しかけることにした。
「とにかく、僕らは敵じゃない。こちらこそ聞きたいくらいだよ、なぜエルフが魔獣の森に?」
「質問に答える必要がない……怪しい子供だ、親子?ではないようだけど。何者なの?!」
「説明させてくれ、本当に敵じゃない。ほら?!武器なんか持っていないだろう?」
俺は両手を上げたままクルリと1回転してみせた。
「……」
エルフはどうしようか迷っているようだ。問答無用で射ってきそうな雰囲気はもうない。
俺はここが勝負どころだと思い、畳みかけるように話しかける。少し強気に……。
「エルフっていうのは、丸腰の子供に弓を向けたまま会話する習慣とかあるのかい?」
俺がそういうと、エルフは「仕方ない……」といった感じで、弓を背中に戻した。
「ありがとう、理解してくれたんだね」
「まだ信用したわけじゃない。今からそちらに行く。いいかい?」
「もちろん」
そして、エルフ女が近づいてくる。
顏立ちが分かってくる、月明かりにも分かる美形だ。少し幼い顔立ちで、唇の色とかも赤くふっくらしている。目元はキリリとしていて、意思の強さを感じる。瞳は、まるで明るい月のような美しい金色の瞳だ。
金色の美少女エルフ……。彼女と知り合ったのは、この日であった。
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