第78話 苦痛のはじまり
上から片手を突き出すと、ウルフ1匹に狙いを定め無詠唱で発射を始めた。
ゴウ!!
ファイアーアローが一発、発射される。
それなりの速度なのだが、ウルフは余裕で回避した。しかし防御を気にしないでいいので楽だ……。
「よし!じゃあ、もう一発!!!」
ゴァ!ゴァ!と、炎を撒き散らしながら火の矢が、次々とデビルウルフを狙うが、どれも当たらない……くそ、イライラするぜ。しかし、一方的に攻撃できるから余裕だ。さっきとは精神的に違う。
「オラオラ!オラー!」
と調子に乗って矢を撃ち続ける……。もはや一方的な攻撃風景だ。そのうちデビルウルフ達の体力が尽きるため、俺の勝ち筋が見えた。
と、思ったのだが……
そのとき、デビルウルフ達に変化が出た。ウルフ達の体が光ったと思ったら、
デビルウルフの速度が目に見えて早くなったのだ。……ていうか、早くなったというより3メートルくらい、瞬間移動するようになった。
シュン!シュン!!
3mの範囲限定で、超音速で動くみたいな?一瞬止まるんだが、すぐ音速移動するので目まぐるしい。
「こ、これは厄介だな……こんなスキルもってるのか」
俺はリリスをチラリとみる。
「な、なんじゃこれは……。このデビルウルフもスキルをもっているのか?」
リリスが驚くところを見ると、普通はこんなスキルをもっていないらしい。
それ以降まったく当たらない……
「やばいぞリリス。デビルウルフの奴らむしろ体力が整ってきている?」
「スキルを使っているから体力はほとんど使っておらんのじゃろう」
「リリス、策をくれよ」
「ならぬ、オヌシで考え実行するのだ」
「ケチー!人でなし!」
「もともと人ではないわ」
「じゃあ龍でなし?」
「たわけ。どーするんじゃ?ヤマト。考えるのじゃ。魔法や体力もありあまるお前は有利なんじゃぞ。考えよ」
「わ、分かってるよ」
(しかし参ったな、デビルウルフのあの能力は厄介だ。まったく当たらないし、あれで攻撃されたら避ける自信がない。柱で避難しておいて正解だわ)
俺は顎に手をおいて考えはじめる。このポーズはリリスが考えるときのポーズで、癖が移ってしまった。
(考えろ、考えないで戦っても次がない……常に考えろ)
デビルウルフの動きに何か解決口があるかも知れない。俺がアローを発射するとき、奴らはかならず、俺の手の位置を確認している……。そこから予測しているんだ。これは使えないか?つまり手を出さなければ、出すタイミングと向きがわからないはずだ。
「よし……ならば……」
俺は両手を後ろに組んだ。
「これならば、見えないだろう?」
それを見たウルフ達は、動きを止めてこちらを注視している。やはり、手をみていたか。
「うつけ……どう攻撃するのじゃ」
「ふふふ、まぁ見てろ!ぬん」
俺は両肩に魔力を込めた。すると、リリスや俺にしか見えないが。カタパルトのように両肩に魔力球が装着される。
「なるほど……両肩から発射するのか。器用な奴じゃの……」
「まだまだ……」
そして、両手を元に戻し、前へならえの要領で前に出す。
「ふん」
そして、両手に魔力球を作り出す。
4つの砲台をもつヤマトの完成だ。
「なんと……4つも……。扱えるのか?」
リリスは驚いていた。
しかし、俺は魔力操作にはある程度自信をもっていた。それにこれは、俺が前世でみていたロボットアニメのマネだ。イメージできているものは、魔法発現できるはず!
「できる!ガン○ンク作戦開始!」
まず、両手から普通に今までどおり二匹のウルフを狙う。すると、ウルフは手の位置から推測し、超速度で3メートルほど瞬間移動して避ける。ここまでは予測通りだ。
「よし!そこだ!」
その瞬間、カタパルトアローが2連射!
ドン!ドン!
「ギャン!」
「ギャオン!」
二匹同時にアローが直撃!仕留めた!!
リリスが感心したような声をあげる。
「おぉぉ。肩からの発射が見事じゃ、そんなことをする魔法使いなど見たことがないぞ」
「ふふふ。いくぞー!」
ふはははは!!作戦勝ちだ。残り二匹もやるぞ!俺が意気揚々と向き直るとそこには……
「あれ?……」
と思ったら、残り二匹は颯爽と逃亡していた。もはや遠くにいってしまっていた。
「やるのぅ……、敵わないと判断したのじゃろう」
「引き際も鮮やかだな……、純粋にすげーなデビルウルフ」
俺もデビルウルフの狩りのセンスに賞賛を送った。
「さて……降りるわ」
俺は土魔法で構築した柱を下げるとデビルウルフ二匹の死骸に近づいた。
すると、クローベアーのときのように、俺の胸から、シャークヘッドが飛び出してきた。
【魔のコアを確認しました、捕食しますか】
【捕食する】【捕食しない】
でた!選択肢!やっぱり出た!!
リリスも2回目とはいえ、目を見張っている。俺は恐る恐るリリスに確認をする。
「や、やるしかないよね、リリスさん?」
「むろんだ!やるのじゃ」
「簡単に言ってくれるよ……捕食したときの激痛が怖ぇーよー。やらなきゃダメなの?」
「腹をくくれヤマト」
「でも捕食している間、無防備よ?俺ってさ」
「大丈夫じゃ。この騒ぎで動物どころか魔物も寄ってきていないわ」
「……くそ!どうにでもなれ!」
俺はやけっぱちになり、【捕食する】を選択した。
……そして地獄が始まった。
「ギャーー!」
森に絶叫が1時間きっかり
響き渡るのであった。




