第76話 デビルウルフ vs ヤマト(前編)
しかし、狩りに出かけて数時間……。相変わらず動物には出会わない。魔獣にも出会わない。
(またかよ……)
おそらく拠点の場所が悪いんだろう、まだまだ森の入口付近ということもあり動物も魔獣も数が少ない。 まぁ、数が多いところに拠点を作ったら、危険すぎるから当たり前なんだろうけど。
時刻は夕方近くで、そろそろ帰るかという段になった。リリスなんか暇すぎて、欠伸をしている始末だ。
「お前もっと真剣にやれよ……」
「暇なんじゃもん」
「じゃもんって……」
「そろそろ帰る……ん?」
そう思っていたら、リリスの表情が真剣になり、俺に向かって「しっ!」と静かにするようジェスチャーをした。
(な、なんだ!? なにかいたのか!?)
リリスが頷き向こうのほうを指で指し示す。
(……ん?)
俺は、その先に視線を凝らす。その先には1匹の狼がいた。
(おぉ……狼だ!ようやく動物に出会えた)
(たわけ……あれは魔獣じゃ、デビルウルフじゃな)
(また魔獣かよ……動物が良いんだけどな……)
確かによくみると、地球で知ってる狼と違う……つーか全然違う……そもそもフサフサじゃない……毛皮でなく、なんとなくツルッとしてる肌で肌感が気持ち悪い。顔も狼というよりも、人の顔に近い感じがする。口裂け女的な顔に耳がついているようなと言えば判りやすいだろうか。
(気持ち悪い!あんなん倒しても食べるの嫌だな……)
(わがまま言うでない、デビルウルフの肉も結構うまいぞ?)
(まじで?あんなキモいのに?)
クローベアーのときもリリスは美味いと言っていたが、本当にそうだった。
(うむ……うまいは美味い。しかし、魔獣とやり合うのに絶好の位置におるのぅ。こちらに気がついていないぞ)
(チャンスじゃないか?)
(先制を取れれば殺れる。よし、やるのじゃ)
しかし、デビルウルフまでかなり遠い……。
覚えたての俺が使える魔法では外れる可能性がある。俺は意を決してと匍匐前進で近付いていった。
(まぁ……誉れ高い龍人が、ゴキブリのように……)
(うるせー!)
俺とリリスは、テレパシーで罵り合いながら進んでいった。ちなみにリリスは立っている。彼女は他の人には見えないので、隠れる必要すらない。
(……よし、ここまでくれば……)
デビルウルフまで10mの位置まできた!まだ奴は気がついていない。よし、この位置ならいける!!俺は魔力球をイメージし始めたところ
「ガルルル」と真後ろから唸り声が聞こえた。
「後ろ?!?」
俺は後ろを振り返ると、そこにはデビルウルフが立っていた。そして口を大きく開けて今にも噛みつこうとしている。
「うわ!」
ブン……
足に身体強化魔法をかけて俺の下半身が魔力で満たされる。
ドン!!
俺は前転の要領で、前に緊急回避した。
シュバ! ガチ!!
俺がいた地点に、デビルウルフの牙が噛み合う音がする。まさに危機一髪……。俺が前転回避したのでスカったのだ。
俺の動きにリリスが驚いた。
「ヤマト……今の身体強化魔法……」
リリスの言葉を遮るように俺は叫んだ。
「二匹いたのか?!」
俺が前に飛び出したせいで、最初にみつけたウルフも俺を睨んでいる。後ろを振り返ると先ほどのウルフだ。
「やばい、挟み撃ちにあった!」
「違うぞ、ヤマト!!」
「え?」
リリスに質問しようと思っていたら、さらに横から二匹のそりと出てきた。
「え?!」
気がつけば、俺は前後左右4匹のデビルウルフに囲まれていた。
「やられた……囲まれてるぞ」
「ガルル……ガルル……」
デビルウルフは俺を囲みながら威嚇してくる。
「ぬぅ。獣の狩り技術を侮ってはいかんかった!狩りのプロは向こうじゃったわ!」
「くそ……」
しかし、そうも言ってられない。戦うしかないんだ。四方から囲まれているから、一瞬も気を許せないぞ!
「ガォ!!」
ダッ!!
「前のウルフがきた!!」
俺はとっさに前に片手を出して、ファイアーアロー『火の矢』を発現。俺の目の前に、炎でできた矢が形作られる。
すぐさま発射
「よし!発射!」
ドン!
かなりのスピードで、俺のファイアーアローは発射された。しかし、デビルウルフ達は余裕をもって避けた。
シュン!!
「さ、避けた!?」
しかし、予想に反してデビルウルフは、ファイアーアローに怯む様子はない。冷静に俺の動きを見ている。
「くそ!」
「お前の発動が遅いんじゃ!もっと即射できんのか?」
俺なりの速度で発射したつもりだが、リリスからするとまだまだ遅いらしい。
「習って数日なんだから仕方ないだろ!」
と、悔しがっていたら、今度は後ろのウルフが襲ってくる。
「ガオ!!」
「ファ、ファイアーアロ―!!」
同じようにアローで迎撃するが、これも外す。
これもウルフは、すぐ引き返して距離を取る。こちらの様子を見ている……その目が挑戦的にも見えるから不思議だ。
「な?遊んでやがるのか!?」
「なるほど、こうやって交互に襲うふりをして、体力戦に持ち込もうとしているのじゃ。巧みじゃのぉ」
「そんなこと言ってる場合?!うわ!またきた!」
デビルウルフ達は交互に、前後左右から繰り返してくる。無視すりゃいいだろ?と思うだろうけど、本当に噛みついてくる可能性もあるので気を抜けない。
このやり取りを数時間……




