第74話 ゲールクロー『疾風爪』
そして、俺とリリスは、体得したスキルを訓練することにした。
[訓練:スキル]
捕食で覚えたスキルを訓練して実戦レベルにする。例のゲールクロー『疾風爪』というスキルだ。
「まずは、ほれ?使ってみろ」
相変わらずメチャクチャな師匠、リリス。
「リリス……使ってみろというけど、使いかたは?」
「スキルは固有能力じゃ、そんなん判るわけあるまい……」
「お前、そういうところあるよな」
「うるさいのじゃ。とにかく時間がない。まずは使ってみて発動しないようなら、そこから分析すれば良いのじゃ」
とりあえず、目の前に大きな大木をターゲットに使ってみることにした。
(えーっと、クローベアーはどうやったっけな……)
こればっかりは、リリスも使い方は分からないとのことだ。
まず、イメージイメージ……。
(確か、あのクマコロなんか腕を上げて下ろしていたよな、クマがガォーって爪でひっかくみたく)
同じようにやってみるか……。俺はおもむろに、腕を上げてみる。そして、光る爪の斬撃を出すイメージで腕を一気に下ろしてみた。
シュワン!
という音を立てて、俺の目の前に光る三本爪が現れた。
「で、でた!!ゲールクロー『疾風爪』!」
「おぉ!でかした!ヤマト!」
喜ぶ俺達を後目に、光る三本爪が、ヒョロヒョロ〜っと木に向かっていくが辿りつく前に力尽きて消えてしまった。
俺は唖然とした表情でリリスと顔を見合わせる。リリスは口元を押さえて、苦しそうな顔している。
「……プッ……」
笑いやがったな、この女……。
「くそ!もう一度だ!」
俺は同じ動作をやってみた……。今度はもっと思いっきりやってみた。しかし、全く同じ結末だった。
「どういうことだろう。物知りリリス君?」
「どーもこーもない、練習不足なだけじゃ。出ただけ奇跡じゃよ。本当にスキルを得ているのだからな」
「なるほど、なんか俺の知っている異世界転生ものの本だと。楽にレベルもスキルもすいすいゲットして使っていたから」
「例の「らのべ」か? そんな都合よくはいかん」
「だよな……となると、まだまだゲールクロー『疾風爪』は使えないな」
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ここは、とある魔界僻地。
魔界にはいくつかの魔王がいるが、その中でも強い力を持ち、狡猾な政略に長けた魔王がいた。
蠅の王ベルゼブブ。
醜悪な容姿をしており、手足も虫のそれだ。
玉座のようなものに座っているが、よく見るとその玉座は人の髑髏で出来ていた。
「ほう……オリテリア不在の可能性がある?」
「は……、そのようで。どうやら、とある人間と接触を繰り返しているようです。」
そう答える魔族は、人型で大層美しい容姿をしていた。執事のような恰好をしているが、その目は緑色に光っており、あきらかに魔を含んでいた。
「なぜ人などを…」
「噂ですと、悪魔バフォラットを退けたとか」
「なに?悪魔を!?」
「あくまで噂ですが…」
「信じられん。面白い……その人間を見てこい。ラスター」
「は?王よ、人間などをですか?」
「二度言わせるか?ラスター」
そう言われたラスターと呼ばれる魔族は地上界に行かざるを得ないと悟った。
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【ヤマト視点に戻る】
魔法訓練もスキル訓練も順調だ。もう少しで低位魔法を覚えきるところまで来ている。リリスも張り切っている。
「低位魔法はほぼマスターしておる。これから土魔法の訓練を開始する、火魔法で攻撃、土魔法で防御。この二つを覚えればほぼ無敵じゃ」
「そんな簡単に無敵?言い過ぎだろう。しかも低位魔法だし」
「アホはオヌシじゃ、2属性以上ある人間が何人もいると思うな、ましてや都合よく。火と土セットでなど、一握りじゃわい」
「ましてや、全属性なんていないってか……」
「勇者レベルでは2か3じゃ。全属性など神にも近い存在だ」
「ちなみに過去いたの?」
「カリアースは全属性だったのじゃ」
「俺と同じ魂の人?本当に俺の前前世なのかね……そんな凄い人」
「絶対にオヌシの前世じゃ。間違いない」
「前前世ね。前世では散々だったから……ちなみにカリアースは半神だったわけじゃないの?すごくないか?」
「いや、正真正銘の龍人じゃったな」
「不思議な人だな……」
「奴は全属性のうえ混合魔法まで駆使していた。神とも対等に戦っていたぞ。オヌシも素養だけなら神とも戦えるということじゃ」
「か、神とも……」
俺は呆気に取られた。オステリアとか、他の神々とかと戦いなど想像もつかない。
「それでもカリアースは最後には神に殺されたがな……。卑怯な手を使われたからじゃが……ワシはオステリア達を絶対に許さん」
そう言ったときのリリスは、憎しげだった。
「……」
(いつか、オステリアとリリスの間での確執に決着をつけるときがくるのかも知れない……。そのとき、俺はどうするんだろうか……)
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さらに数日後
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