第73話 リカオンとマリーシアは……
その頃、リカオンとマリーシアは……
/////////リカオン視点/////////
マリーシアの精神状態が不安定すぎる。あの魔人の襲撃から1ケ月が過ぎた。
マリーシアは妊娠中だが、毎日ヤマトを探している。今日も遠くの街まで聞き込みに言っているようだ。
もちろん俺も探しているんだが、もう絶望的とさえ思っている……。
ヤマトは不思議な子だった。まだ5歳で大人顔負け理解力と判断力をもっていたし、どんなに難しい本でも理解しているようだった。
森であの子と出会い、幸せな日々だった。ヤマトがいたから、我々夫婦はやさしい時間が過ごせたのだ。
(あの子に会いたい、もう一度)
あの日、魔人が襲ってきた日。すべてが変わった。魔人に俺は呆気なくやられ、ヤマトがマリーシアを魔人から守ったのだ。
庭に残されていたのは、魔人の焼け焦げた死体のみだった。ヤマトの姿はどこにもなかったのだ。魔人の死骸からするに、魔人は何かとてつもない力に焼かれたと思われた。一体何があったのかは分からない……。俺もマリーシアも気絶していたからだ……。
マリーシアが最後に見たのは、魔人に突進していくヤマトで、二階の窓から落ちていく姿だった。普通であれば、それで死んでいると思う……まして魔人と落ちたのだ……。魔人に殺されているか食べられているだろう。
しかしヤマトは本当に死んだのか? せめて遺体が見つかれば諦めもつくんだが……。マリーシアも、俺もヤマトが死んだとは信じられないでいる。
衛兵やギルドにも、依頼を出している。しかしどこも「魔人に食べられたんだろう」と結論を出してしまう……。もはや動いてくれない。
本当にヤマトは死んだんだろうか。俺は父親失格だ……家族も守れない父なんて……。
それよりもマリーシアだ。身重なのに、毎日ヤマトを探しに森やギルドへ確認をしに行っている。
家にいるときも、良くヤマトが使っていた日用品などを見ながら涙を流している。
「ヤマトちゃん……私の子……どこなの?」
とノイローゼ気味だ。そんなマリーシアの姿を見ているのが辛い……。本当に辛い。
しかし無理もない……、血がつながっていないとはいえ、マリーシアはヤマトを本当に愛していた。神はなぜこのような試練を与えるのか。
しかし、生きているのでは?という希望も我々夫婦は持っている。
実は目撃情報が一つだけあるのだ。事件があった日から数日後、とある商人が一人で馬車を運転している青い髪の少年を見た、というのだ。
「たしかに青い髪の子で、とてもきれいな顔をしていた。キコリのお父さんに弁当を渡した帰り、と言っていた」
とのこと。重要な証言だ。
しかし、その目撃された証言がヤマトだとすると、何故 ウチに帰ってきてくれないのだろう。なぜ一人で馬車に?そもそもヤマトはお金などもっていない。謎が多すぎる。
もしかしてヤマトじゃないのか?
そんな希望と諦めで、いつもループしている。
でも俺たちは諦めない、俺はあの子の父親なんだから。ヤマト……お願いだから姿を見せてくれ。俺の子よ……
////////マリーシア視点///////
ヤマトちゃんがいない……。私の一人息子。
あの子は最後に言っていた……。「僕はほんとうの子供じゃないんでしょ?」と……。
どこで知ったのかしら。あの子は、一人で苦しんでいたのよきっと。私はそれを知らずに……。妊娠してから、私とリカオンは、新しい赤ん坊の話題でいっぱいだった。それを見ていたあの子はどんなに傷ついていたんだろう。
そう思うと胸が張り裂けそうになる……。
もう一度会いたい。あの子にもう一度……。
皆は、「魔人に食べられた」と言っているけど、信じないわ。絶対にどこかで生きている。私の大事な一人息子……。
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//////ヤマト視点に戻る//////
「信じられん……もう5日でほとんどの低位魔法を覚えてしまったぞ」
毎日、リリスと魔法訓練をつづけている。
リリスは、超リリス理論で俺に教えてくれている。かなり無理のある教え方であるが、魂が同化しているせいか。何とか彼女の考えていることが伝わってくる。
また、この体はスペックが高いらしく、もの凄く記憶力が良い。そのお陰か、俺はリリス理論を超スピードで理解し、体得していた。
リリスは驚いていた。俺の魔法を覚える速度が尋常ではないらしい……。あと数日で低位魔法をすべて覚えてしまう勢いだ。これは異常なことらしい。
「たしかに覚えるのに苦労したことがないな……全部一発で成功しちゃうな俺」
「それが異常なんじゃ……天才という言葉では片づけられん……異常じゃ。詠唱を覚える必要がないとは言え、早すぎる」
「確かに詠唱暗記しなくていいからな……でも、本当に詠唱覚えなくていいのかな?」
「無詠唱じゃから必要ないが、いつか覚えておく必要はある。魔法学としては必要な知識なんじゃ」
「いまは生き残るのに技術のみ必要ってことか……」
俺の魔法を覚えるスピードが速いのは、前世で読んでいたラノベで魔法のイメージを大体もっていたせいもあるんじゃないか。それか神の血があるせいかは判らないけどね……
「そのラノベ?というのか?その下地があったのも大きいとは思うが……、まぁとりあえず早く訓練を終えられそうで良かったわい」
「普通と比べてどれくらい早いんだ?」
「2年以上の訓練が数日じゃ。早すぎじゃわい」
「まぁいいじゃん。早いってことは良いことだよ」
「うむ……、では低位魔法を学び終えたら、スキル訓練じゃ。そろそろ頃合いじゃ」




