表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イケメンに異世界転生したら森に捨てられてた件  作者: 八条院せつな
第一章 ヤマト幼年時代
7/175

第7話 今日追い出されます

異世界に転生してから3日目が経過した。


俺はいま暖かい部屋で、一人でベッドに寝かされている。


転生初日に助けられた人物の家に連れてこられて、そのまま面倒をみて貰っているのだ。どうやら、この家には二人しかいないらしい。助けてくれた男性と、もう一人だ。おそらく夫婦なのだろう。俺のベッドから見える光景は面白くとも何ともない……うっすら見えるのは、白い天井だけだ。ちょーつまらん・・・しかもボヤボヤしてて、良く見えないのよ……


視力はボヤけてまったくダメだし、筋力もない……。首を横にしようにも、まったく動かないんだ……。無力ってこういうことを言うのね……。


うぬーー、暇だ……。赤子だと仕方ないが、することがないよね。


「ふぇ!ふぇえぇ!」


とりあえず、声を出してみる。


声帯もできあがっていないので声も出ない。くそー、スマホもないし

一日 横になってるのってツライんだな……。


(暇!暇すぎる!!!)


身悶えて、赤子らしく泣き叫んでみる。


それしか出来ることがないので、たまに泣き叫んで誰か呼ぶ。せめて抱っこして外を見せてほしい・・・俺の、ささやかな趣味だ。


カタン……と音がして誰か近づいてくる


お?釣れたな。


ふ……。作戦成功だ。


ふわりと、自分の体が浮き上がるのを感じる。

この無重力感……なかなか新鮮だ。ぶっちゃけ少し怖いけど楽しい。ただ抱っこされてるだけだけどね……。


「@/h&ohhc?,??!」


何やら俺に何か話しかけているが、何言っているのか、まったく分からない。この世界の言葉だ。解るはずがない……。


目もボンヤリだし、シルエットしか分からないけど、今回 釣れたのは、たぶん女の人のほうだと思う。声の高さから推測するにだけど……。耳もよく聞こえないし、確信はもてない。


つーか女神、言語スキルつけてくれなかったんだよ。不便この上ないぜ……。本当に転生とかいいながら、実際は転移なのね……。


「$&””&&###!?」


うん??何か言っているな、慌ててるみたいだけど?


なんとなく子供慣れしていないのは分かる。きっと若い人なんだろう。たぶん。


カチャ……。


うん? 俺の耳がもう一人この部屋に入ってきたことを告げる。ふふ、今回は入れ食いだぜ!!たぶん男のほうだ。たぶん……。



何か二人で話しているな。



「&/#Z,..Y//&&」


「@/h&ohhc?,??!」


二人で何かを話し合っているが、二人とも慌てているのが分かる・・・俺が泣き叫んでるから、対応に困っているんだろう。なんか笑えるな。この二人……。


何言ってるかは、わからないが雰囲気でね。なんとかなく分かる


ふぅー、まぁこのくらいにしてやるか


「だあぶあー、あふぅーー」とりあえず、落ち着けよって意味をこめて泣くのを止め、声を出してみる。

 


「’"(''&/@」


「|&%&#♡」


なんか、二人とも落ち着いたみたい……。


お?


チュ!チュ!


俺のオデコにキスしてくるし。なんか知らないけど、この二人子供慣れしてないけど、子供好き?


まぁ、何でもいいけど……。


はぁ、次は何して暇つぶす?

そんなこんなで転生して15日目。平和に行っているかと思っていたけど、どうもそうではなかったらしい……。


どうやら、俺はこの家を追い出されるらしい……。言葉は分からないけれども、それを俺は確信している。だって、女の人のほうが俺を抱きしめて泣いたり。何か深刻な雰囲気で話している様子とかあったしね。 言葉こそ理解できないけど、伝わってくる……。


俺は今日この家から出てどこかに行くんだ……。そう理解している。


なんでそんなことになったかというと、凄くいじめられているとか、そういう意味じゃない。むしろ、この家の人達は凄くいい人達で、俺を手放したくないようだ。たった2週間くらいの時間だけど、この家の住人は、二人とも善良だということが分かった。


交互に面倒をみてくれているし、ミルクを作って哺乳瓶で飲ませてくれたりしている。


だが勘違いしてしまうが、もともと俺はこの家の子ではない。森で拾われた捨て子だ。いつ施設や孤児院に引き取られてしまうか、それを心配はしていたのだ。


すごく可愛がってくれているので大事にはされていると思うが。血の繋がりがない俺を、そのまま自分の家の子供にするアホがどれくらいいるのだろうか・・・養育費、自由時間、睡眠、さまざまなものが浪費する。


皆無だろう。そんな人いたら、俺が神認定してやるよ。


今日、バタバタとしている家の雰囲気から何か起ころうとしていることが分かる。おそらく、施設から孤児院の人間が俺を引き取りにくるのだろう。


ふぅー。これからどうなっちゃうんだろう。


家なき龍の子。



////////リカオン視点///////


あの赤子に出会ってから生活が変わった。特に妻マリーシアの表情が明るい。俺だってそうだ、毎日、家に帰るのが楽しみになっていた。


もちろん、親探しは全力でしていた。すぐ村長にも捜索願いを出したし、領事館にも捜索依頼をだした 。私費を投じてギルドに依頼までだしていた。


全力で、この子の親を探していたんだ。それでも見つからなかった。


やるだけやったんだ。うちら夫婦は……。


この国の法律で、親が見つからない孤児や捨て子は、強制的に孤児院に連れていかれる。期間はきっかり15 日間だ。


残念だが仕方ない。今日、役人が中央部から引き取りにくる。そういう手筈になっている。マリーシアも納得はしていないが、昨日 夫婦で決めた。あの子と離れる。そう決めたんだ……。


マリーシアは、辛いのか、今朝から部屋から出てこない……。


あの子のことを、もの凄く可愛がっていたからなツライのだろう。俺だって辛い……。


仕方ないんだ……。養子にするって手もあるが……。さすがに、そこまでは……。


しかし、マリーシアと俺との間には、子供はできない。もしかして、これは愚かな行為をしようとしているのかも知れない。


あの赤子は、神が与えた俺らの光なんじゃないのか??


い、いや!そんな考えをしてしまっている時点で、もはや引き取る気持ちが強いのかも知れない。


強い気持ちで、役人に引き渡さねば!!


そう考えていると、アッと言う間に時間が過ぎた。


いま、あの子は部屋で昼寝中だ、マリーシアはまだ部屋に閉じこもっている。


リン!リンリン♪


玄関の呼び鈴が鳴りだした。


俺は肩をビクッと震わせて、その呼び鈴が地獄の呼び声に聞こえた。

とうとう役人が来たのだ。来てしまったのだ……。


「来たか……」


さて……。辛い仕事だが、サッサと終わらせて今日は酒飲んで寝よう。


そう思い、玄関に役人を迎えにいった。

玄関門まで迎えにいくと、くたびれた中年役人がダルそうに立っていた


「こんにちは、お疲れさまです。中央管理部のかたですか?」


とりあえず、丁寧に挨拶をしてみる。


「ああ、サールと言う、これが身分証。さあ、サッサと終わらせるから、とりあえずその赤子を見せてもらおうか」


「は、はい。まずはうちに入ってください」


ずいぶん、横柄な態度だな……。ナメられている、うちが辺境にいるオチぶれた貴族だと見下されているんだ。


(まぁ、中央部の役人なんてこんなもんか)


金も人脈もないと思うと酷い対応をしてくる。


一抹の不安を覚えながら、リビングフロアへサールという役人を通した。


サールは、リビングを一周みると、俺に向かってアゴを突き出して睨みつけてきた。


「あ、ああ、わかりました、いま赤子を連れてきます。」


俺は赤子が寝ている部屋に向かった。


二階の角部屋だ。マリーシアと結婚したとき、この家を建てた。

実は設計段階から、この部屋はいつか二人に子供ができたとき、子供部屋にしようと決めていた部屋だ。


ドアの前に立つ。気合を入れねば。


「ふー……早く終わらせるんだ。冷静に、淡々と処理するんだ。感情に流されるな。何、簡単な仕事だ。子供を渡すだけだ」


自分に言い聞かせるように、そう呟くと意を決してドアを開く。


「!?」


ドアを開き、目の前の光景に俺はたじろぐ。マリーシアが眠っている赤子の頭を愛おしそうに撫でていたのだ。


年末も終わりですね。感想などいただけると執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ