第68話 ヤマト vs クローベアー(前編)
クローベアーは光っている両手のうち右腕だけを上げる……
俺との距離は数mはあるのに何してる?俺は何か違和感を感じた。
「この距離で何をするつもりなんだ……」
「バンザイしているようにも見えるがの……」
「片手じゃん」
俺とリリスがくだらない会話をしていると……
ブン!!
クローベアーは何もない空間を切り裂くように右腕を素早く下ろした。するとクローベアーの目の前に、光る三本爪が現れた。
「な、なんだ!?あれは!?」
俺が驚いていると、それを眺めている時間はすでになかった……。
ズア!
超スピードでこちらに飛んできたのだ。
「な、なんだ!?」
「避けろ!!ヤマト!!」
「く!間に合うか!?」
リリスの叫びと同時に俺は、とっさに足に魔力をこめると、速度を出来る限り上げて横に跳躍する。
シュン!!
俺が避けた三本爪は俺の真横を通り過ぎた。そして真後ろの大木に激突。
ズバ!!
大木は大きく抉りとられて、大きな3本の爪跡がついていた。
「うわ……おい、あの木を見ろよリリス。まるで斧で叩きつけたみたいになってるぞ」
「あれは……スキル、ゲールクロー(疾風爪)じゃな」
「あ、危ねぇ……」
「ヤマトでなければ死んでおったじゃろうな」
俺の反応速度にリリスは感心していた。俺の身体強化魔法はかなりのものらしい。
「強化魔法は慣れたもんじゃな。発動速度だけなら龍人の戦士なみじゃ」
俺は褒められたので少し嬉しい気持ちになったが、今はそれどころではない。
「そんなことよりも!魔獣って爪の攻撃が飛ばせるのか!?」
「いや、あんなスキル持ちは滅多にいないはずじゃ……。この魔獣の森の魔物は通常とは違うのか?」
「スキル持ちの魔獣が少ない?」
「……100匹いて1匹いるかどうかじゃ」
「ともかく、あんなんでやられたら……」
「即死じゃな……」
「そくし!?」
「即死とは、即座に死ぬと書いてな……」
「知ってるよ!」
「しかし冗談抜きに深刻な状況じゃ、あのスピードプラス、スキル。それにパワーも上回っておる。どう戦うか……ファイアーボールが一番発動時間が早い。あれで応戦するしかあるまい」
こうして俺とリリスは作戦会議を開いているが、クローベアーの前でそんな時間あるのか?と言われれば。今はある……。
クローベアーは、思ったよりも俺の動きが素早いせいか。俺の様子を伺っているのだ。俺はリリスと対策を話しあう。目はクローベアーから離さずにだ。
「あの、光る爪スキルみたいの避けながらファイアーボールを当てるのかよ、しかも弱った俺の体で?無理ゲーだろ」
「しかし、やらねば死ぬのみじゃ」
「く……分かってるけど……」
「グオオォォ!」
「!!」
またクローベアーが、腕をあげて爪スキルを発動させようとしている。やばい!
「ヤマト!ここでは不利じゃ。とりあえず森の中へ行くのじゃ」
「森の中こそ不利じゃねーか!?」
「いや……そうでもないぞ!」
「わ、わかった!」
俺は強化魔法を発動させて、後ろに広がる森林に向かって逃げた。森を利用してやる。木を盾にしながら戦うんだ!あわよくば逃げる!
ダッ!!
「グォアア!!」
森の中に侵入した俺追いかけ、クローベアーも森に入ってきた。
「うぉぉ!?追いかけてきた!」
「そりゃくるわい!!」
光る爪を連発するクローベアー。
ブン!ブン!!
「ひぃ!?」
俺は左右にジグザグに駆けた。
光の爪は俺を捉えることができずに、俺の近くの木々に当たった。木の皮はめくれ、まるで斧をブチ込んだようになっていた。
「なるほど……これなら、意外と避けやすい」
「じゃろ?」
俺はそれを横目で見ながら、走るのを止めない。クローベアーも本気で迫ってきているため、俺は全速力で駆けた。
「ウォォォ!!あっぶね!」
さらにクローベアーはさらに爪スキルを連発しながら。俺に後方から肉薄してきた。俺はヒョイヒョイとジグザグに木々を縫うように走り、爪が当たらないようにする。
「くそ……あの熊ころめ……はぁ……はぁ」
「ヤマト!逃げてばかりでは追いつかれるぞ!たまに魔法で応戦じゃ!」
「は、走ってるんですけど。はぁ、はぁ!」
「走りながら魔法くらい撃てるわい。やれ!」
「い、いつも突然なんだよな……くそぉ!」
いろいろ修行をする予定だったのだが、うまくいっていない。結局、実戦の中でやりくりするしかないのだ。
走りながら魔力球を作ったことはなかったが、なんとかうまく作った。
ある程度の大きさまで完成したところで、俺は足を止めて振り返る。
「くらえ!クマ野郎!」
目の前に魔力球を投げつけ、そして火の玉をイメージ。魔力球は即座に炎の塊と化した。
ファイアーボール『火球』!!
ゴォア!!
バスケットボール大のファイアーボールがクローベアーに襲いかかる。
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