第67話 クローベアー
「最初の一節だけでも聞かせてくれ」
「うむ……。「はるか昔に世界が創造されたとき、神も生物もいなかった。それらは大いなる存在。はじまりの精霊から全ては造られた……」と、こう始まる」
「うーん。思ったよりも凄い精霊っぽくね?根源的なこと言ってるぞ?」
「うむ。普通の精霊とは違うイメージじゃ」
「それだけ?」
「すまんが、ウロ覚えでの……。ワシは神話というものが大嫌いでの」
「お前お伽話とか嫌いそうだよな」
俺は笑った。たしか、リリスは生きていたころは科学者の一面を持っていた。お伽話とか神話とかって、相容れないものなんだろう……。
しかし、なぜに俺のステータスに「はじまりの精霊」が?謎過ぎるぞ……。
「半神半龍というのは、知っていたしな……」
「これは予想どおりじゃな、はじまりの精霊というステータスは今考えても判るまい……」
「そうだな……、今度オステリアに会ったら聞いてみるか……」
「答えるとは思わんがな」
「ちなみに、この称号に「二つの龍を宿すもの」ってあるけど?」
「これはあの、白い龍と黒い龍のことなのじゃろう……なぜ宿しているのかは不明じゃが」
俺の体っていろいろあり過ぎて、どこから突っ込めばいいんだろうか……。
「あと死霊耐性ってスキル……。これってリリスがオーブだったときに、無視するために身に着けたスキルだ。笑える……。おまえ死霊扱いだぞ」
「なんちゅー失礼なスキルじゃ……」
リリスは憮然としていたが、これはオーブのときの話だ。今の彼女は死霊ではない。俺がスキルを使っても彼女を無視することは出来ないし、すでに俺の魂と同化しているから……。でも彼女の今の状態は何と表現すればいいんだろう? 魂が同化しているから、俺そのもの?
「あとは魔法Lvか……火と水があるぞ!Lv2なんだな……」
「火と水の二つだけ使ったことがあるからか……」
「半神のくせにレベル低くない?」
「修行と経験で伸びていく。5歳で魔法が使えていること自体が凄まじいがのう」
「Lv2で?」
「オヌシ何か勘違いしておるが、Lv2ということ中位魔法が使えるということじゃ」
「え?全部でレベルの上限ってどれくらいあるの?」
「Lv1=低位魔法 Lv2=中位魔法 Lv3=高位魔法 Lv4=神位魔法じゃ」
「そ、そうなのか。思ったよりもざっくり分けられているんだな……。Lv2ということは、Lv3は発動できないということか?」
「今は中位魔法までしか使えんということじゃ」
「それに状態は飢餓か……それは言われないでも判る……」
ステータス鑑賞会を終えた。それはそれとして……まずは食料だ。このままでは衰弱死してしまう。俺は足を引きずるようにして、今日も森を歩く……
森の中を動物探索を続行……しかし、まったく出会わない
「はぁ……はぁ……力が入らないことも問題だけど、思考がまとまらなくなってくるな。これが飢餓状態か……」
「ぬぅ。困ったのぅ。こうなれば、中位魔法をぶっぱなして森の動物を全滅させるか……」
物騒なことを呟くリリス、しかし俺も死にそうになっているため、その案を全力で否定できない……。死ぬよりは……と考えてしまう。
夜になろうかという頃、俺は動物を捕まえられずに洞窟へ戻ろうと決意する。
しかし、微かに動物の唸り音を耳にする。
「グルルル……」
「「しょ!食料!?(動物?)」
「食料ではなく、動物の声が聞こえたのぅ」
「な、なんでもいい。ゆっくり接近するぞ」
唸り声が聞こえた方向へ進む俺。いくつかの薮を越えて、俺は動物を探す。
「ど、どこだ?たしかこのあたりに……」
「グル……」
「!?」
俺が振り返ると、そこにいたのは一匹魔獣だったのだ。
そう、動物ではなく魔獣……
体は大きくて大人3人分くらいあるだろうか、一見すると熊だ。しかし良くみると眼が赤く光っており、熊にしては異常に大きい鉤爪を持っていた。こんな動物がいるはずない……これは魔獣のほうの熊だと俺はすぐに判断した。
(や、やばい……いつの間に後方に……)
とにかくデカい。真っ黒な毛皮に、ギラギラした赤い目が真っ直ぐ俺を見ている。奴は四つん這いの状態だが、俺の視線よりも遥か高い位置に首がある。そして、いまにも襲いかかろうとしている。
「た、戦うしか……」
俺が臨戦態勢を取ろうとしたとき、リリスが叫んだ。
「いかん、魔獣クローベアーじゃ!!逃げろ!」
「!……わ、わかった!」
俺は全力で逃げようとするが、下半身に力が入らない……。完全にビビってしまったようだ。
「あわわあ……」
「何しとる!!早く逃げんか!」
そんな俺をクローベアーが放っておくはずがない。すぐに襲いかかってきた!
口を開き、噛みつこうと俺の首に迫る!
「う、うわあああ!」
俺はとっさに下半身に魔力をこめて、身体強化魔法を発動。横っ飛びに避ける。
ガチ!!という音がして、俺がいた空間に噛みつくクローベアー。間一髪だった。
「今のはヤバかった……魔人ほどじゃないが、とんでもないスピードだ」
「クローベアーは、Bランク冒険者推奨の魔獣じゃ」
「動物園とかで見るクマと、ぜんぜん違う!まったく可愛くないぞ!」
「当たり前じゃ!」
「リリス、どーする?俺あまり力が入らん……」
「うむ……ファイアーボールで仕留めるしかないの、オヌシのは威力だけはあるからの」
「あの速度のクローベアーに当てる?当てられる自信がないんだけど」
「ん!?クローベアーがスキルを発動しようとしているぞ!ヤマト!」
「スキル!?」
クローベアーを見ると、何やら両手が光っている……
「な、なんだ!?あれは?」




