第65話 孤独な眠り
アルテスが去っていったのを見届けると、俺達は洞窟に戻った。
「すげぇ子だったな」
「凄いというレベルを超越しとる」
「ハイエルフって皆あんななの?」
「そんなわけあるかい!あれは異常じゃ」
穴ぐらに戻って俺は魔法袋から買っておいた干し肉と、水を出そうとして。
「あ!そういえば!」
「どうしたんじゃ?」
「アルテスに魔法袋を渡したら、あれ……悪魔が出てきて無くなっちゃったんだ」
「そうじゃったのぅ」
「ないと思うと余計に腹が……」
「寝るしかないのぅ」
水筒だけは、出しておいたから俺は水を飲むことした。
ゴク……ゴク……
水筒から水を飲む。
はい、夕飯終了。
「ぜ、全然足りない」
「水だけじゃからな……」
「明日も動物を狩れないことになったら餓死する」
「すぐに餓死することもないと思うが……」
「……寝袋とかはマジックバッグから出しておいて良かったよ」
秋とはいえ夜になると気温は低い。しかし幸いにも寝袋があるのでなんとか大丈夫。
「さて、明日に備えて眠るのじゃヤマト」
「洞窟で寝るのって怖いよな……、真っ暗だしさ」
「明るいと、魔獣や魔物に発見されるじゃろう」
「!……そういや入口を塞いでなかった!」
「あれだけ派手に暴れたんじゃ、2~3日は動物はおろか。魔物も近寄らんわ」
「そうか……そういやさ」
俺は少し疑問に思っていることをぶつけてみた。
「あのさ……魔人って、魔獣や魔物に分類されるの?」
「あれは別ものじゃ。「魔族」と呼ばれている魔界の住人じゃ」
「じゃあ、悪魔と同じ世界にいるの?この魔獣の森にはいないよな?」
「そうじゃ。魔獣の森にいるかも知れんがの……」
「いるの!?」
俺は飛び起きた。
「いても、オヌシを発見する可能性は低い。これだけの広さと魔素が満ちているのでな」
「そうか……」
俺は少し安心したような声を上げた。しかし心配だ。
「ワシが入口で見張ってやる。魔人も来ないから安心するのじゃ。ゆっくり休め」
「わかった……」
リリスが洞窟の入口のほうへ去っていくのを見送り、俺は洞窟内にゴロリと横になると、目を瞑る……。
固い地面に横になっている俺……、ただ真っ暗……(これキツイ)。闇の中…… 一人で眠ると不安になってくる。数時間経過しても俺は眠れなかった。お腹が空きすぎるのと、普段と違う環境でどうしても眠りモードに入らない。
地面で寝るのって背中や頭が激痛いのね……。寝袋があってもそれは緩和されなかった。普段俺は母親に添い寝されて、暖かく気持ちいいベッドの中で眠る生活だったのだ、眠れるわけがない。
……数日で環境違い過ぎだろ?こんなんで眠れたら、俺は将来、海賊王になれてるよ。
グルグルと思考がめぐる……。リカオンとマリーシアは大丈夫だったろうか?俺が突然いなくなっているから驚いているだろう。俺が無事?死んだと思ってくれればいいんだけどな……。
(でも……、俺が死んだあと。妹か弟が生まれて……。俺のいない新しい生活が始まるんだな)
もともと、俺はマリーシア達の子供ではない、血の繋がりがないので本来の姿に戻ったと言える。そう思うと俺は無性に悲しくなってきた。
「グス……、あれ?涙がこぼれてきた……。くそ!地面で寝るのって無理あるよ……くそ」
とにかく、孤独で朝が恋しかった。光がないから、こんなネガティブになってしまうんだ。
「5年……5年辛抱すれば両親に会える。5年の辛抱だ……」
俺の寝ているところまで月明かりは届かない。奥は真っ暗なんだよ……
(これ、幼児だったら、暗闇恐怖症になるぞ……あ、おれ幼児だったわ)
(そうだ!!入り口で寝ようかな……しかし、それはそれで魔物が怖い)
なんか、外で「ワォォーン」って遠吠えとか聞こえるし。入口にはいかないほうがいいな……。
俺はテレパシーでリリスを呼んでみる。
「おい、おい!リリス」
「なんじゃ?見張りに戻らねばならぬが……」
入口から戻ってきたリリス、若干面倒くさそうだ。
「話し相手になってくれよ。眠れないんだ」
俺の目が赤くなっていることに気がついたリリスは、俺のことを優しい目で見つめた。
「……まぁ良いが。早く寝ることが肝要じゃぞ」
「眠れないから頼んでるんだよ」
「わかったわい。仕方のない奴じゃ……」
リリスを俺はみると、彼女は暗闇の中でもはっきりと見える。俺だけ限定なんだろうけど……、光とか関係なく俺の視界には入ってくる仕組みなのだ。不思議な奴である……。夜の中でも彼女の美しさが際立つ。女神と呼んでも間違いではないくらいだ。
「ところで何を話すのじゃ?」
「話と言っても改まって話すことはないんだけどな……」
「まぁ、眠れないのは分かるぞ。オヌシの今までの生活と違い過ぎるからの」
「ここ寒いし暗いんだわ」
「眠れるまでワシが付き合ってやる……安心せよ」
なんだか優しいリリス、その優しさが身にしみる。
「ありがとう。リリス。お前がいてくれてよかったよ」
いつになく弱気な俺に、リリスは少し笑った。
「まぁ離れようにも離れらんがな。さぁさ、魔物や魔獣が来たら起こしてやるから、安心して眠るのじゃ」
「悪いな……」
「何度もいうが離れようにも離れられない関係じゃ。ワシとオヌシは一心同体じゃ。遠慮することはない」
リリスの言葉に、俺はひどく安心した。落ち着いたせいか、俺は目を瞑ると、その日の疲れが一気に襲いかかってきた。そして、落ちるように眠った。
「スー……スー……」
寝息を立てるヤマトに、リリスは微笑んだ。寝顔を見つめるリリスは、まるで聖母のようでもあった。
「前世も、今生も辛い目ばかりじゃの……カリアースよ……」
ヤマトの寝顔を見つめながらそう呟いた。
その二人の姿は闇の帳の中、幻想的に映った。
ご評価、ご感想お待ちしております。




