第63話 悪魔バフォラット
「そのまま……それは魔界への入口」
「アルテスとやら、これが次元を超えて魔界の入り口になっているというのか?」
「そう……それはマジックバッグのように見えるけど、奥には魔界の入り口が仕込まれている。それをもっているのは危険」
「ま、魔界?」
この世界は、3つの世界があると言われている。
【地上界】【神界】【魔界】だ。アルテスは、この汚い袋が、魔界の入口になっていると言うのだ。
「ま、まさかぁ……」
俺は思わず笑ってしまう。そんな突拍子もないことを誰が信じられようか。
「ほんとう……今からその次元を閉じるけど。呪物マスターが出てくるから、少し下がってて」
「次元を閉じる?」
リリスは前のめりになり、アルテスの言葉の真意を探った。
「面倒くさい……いいから、その袋を貸してみて”旦那様”」
「べ、別にいいけど……」
俺はマジックバッグをアルテスに手渡す。
「やけにあっさり渡したのぅ……ヤマト?」
「もとはと言えば、あの子の金で買ったもんだからな……」
アルテスは、小袋を手に取ると。満足気に呟いた。
「ありがとう……ふん!」
ピカァ!!!
アルテスの袋を持つ手が急速に光り輝く。
「な、なんだぁ!?」
俺はその現象に驚く。
輝きはブルーで、周囲を照らした。
「こ、この光は……」
リリスは、この光の感じをヤマトの暴走状態の光と酷似していることに気がついた。
シュバー……
なんと、小袋が溶けていく。まるで硫酸にでも溶かされているかのように、小袋が溶けていった。
「と、溶けてる……」
俺が呆気に取られていると、アルテスは叫んだ。
「離れて!!悪魔……呪物マスターが1匹出てくる!」
「え!?」
「あ、悪魔じゃと!?」
俺とリリスが言われたとおり跳び退くと、小袋は爆発した。
ボウン!!
「うわ!」
「ぬぅ!?」
爆発した勢いはすさまじく、アルテスの手もろとも爆散したのでは?と俺は危惧した。
「アルテス!!手……大丈夫か!?」
もくもくという煙の中、俺は目の前の光景に驚く。アルテスは無事だった。煙の中、普通に立っていた。
「良かった……無事……うん!?」
俺はアルテスが掴んでいる物……いや。生物が目に入る驚く。なんと、黒山羊の頭と黒い翼をもつ奇妙な生物が、現れたのだ。しかも、山羊の頭に生えている角をアルテスがしっかりと握っていた。
体長は3mを超え、アルテスの身長を大きく越えているが、アルテスに角を握られ首を歪に下げていた。
リリスはその生物を見て驚き叫ぶ。
「バ、バフォラット!!」
リリスにバフォラットと呼ばれた生物は、大きい声で雄たけびを上げた。
「ブォォォォーン!!」
バフォラットと呼ばれた生物は、大きく叫ぶと。角を掴んでいるアルテスを睨んだ。
「ぐおぉぉぉ、小娘。誰の角を掴んでいるのか分かっているのか」
まるで地獄の底からのような低音を出すバフォラットに、俺は背筋が凍った。
「しゃ、喋ったぞ。なんて、おぞましい声だ」
「ヤマト……あれは悪魔じゃ……」
「あ、悪魔!?」
悪魔とは、神と対を為す存在。
神とは絶対的存在だが。実は、悪魔は神と表裏一体といわれている。当然、戦闘能力はすさまじく。神と同等レベルと言われている。人や地上界のものでは絶対に敵わない存在……。それが悪魔だった。
語りかけられたアルテスは、無表情に悪魔を見下げていた。
リリスが警戒の声を上げる。
「に、逃げろ!ヤマト!それにハイエルフの娘!悪魔に敵うはずがない」
「う……うん。でもアルテスが……アルテス!逃げろ!」
俺はアルテスを放置していく訳にもいかず……アルテスに声をかける。しかし、アルテスは無表情に俺に顔をむけるだけだ。
「大丈夫。ちょっと離れてて……」
「な、なにを言って…」
「ぐぉぉぉ!!いいかげんに我の角から手を放せ!」
バフォラットは首に血管を浮かばせながら、右方向へ首に力を入れた。いや……入れようとした。
グン!
しかし、それと同時にアルテスが氷のような声を出して力を入れたように見えた。
「大人しくしろ……黒山羊」
アルテスはそう呟くと、掴んだ角をそのまま下へ押し下げた。
グン!!
「うぉ!?」
ダン!!
華奢に見えるアルテスの細腕に敵わず、バフォラットは顔を地面に押し付けられる。とんでもない腕力だ。あの細い腕から、どうしてあんな力が出てきているんだろうか?
「ぬぅ!?我を組伏せるか!」
バフォラットは驚いている。目を大きく開きながら地面に顔をこすっている。悪魔からすると、屈辱的なポーズだろう。唸っている。
「グルルル……小娘。貴様何者だ……」
リリスは青ざめている。信じられない光景のようだ。
「な……なんと……。悪魔をねじ伏せているじゃと?」
俺も信じられない。
「アルテス……君は一体?」
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