第62話 ハイエルフの警告
「ハ、ハイエルフの……」
「何!?昔、ヤマトが言っていたハイエルフか!?」
俺がマジマジと見つめると、ハイエルフの子は無表情に手を上げて挨拶をした。
「久し振り」
その返事の仕方が、どこかシュールで俺は思わず笑ってしまった。
「ひ、久し振りって……。こんなところで何しているの!?」
「ちょっと、気になることがあったから会いにきた」
ちょっと会いに来たって……。ここは魔獣の森だぞ。この子はいったい?俺は頭痛がする思いで、こめかみをおさえた。
(落ち着け……落ち着け……)
なんとか平静を取り戻すと、おれは質問を続けた。
「どうやってここまで?」
「え?普通に空を飛んで……」
「それ普通じゃないから!」
「そう?」
「そう!普通の人は空飛べないから!」
俺は、ますます頭痛がひどくなる気がして。眉間をおさえながら自分の平静さを取り戻そうとしていた。
リリスは少女を凝視している。深刻な顔をしている……。
(リリス?どうした?)
(この娘……ワシに気がついておるぞ)
(なに!?)
おれが驚くと、少女はリリスのほうへ振り向き。そして、あろうことかリリスに挨拶をした。
「あら?はじめまして。どなた?」
「!?……リ、リリスのことが見えるの?君!?」
俺は驚いた。リリスが見えるのは俺だけなのに、このハイエルフは視認しているようだ。
「ええ、ハイエルフなら当たり前」
「そ、そうなの?!ハイエルフってすげー!」
リリスは、むちゃくちゃ驚いた顔をしている。
「ハイエルフならあり得るかの……百歩譲ってそうじゃとしてもじゃ……オヌシは本当にハイエルフか?」
「そうよ。私はハイエルフ」
ハイエルフの表情は、無表情なので感情を何とも読みにくい。
「ハイエルフにしては異様な感じがするのぅ……そのオーラは、どちらかと言えば……」
すると、ハイエルフの子は笑った。その笑顔は、どこか作り物のような無機質なものを感じた。
「ハイエルフは特殊な存在。オーラが普通と違うのは当たり前」
「うむぅ……」
リリスは納得がいっていないようだが、それ以上追及しなかった。ハイエルフの子は首を傾げている。
まるで「何がおかしいの?」とでも言いたげだ。
「リリス、まぁいいじゃない。彼女は昔助けてくれた存在だぜ?味方だよ」
すると、ハイエルフはこちらを向いて俺の顔見つめた。
「そう。覚えていてくれてありがとう。月の糸を着けてくれてる」
そういうと、俺の手首に視線を落とした。
「うん。ちゃんと着けてるよ。すげー、助かってるよ。これ」
「良かった。あなたは私の未来の旦那様だから、当たり前」
「だ、旦那……!?」
そうか、俺この子と結婚する約束してたっけ? やばいな、まだ覚えているんだ……。この子。
すると、リリスが震えながら口を挟んだ。
「ハ、ハイエルフと結婚を約束したんか!?ヤマト」
「え?まぁ……そう……かな」
「な、なんということを……。ハイエルフの約束は絶対じゃぞ。うつけ者……」
青ざめた顔のリリス。
「え……まじで?」
「そうじゃ。もし約束を破ったりしたら、その娘は自決するぞ」
「……え?」
俺も青ざめた顔で、ハイエルフを見つめる。
「あなたが約束を守れば問題ない。何も問題ない」
シレっと応える少女。
「……そ、そそそそそうだね」
ドモる俺。やばい……まずい……これはヤバイ……。もしかして、とんでもない約束を俺はしてしまった?
リリスは頭を抱えていた。
動揺する俺とリリスのことを見つめながら、空気の読まない少女は挨拶をはじめた。
「私の名前は、アルテス。覚えておいて”旦那様”」
「だ、旦那様はやめてよ……」
俺は何か変な顔をしていたと思う。
(俺が婚約……もう一生決まってしまったとか?まじか!?)
そんな動揺を悟られまいと俺は会話を冷静を装って続けることにした。
「そういえば名前を知らなかったもんね。宜しくねアルテス。ちなみに俺の名前はヤマトだよ」
「うん。よろしく”旦那様”」
あえてヤマトと呼ばないのか。俺は冷や汗を流した。
「そ、それでアルテス?気になることがあって、俺に会いに来たって?」
「……そう。その呪物のこと」
そういうと、アルテスは俺の腰にブラさがっている魔法袋を指さした。
「え?呪物?何それ?……これはマジックバッグだよ?」
俺は腰の小汚いマジックバッグを手にとった。
すると、アルテスは首を横にふる。
「違う……それは魔界空間を封じ込めた呪物」
そこでリリスが口を挟む。
「じゅ、呪物……!?魔界とはどういうことじゃ!小娘!」




