第58話 魔力欠乏
「うおらら!!!」
野球の遠投のように、俺はタタ……と軽く勢いをつけると、右腕に魔力を込めて思いきり投げた。
ブオン!!
水の球が、山火事のへ向かっていく。そして、それは火事の中心に落ちた。
ジュオー!!!ドシュー!!
大量の水が蒸発すると同時に、炎を消していく。すさまじい光景だ。水蒸気で周辺が何も見えなくなっていく。
ジュー!!ジュー!!ジュー!!
しかし、水のほうが勢いが弱いのか炎の勢いが収まらない……
「ふむ、水の量が足りないようじゃ。ヤマト、もう2発ほどぶつけるんじゃ」
「に、2発……」
リリスの注文?により、俺は水の球をさらに2発作りだしてブツけた。
「うりゃ!!うりゃあ!!」
凄まじい水蒸気が周辺を霧状態にしてしまったが、徐々に火事は消えていった。
「か、火事が消えた……」
「でかしたぞヤマト。火も消したし、奥へ進もう」
「はぁ……はぁ……」
「どうした?ヤマト?」
「な、なんか体が怠いんだ。重いというか…………」
リリスが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「なんと……魔力欠乏を起こしておる」
「魔力欠乏?足りなくなってるってことか?」
「うむ。そのまま魔法を使い続けると死にはしないが気絶してしまう」
「そ、そりゃマズイぞ。こんな魔物が多い森で気絶なんかしたら……」
「しかし、おかしいのぅ……たしかに通常「中位魔法」を連発すれば、その症状は普通なのじゃが。ヤマトの場合、それくらいで魔力欠乏などあり得ん……」
リリスは、首を傾げた。リリスはヤマトと幼い頃からいるため、彼の魔力はそれこそ上位魔法10連発に耐えられるほどだと読んでいた。そのヤマトが魔力欠乏を起こしている原因が判らない。
しかし、二人は気がついていなかった……。ヤマトの腰につけている「魔法袋」が怪しく光っていることに……
「はぁ……はぁ……むっちゃ苦しい。何これ。まじ無理」
「いま襲われると魔物のエサじゃな。よし、休憩するぞ。少し移動するんじゃ」
城壁の上から、兵隊たちが騒いでいるから、ここから離れることには賛成だ。俺とリリスは、急いで森の奥へと急ごうとしたその時だった。
ジャリ……
後ろのほうから音がしたので俺は振り返る。
「!?」
そこに立っていたのは、若い兵隊だった。おそらく防衛の砦の兵隊だろう。青ざめた顔で、俺に剣をむけて震えている。
(ま、まずい……今の魔法を見られた?!)
「こ、子供!?いや……さっきの魔法は……」
兵士に発見された。気まずい空気が流れる。
(やべ……。見られたっぽい……、リリスどうしよう……)
(まぁ見られても問題はないじゃろう、たぶん水魔法で火を消しただけじゃから……)
(いや、俺みたいな子供がドデカい魔法を使えること自体が問題なんだよ)
(剣を向けているのぅ。まずい……オヌシは今魔力がないんじゃ)
(今攻撃されたら、俺はなすすべもないぞ……とりあえず話しかけてみるか?)
(じゃな……オヌシは頭が回らないじゃろう。ワシの言うとおりに言え)
(わかった……何て言えばいい?)
(「僕は敵じゃないです。剣を……」)
俺はリリスの言うとおりに口を開いた。
「あの……僕は敵じゃないです。剣を向けないでください」
「き、君は人なのか?」
「その小さい目は節穴かのぅ?人以外に見えるのであれば、医者をお勧めするのじゃ……っておい!!」
やべ!リリスにツッコミを入れてしまったよ。
「き、君は子供の割に口が悪いね!?」
(おい!リリス!お前口が悪いから警戒されたじゃねーかよ!)
(わかった。少し気をつけよう。こう言え「失礼した……」)
(まったく頼むぜ?)
俺は引き続きリリスの口をまねた。
「失礼した。僕は人ですじゃ。はい、間違いないですじゃ」
「な、なんか口調が変だけど…」
(あぁ!もう、ややこしいから自分で話すよ!)
「すみません。もう大丈夫です。はい」
「……たしかに人のように見えるけど、さっきの魔法は……」
「ああ、ちょっと早熟で魔法が使えるんです」
「早熟って……魔法は10歳からしか……」
「いろいろありまして……」
俺の喋りに敵意がないと見たのか、兵隊は少し気を緩めた顔をした。かなり若い兵隊だ。階級も低そうだ。茶髪でツリ目がちの、キツネ顔である。しかし、善良そうだ……。
「……火を消してくれたのか?」
「はい、なんか大変そうだったので(俺が原因なんだけど……)」
「こ、ここで何をしているんだ?お、俺のことを殺すつもりか?」
「殺さないですよ!何言ってんですか!?」
むしろ、俺が殺されそうである……
「て、敵じゃない?」
「だから、さっきからそう言ってます……そもそも火を消した恩人に剣をむけるってどうなんですか?」
「た、たしかにそうだ……俺が悪かった」
チャキ……
兵隊は剣を下げた。話は通じるようだ。
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