第54話 防衛の砦(後編)
「今じゃ、ほれ?作るのじゃ」
「了解!10秒まて!ぐぬぬぬぬ」
俺は気合を込めると、どこかの戦闘民族のように天に両手を上げて魔力を集めはじめた。
ズオオオォォ……
10秒後……
魔力球は二階建ての家くらいの大きさになった。
リリスは嬉しそうに魔力の塊を見て褒めてくれた。
「まずまずの大きさじゃな、魔力量は一級じゃ、カリアースも幼いときから魔力量は半端なかったが……オヌシはそれ以上じゃ」
「それで、これをどーするのよ?」
「着火して向こうになげる」
「できるかー!! 」
「なんでじゃ?」
「そんな高等技術習ってもいないし!」
「できるわい、ワシ見たもん」
「もんって……何をよ」
「おぬし、魔人との戦いでファイアーボール(火球)を使っておったろう?まず着火は問題ない」
「たしかに……」
「心配するな。やり方は、今から伝える!やるぞい!」
・
・
・
・
//////////新米兵ハーンド視点///////////
俺はこの砦に着任して1ケ月目の新米兵。19歳 ハーンドだ。
「さぁ、今日も暇な任務がはじまるぞ」
はじめ、中央から砦の防衛任務と聞いたときには、「まじかよ……」と思ったが、着任してからは天国だった。
とにかく暇なのだ……。毎日毎日砦の櫓に上ったり、庶務をこなしたり。楽勝である。
戦争で前線に駆り出されるよりは全然いい。同じ給料なのに、こっちのほうが命の危険性がないのだ。天国と言ってもあながち嘘でない。
今日の任務は夜半から明け方まで、櫓に上って魔獣の森の監視だ。監視といっても、魔獣の森から魔物が侵攻してきたことは、ここ数十年ない……。ただ森を見つめるという暇な任務だ。
俺は櫓の階段を登り、そこにいた警備兵に声をかける。
「おい、交代だぞ」
「ふぁあ……もう交代か?」
俺は警備兵の顔をみると、口元に涎の跡がついていることを確認した。
(こいつ……寝てやがったな……まぁいいけど)
俺がそういうと、そいつは嬉しそうに言った。
俺は櫓の監視台に入り、警備兵と交代をする。一応引き継ぎはするため、確認をする。
「何か異常はあったか?」
「あるわけないだろ、毎日緑を眺めてて眠くなるわ」
「だよな……ほれ、降りろ。次の交代は夜明け前だ」
「暇だからって寝るなよ?じゃあな、がんばれよ」
お前もな……と思ったが、口には出さずに首をすくめてジェスチャーをする。すると、先の警備兵は笑いながら降りていった。
(ふぅ……さて、ここから暇な任務が始まる……)
俺は魔獣の森の先を見つめてみた。しかし、漆黒の森は何も見えない。こんなんで監視の意味があるのだろうか……
そう思っていたときだった。そのときだった。
ゴォォ……
俺の頭上を、大きな火の球が通り過ぎていくのが見えた。
「な。太陽!?後ろから?」
太陽にしては小さい……しかし、大きな火の球が確かに俺の頭上を通ったのだ……そして……
ドッゴォォン!!!
火の球は、森へ着地すると大爆発を起こした。
「う、うわぁぁ!!?ビックリしたぁ!?なんだ!?なんだ!?」
俺は驚きのあまり監視台の手すりから落ちてしまいそうになった。
「今のは王国側から!?そ、そんな……なんで!?」
俺が混乱している間にも、魔獣の森の奥から火柱が立っていた。
「も、森が……」
火柱は大きく、周辺の木々を燃やしている。
ゴウゴウと火柱が立ったあたりから、パチパチと火が燃え移ろうとしているのが見て取れた。このままでは山火事になってしまう……
俺は呆気に取られていたが、すぐに正気に戻る。
「これ、やばくね?」
そして、周囲で慌てふためく砦の兵が叫んだ。
「け、警報を……て、敵襲!!いや、か、火事だぁぁ!!」
ご感想いただけると嬉しいです




