第53話 防衛の砦(前編)
村を抜けて、俺は平原を只管歩いた。結構歩いている……2時間ほどだろうか。
ゆるやかな登り坂があったので、それを登りきると視界がひらける。目の前に見えたのは、長大な城壁と城だ。
「見えた!あれが防衛の砦か!すげー……本当に城壁が地平線まで続いている……」
俺が叫ぶとリリスも驚いていた。
「ほう……すごいものじゃのぉ。人族に、ここまでの技術があるとは……」
魔獣の森の前に「防衛の砦」が立ち塞がる。思っていた以上だ。これが人が造ったものとは到底思えない。
高い城壁が横に展開され、それがどこまでも伸びているのだ。一体どれほどの時間と金、そして労力を費やしたのだろう。考えるだけでクラクラする。
中央と思われる箇所には、砦本体の大きな建物がデン!デン!と並んで鎮座している。これがまた大きい……。ちなみに城壁の高さは10m以上はある、それが地平線の先まで続いているのだ。すさまじいの一言である。
「すごいな……あ、城壁に等間隔に櫓があるな……あれで監視しているんだな」
城壁の至るところに高見櫓が設置されている、あそこから魔獣の森を監視しているのだろう。それが地平線まで続いているのだとすると、動員人数も半端ではない。さすが、南の防衛拠点である。規模が凄い……
「向こうからこっちは見えているのかな……」
俺はこのまま近づいていくのは危険と判断した。
「リリス、このまま進むと高見櫓から見つかってしまうぞ」
「大丈夫じゃと思うぞ。こちら側は警戒していないはずじゃ」
確かに防衛の砦は、魔獣の森を監視するように建設されたものだ。こちら側はいわゆる「味方側」である。警戒する必要がない。
「ほ、本当かよ。そんなもんかね?」
「まず大丈夫じゃ。そんなもんじゃよ。万が一見つかっても、攻撃されることはあるまい。オヌシは子供じゃしな」
「そんな単純かね…………」
うーん……いまいち信用できない……、リリスの言うことは大概当たっているが……。
「最悪、攻撃してきたら迎撃して機能停止に追い込めばよい」
「あほか!向こうは軍隊だぞ!」
「何を言うか、魔人一匹のほうが危険じゃ。オヌシは魔人を倒しているのじゃぞ?」
「そ、そうなの?」
「そうじゃ、自覚なかったのか」
「うん…それほど凄いこととは…」
「誇って良いぞ」
「でも。ね、念のため夜になるのを待ってみるわ」
「……好きにせい」
俺は夜になるのを待ち、ゆっくり城壁に近づいていった。強化魔法で高速で接近するという手もあるが、逆に高速で接近するものには警戒するだろう。このスピードが一番安全であるとのリリスのアドバイスだ。
俺の心配を他所に、あっけなく防衛の砦の城門まで辿りついた。城門は固く閉ざされている。
「問題なくついちゃったよ……」
「だから言ったじゃろう?」
リリスが勝ち誇っている。なんだか腹が立つ……
(これが、防衛の砦か……ここを突破しないと向こうへは行けないんだよな……)
軽く考えていたのだが、目の前の砦の規模の大きさに「甘かった」と痛感した。
万里の長城のように、どこまでも続く 壁……壁……。
ラスタリス王国としても、ここを突破されると魔物が王国内に大量に入ってきてしまうため、砦というより城に近い建造物だ。中の兵の数も多そうである。
「城壁まできたものの……これは無理だな。入れねーよ。それこそ通過の許可をもらって通してもらうしかないよ……」
「それこそ、無理じゃろうよ」
「どうしよう?」
「ではこうしようぞ」
「お?何かいい手があるの?」
「一つある……。火魔法で爆破して混乱に乗じて侵入するのじゃ」
「お前アホだろ?そんなことしたら、魔物が王国に入ってきちゃうだろ」
俺はツッコミを入れる。
「違う違う、砦の向こう側を爆破するのじゃ」
「え?向こう側って、魔獣の森を?」
「そうじゃ、すると大騒ぎで警備が手薄になる」
「向こう側に行けないのにどうやって向こうを爆破するんだよ!」
「簡単じゃよ、オヌシならな」
「なんの根拠があるんだよ?」
「普通の者には不可能じゃが、オヌシに魔力制御だけを数年やらせてたじゃろう?」
「ああ、来る日も来る日も魔力こねくり回してたよ、実際俺の魔力技術ってどのあたり?」
「オヌシの魔力制御レベルは、まだまだじゃが、20%は完成しとる」
「まだ、そのレベルか」
「5歳で20%というのは誇って良いぞ」
「そうなのか?」
「魔力制御が極まれば、もっと解決方法があるんじゃが……」
「例えば?」
「空を飛んだりの」
「そ、空飛べるの?魔力だけで?」
「うむ。風魔法で飛んだりすることも出来るがの。魔力操作は奥が深い」
「たしかに俺は、今身体強化くらいしか、ちゃんとした使いかた知らないもんな……」
「まぁ、焦るでない。これからじゃ」
「慰めありがとう……で? 砦の向こう側を爆破するには?」
「まず、魔力球を作るのじゃ。かなり大きく作れ」
「え?今?」




