第51話 道具屋にて
砦の近くに村を発見した。俺は遠目で、物陰に隠れて様子を伺う。門の状況を確認したところ、衛兵が立っていた。村にしては重装備である。
「どうしよう、リリス。意外とセキュリティが厳しそうだ」
「砦が近いからの、防衛ラインとしても使用する村なんじゃろう」
「これじゃ、諦めるしかないじゃん」
「は?なぜじゃ?」
「だって、俺 身分証明書をもっていないもの」
そうなのだ、地方の村であれば大概なにも言わずに入れるが、大きい村やセキュリティが厳しい村であれば身分証明がないと入れない。当然、俺は身分証明など何も持っていない。
「そんなもの、周囲の城壁から侵入すれば良かろう」
「ええ?あの村の城壁、結構高かったぞ?3mはありそうだぜ?」
「オヌシの身体強化魔法なら問題ない、3mくらい跳躍すればピョン!じゃ」
「ピョン!って…………」
しかし、リリスの言う通りにするしか手がないが迷った。
「あのさ……やっぱり目立ちすぎるぞ。飛び越えたところを誰かに見つかったら、大騒ぎになりそうだ」
「ならばどうする?」
「うーん……」
俺は少し迷ったが、やはりリリスの言うとおり跳躍して入ることにした。それしか手がない……
「何を迷っているんじゃ?」
リリスがイライラした様子で指で自分の肘をトントンしながら尋ねる。
「跳躍したときに目立つのと、村の内部に着地したときに滅茶苦茶目立つだろう?」
「そんなのワシが見てくればよかろう、ワシは壁を通り抜けられるぞ」
「そうか……お前幽霊みたいなもんだもんな」
「幽霊っていうでない!失敬な!」
「……ごめん」
わりとリリスは本気で怒っていた、それにも笑えるが……。しかし、リリスの言うとおりにやれば大丈夫そうだ。先に中に入ってもらって、人目がない状態で跳躍すればいいんだから。
「じゃあ、リリス見てきて。やっぱり跳ぶわ」
「なんじゃい、やっぱり跳ぶのかい」
「うるせーよ」
そんな掛け合いをしながら俺は、村を右に迂回して大きく回り込んだ。衛兵がいない東側から接近することにした。
ササササ……
まるでコソドロのように城壁に接近する俺。城壁を見上げると、高さは3mくらいだった。リリスが3mと言っていたが本当だ。
「ではワシが状況を見てくるのじゃ。しばし待て」
そういうとリリスは壁の中に溶け込むように入っていった。
(改めてみると不思議な光景だよな)
(…………)
しばらく待つこと数分……リリスが戻ってきた。
「どうだ?」
「うむ、この先は村の裏街道になっているので問題ないのじゃ。今は誰も居らぬぞ」
「こ、これ結構高いけど。本当に跳躍して越えられるのかな」
「問題なかろう」
「よし……」
俺は足に魔力を通わせる。魔力操作はお手の物だ。
ズア……
足の付け根のあたりから足先まで魔力を循環させる。俺は軽く屈伸をすると、勢いをつけて跳んだ。
ドン!!
「うわ!!」
一気に5mほど跳躍した俺は、城壁を軽く越え過ぎてしまったことに慌てた。
「うわわ……!」
そのまま城壁を越えて俺は村の内部に着地した。
トン!!
膝のクッションを使って俺は地面での衝撃をなるべくやわらげた。
キョロキョロ……
俺は周囲を見渡す。するとリリスの言うとおりさびれた裏通りみたいな場所俺は立っていた。誰にも見られていないようだ……。侵入に成功した。
「見事なもんじゃ」
「よし、このまま村の中央へ移動しよう」
「そうじゃの。表通りにはそれなりに商店があったり宿屋もあったぞ。外部の人間も出入りしているようじゃし、見咎められることはないじゃろう」
「わかった」
俺は表の通りにでると、商店が10店舗ほど並んでいた。
「へぇ……結構大きい村なんだな」
「おそらく、砦を守るのに必要な衛兵達を住まわせているのじゃろう。相当な人数じゃからな」
「その人の流れによって商売も成り立つってか……」
「お?オヌシ、そういう知識はあるんじゃな」
「前世で習ったからな、まぁ一般常識程度だけど」
俺はリリスと、テレパシ―での会話に切り替える、街中でブツブツ喋っていると頭のおかしい人だと思われてしまう。
(ここまで商店が充実していると助かるな……いろいろ買っていこう)
(じゃな)
俺は必要なものを頭の中で整理する。龍人の里までいくのに、魔獣の森の中に入らなくてはならない。武器はあるので良いとして、食料が欲しいかな。特に水を……
(オヌシは全属性じゃろう?水なら出せるぞ)
(それは助かるな、じゃあ最悪水はいいか)
(多少魔力を消費することになるがの……)
(まあ、俺は魔力量だけは多いから)
(そうじゃの)
俺は食料を買いためると、道具屋に入った。あらかた必要なものはもっているんだが、何かないかな?
明けましておめでとうございます! 今年も頑張っていきます!ご評価いただけると嬉しいです。




