第50話 リーラン
///////////リーラン視点///////////////
ここは、とある「結界内」。その結界は、クリスタルで出来たドームで巨大であった。その結界内は水のようなもので満たされていた。ブルーサファイアのようにきれいな水は明らかに普通のものではない。暖かい光の中、一人の少女が水面に浮かんでいる。少女は目を閉じたまま、木の葉のように揺れていた。輝くような銀色のロングヘアーが水面に広がり、神々しい。その美しい顔は妖精のようであった。
彼女の名前は、リーラン・フォン・ドラガラム。
かつて龍人の国で、国王リリス・フォン・ドラガラムの養子として育てられた龍人族。
結界はどこなのか、この世なのか。まるで現世と天上界との間のような、不思議な空間であった。
リーランはうっすらと、雲のような意識のなか考えていた。
(あたたかい……まるで母の羊水につかる、赤子のような……そんな気持ちになる……)
リーランは巨大なクリスタルドームの中にいた。そのドームの中は光の水で満たされている。
リーランは、生きているのか、死んでいるのか…………それは今の時点では誰もわからない。しかし、彼女は確かに意識をもっていた。
(ヤマト……?ヤマトの波長を感じる……懐かしい……でも彼は死んだはず……?)(直後に、"無言"とあるので)
無言で彼女が感じられる「波長」と言われるものを確かめるリーラン。目を閉じたまま眉間に皺がよるが、それが幼さを醸し出す。
「確かにヤマトだ……。でも、でもここから離れられない。ヤマト……早く会いたい」
そう思うリーランだが、自分の真下から感じる闇の波動に絶望の声を上げる。
「まだよ。まだここから出てはいけない。魔王が……」
一種の芸術作品のように裸で浮かんでいる姿は、とても幻想的な雰囲気で美しい。ただし、その真下には、恐ろしい生き物が封印されていた。
魔王……かつて魔王と呼ばれた史上最強魔族がそこに眠っていた。
幻想的な美しい少女と、モンスター。それが一種異様な雰囲気を醸し出す。
リーランは祈った。神ではなくヤマトに……
「魔王と一緒に私を殺して……」
///////////////ヤマト視点に戻る///////////////
龍のトンガリ山だが、何事もなく通過できた。
「びくびくして損したぜ」
正直ドラゴンや竜種に遭遇したらどうしよう……と心配していた。
「おかしいのぅ……一匹も遭遇しないのは変じゃ」
「遭遇してたら死んでるぞ!」
「まぁ、魔力探査で避けながら……と思っていたのじゃが」
ここ、龍のトンガリ山には龍の隠れ家があると噂されている。
「龍族か……会ってみたいな……」
そう俺が呟くと、リリスが呆れ顔で言った。
「アホなことを言うでないヤマト、龍族などに会うと厄介なことになるぞ」
「なんで?」
「龍族は賢い。お前が龍人族だとすぐに見抜くだろう」
「俺の外見から?」
「外見からというより、彼らは眼でみるのと同時に魂を視る」
「魂を……」
「うむ。オヌシの魂の色は「ぼく龍人でーす」と言っているようなものじゃからな」
「そ、そうなのか?自分ではわからないけど」
「オヌシも年齢を重ねれば視れるようになるじゃろう」
「何年くらい?」
「100年くらいかのぅ……」
「長……でも龍人族だとバレるとマズイのは龍人族が絶滅した種族だから?」
「それもあるが……いろいろとな……」
「?」
リリスは龍族と俺を会わせたくないようだ。まぁ、絶滅した種族が突然現れたら問題にもなるだろう。
さて、トンガリ山を無事通過できたことで、この先は防衛の砦がある。
防衛の砦は、ラスタリス王国が魔獣の森を監視したり、エルフ族からの侵攻と止める役割で建城された超超……超長い城壁をもつ砦だ。南の防衛ラインとして、西から東に横に長く建築された城壁の長さは世界最大であり、その長さは数百キロに及ぶと言われている。
「まだ、砦自体は見えてこないな……」
「うむ、ここまで順調じゃったな。あとは砦を抜ければ晴れて魔獣の森じゃ」
「晴れて……かは疑問だけどな。抜けたとしても、魔獣の森は一度入ったら、Sランク冒険者以外は生きて帰れないと言われているしな……」」
「魔獣に見つかっても良いように、どこかで魔法をいくつか授けよう。オヌシの身体強化魔法は相当なものじゃが。それ以外が無知識じゃからのぅ」
「身体強化のみでも結構戦えたぞ」
「生き残るためには、足らんわい」
「どこかでオステリアに会うために神殿にも行きたかったな」
「オステリアに?」
リリスが怪訝そうな顔をする、リリスはオステリアの話を出すと不機嫌になる。
「そう苦い顔するなよ……、ふはは面白い顔しているぞリリス」
「……少しは笑うようになってきたな。ヤマト」
「そう?」
「……うむ。家を出てからニコリともしなかったので気になっていたのじゃ」
「そうだな……マリーシア達と離れたので悲しい気持ちでいっぱいだったんだけどさ、数日旅を続けてきて腹を決めた」
「腹を?」
「俺は全力で10歳まで生き残ることが大事だって思ったんだ、そのために悲しんでいる場合じゃねーってさ……」
「そうじゃ、それが最重要じゃ」
「うん、10歳になればマリーシア達に会える。また会えるんだ」
「ああ、会えるとも」
リリスはヤマトが前向きな表情をしていることに頬を緩ませた。この数日、ヤマトは宿屋に宿泊しても眠れず、歩いていても黙ったままで深刻な顔をしており、心配していたのだ。龍のトンガリ山という難所を越えたことも、精神的に安定してきた原因かも知れない。
とにかく、ヤマトが全力で生き抜こうとしている。リリスはそれをサポートするのみである。
「話を戻すがの、ヤマト。何故にオステリアに会いたいのじゃ?」
「疑問がある。それを聞きたいんだ」
「ほう、ワシも疑問に思うところがあったのじゃ、奇遇じゃのう」
「リリスも?言ってみてくれよ」
「いや、これは訓練じゃ。オヌシの考えを聞きたい」
「なんだよ、それ。先生かよ」
「ワシはお前の師匠じゃと伝えなかったか?」
「たまに忘れている……そうだったな。ははは」
「”ははは”じゃないわい、はよ言え」
「まず疑問点として、何故今回の魔人の襲撃を伝えてこなかったのか?」
「ふむ……しかし、奴は女神。おいそれと地上界の者にアドバイスをする者ではないぞ?」
リリスは試すような口調だ。
「普通はな。でも奴は俺がピンチになると良く夢に出てきていた。それもここ数年ないんだ。おかしくないか?以前は、俺が殺されそうになるので未来視までしてくれたのに……何故魔人の襲撃を教えてくれなかった」
「オヌシを殺そうとしているのでは?」
「それはないだろう、おそらくオステリアは俺を何かに利用しようとしているんだ。普通の人間に、自分の肉体を与えてまで転生させないだろう?その何かに利用するまでは、俺のことを生かしておきたいはずだ」
「ふむ……半分は、ワシの見立てとほぼ同じじゃ」
「半分?」
「……あの悪神は何を考えているのか不明じゃが、おそらくオヌシが死ぬことはないと思っていたのではないのか……」
「俺が赤ん坊のときは助けたのに?」
「それはオヌシが幼な過ぎたからじゃ。神の血を目覚めさせたとしても、ハイハイしている赤ん坊など意味がないじゃろう」
「……今の俺ならリリスもいるし、無事やり過ごすだろうと思ったのかな?」
「あくまで可能性じゃがな……」
「夢にも出てこないのも気になるな……」
「ヤマト、オステリアに会わないほうがいいぞ。奴が何を考えているのか不明だし、聞いたとしても真実を語る確証がない」
「そうかな……」
俺はオステリアのことを何となく憎めないでいる……リリスは相当に憎悪しているが、何だかんだ俺に転生するチャンスをくれたし、幼いころに力になってくれた経緯がある……。本当に彼女はリリスの言うとおり、敵なのかな?
「どこかに神殿なんかあればいいんだけどな……あ……」
俺は、ふと左に顔を向けるとそこに大きめの村があるのに気がついた。
「結構、大きい村だ」
「……ここは砦の近くじゃから、軍の家族などを住まわせているのかも知れぬのう」
「とにかく行ってみよう。もしかしたら神殿があるかも知れないぞ」
俺たちは、砦近くの村に寄ることにした。
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