第49話 馬車で南へ
そして、旅に出て3日目。
ガタ……ガタ……
馬が優秀なのか,良いスピードで順調に進んでいる。馬力もあるし、良い馬に当たったものだ。
気に入っているので名前もつけた。
「チョチョシビリ」だ。
それを言ったら、リリスは「センスないのぅ……」とバカにされた。
確かに俺のネーミングセンスは昔からない。
犬に「ポチ」と平気で名前を付けてしまう自信がある。
しかし、この馬車と馬は、どこかで捨てなければいけない。魔獣の森に入ったら、馬車など使えないだろう。それに馬を持っていると、魔物や獣に襲われてしまうので可愛いチョチョシビリが食われてしまうなんて耐えられない。
どこかで早々に放棄する必要がある。
昼すぎに、馬車で進んでいると街道に馬車が一台見えた。どうやら旅商人のようだ……。向こうもこちらに気がついていたらしく、スレ違い時に馬車を停めて声をかけてきた。
「坊や馬車を運転しているのかい?すごいね!どこからきたんだい?」
でっぷりとした、恰幅の良い人の良さそうな中年だ。とっさに身構えてしまったが、あまり警戒しないでも良さそうだ……。
俺は言い訳を考える。
「お弁当をキコリの父さんに届けてきたんだ。今、その帰り道なんです」
「そうか、えらいなボウヤ、しかしこのあたりは危ないぞ?おじさんが送ってやろうか?」
やばい、親切で言ってるんだろうけど……送られても迷惑だぞ……。俺は頭の中でテレパシ―でリリスに相談してみる。
(リリス、どうする?)
(そうじゃな。とりあえず気絶させて荷物でも奪うか?食料はあるほど良い……)
(それじゃ強盗だろ……)
そんな恐ろしい脳内会議をしていると、商人が何やら皮袋を漁っていた、何かを探しているようだ。
「売れ残りの干し肉が……あった、これを坊やにあげるよ」
「いいんですか?お金払いますよ」
「いいって、いいって!うはは!」
「それと……送っていただかなくて大丈夫です。自分で帰れますから」
「そうか!しっかりした坊やだなぁ!じゃあ、それ食べながらお帰り」
(良い人だな、この人。それなのに、ごめんなさい!あなたを襲うかの相談してました……)
「ありがとうございます!」
そういうと、商人は行ってしまった。
(命拾いしたな、商人よ)
(お前その考えやめろよ……)
干し肉をゲットした俺は更に南へ馬車を進めた。
「うめぇ……この干し肉」
干し肉をしゃぶりながら馬車で進んでいると、街道には人が少なくなってきているのが分かる。南に行けば行くほど人も交通も少なくなる。なんだか寂しい雰囲気で、俺は魔物よりも野盗などの心配をしはじめていた。
「ここらは魔物とか夜盗とか出るのかな」
「ソナー『魔力探査』を使ってみぃ」
「そうか!やってみる……」
俺はリリスにならった「ソナー『魔力探査』」を使うことにした。
【ソナー『魔力探査』とは】自身の魔力を周囲に展開させてソナーのように生き物などを把握する便利技だ。これは欠点がある。あまり広範囲に探査できないのだ。コスパが悪く使用魔力も半端ない。しかし魔力量に比例して探査範囲が広がる。優れた魔法使いでは半径30mまで広げられれば良いほうだ。しかし俺にとっては便利技だ。魔力はかなりあるので、俺の探査範囲は……なんと半径5km。ここまで探査できる魔法使いは世界でも俺だけだろうということだ。しかも、結構使っても魔力枯渇などの心配もない。
「ソナー『魔力探査』……」
グン!
自分の魔力を展開させ、周辺を探る。
「……」
俺のソナーが周辺をくまなく探査する。
「……」
「どうじゃ?」
「……うん、人らしきものは感じられない。魔物もいなそうだ。小動物くらいだな」
「では、問題ない。旅を続けるぞ」
・
・
・
そんなこんなで、安全確認をしながら俺達は馬車を進めた。たまに魔物らしきものがソナーにひっかかったので華麗に回避。かなり順調。
街道も徐々にゴロゴロした悪道に変わる。進むのにも時間がかかる……徐々に「龍のトンガリ山」が近づくのを感じる。
5日目の昼、とうとう、龍のトンガリ山に入ったことを確認した。断崖絶壁が多く、山肌むき出しの山脈だ。野生動物は少ないが、ここには、野生の竜がいるので、まず人は近寄らない。「死にたい人はどうぞ」という場所だ。俺はそこに入っているわけだ……大丈夫かいな。
ガタン……ガタン……
瓦礫が多いため、馬車ではとうとう進めなくなってきた。
「やばい、リリス。馬車ではもう進めないぞ……」
「馬車を放棄するしかあるまい」
「馬はどうすんだよ」
「手縄を解いて逃がしてやればよかろう」
「そうだな……」
俺は馬から馬車への連結金具と手綱を解いてやった。馬はキョトンとしてたが、俺がポンポンと「自由だぞ、ほらいけ」と言うと意味が通じたのか、ゆっくりと山の向こうへ消えていった。
結構愛着がわいていた馬だけに、ちょっと寂しかった……。
「さて……」
荷台から必要品を取ると、買っておいた大きなリュックに詰める。ここからは徒歩だ。
龍のトンガリ山は地上界では最強と名高い「龍族の国への転移門」があるという噂だ。龍族は、別大陸に一大王国を築いているから、あくまで別宅。しかしこれも噂に過ぎない……。
龍族とは何か……。龍人と何が違うのか? オステリア曰く、龍族は龍人族の亜種であると言っていた。そもそも、この二種族には、明確な違いがある。龍族は、ドラゴンに変身可能であり、龍人族は変身できない。
亜種というが、どちらの種族が優れているかはわからない。リリスに教えてもらったんだが、お互いに主張があったようだ……。
龍人族から言わせると、
「龍人族は進化した種族なので、龍に変身できない。そもそも何故魔獣である龍に変身する必要があるのか……それこそ退化ではないか。我々、龍人こそが進化の先なのである」
龍族から言わせると、
「根源である龍に変身できる龍族こそが、すべての本流である。龍に変身もできない龍人族など、ただの人にすぎない。我々が本流である」
と、どっちが正しいのやら……
しかし、発明した道具や神界まで進出した龍人族は、一歩先にいっていたのではないかと俺は思っている。
「なぁ、リリス」
「なんじゃ?」
「龍人族と、龍族ってどっちが優れているの?」
「龍人族じゃ!!」
「即答かよ。なんでそんなハッキリ言えるのよ」
「簡単じゃよ。龍人族が優れているのは、ワシという天才が生まれた種族じゃからじゃ」
「アホか。お前の目玉のせいで魔王が生まれたって聞いてるぞ……」
「う!?」
突っ込んだ俺の返事に、リリスは思ったよりもショックを受けて暫く腕の中から出てきてくれなかった。
あまり触れてはいけない話題らしい……。
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