第48話 旅支度
着の身着のままで屋敷を飛び出してきてしまったが……これから生きていくのにはお金が必要だ。しかし、そのあたりは無問題。
以前、王都でハイエルフの少女から貰った(?)お金を隠しておいたからだ。リリスに「屋敷の中に持っていると発見されたとき没収されてしまう。どこかに隠しておけ」と忠告されていたので、村の近くの山に隠しておいた。それが幸いした。
金を隠しておいた山に入ると、俺は目印をつけた木を探す。深夜も深夜のため、全く見えないはずだが、何故か俺は小さい頃から夜目がきく。これも龍人であるせいかね?それとも神の血をもっているから?
「龍人は夜目が利く。視力もかなり良いのじゃ」
と、リリスが教えてくれた。
「そうなんだ……じゃあ、俺はメガネ要らずだな……」
「龍人でメガネをかけている者を見たことがないのぅ」
くだらない会話で俺は意識を保とうとしていた、じゃないと暗闇で気持ちが落ち着かないんだ。
「そろそろ見えてくるはずだが……」
「あそこではないか?」
「あ、あった!」
俺は目印をつけた木を発見した。その根元にお金を埋めたのだ。俺は土を掘りながら、布袋に入れたお金を発見する。リリスに感謝した。
「あったよ。これで当面お金には困らないな」
「外に隠しておいてよかったのぅ」
「リリスは用心深いよな……」
「ふむ、当たり前のことじゃ。その金は生命線になると踏んでおったからのぅ」
「もともとハイエルフにもらった金だけどな」
「遠慮なく使え、生きるためじゃ」
「……お金があるのと無いのとじゃ、大違いだよな」
「ハイエルフの子に、今度会ったら言っておくのじゃ」
「お礼をか?」
「今度は、ケチらずに白金貨をよこせとな」
「最低かよ!!」
俺は隠しておいたお金を回収すると、方向を定める。
龍人の里は、南の「魔獣の森」内にあるらしい。森に行くためには南にある「龍のトンガリ山」を越えなくてはいけない。
「近場の村で必要品をそろえておくのが良かろう」
と、リリスのアドバイスに従い、まずは隣り村のバンキン村に移動することにした。しかし、バンキン村は幼いときに行ったことがあるが、馬車で行ったからな……。歩いていくには距離が結構ある……。
「かなり時間がかかるな……」
「仕方ないのじゃ、なんとか夜のうちに移動するのじゃ。リカオン達がオヌシを探しはじめる可能性もある」
俺が消えたので、慌てるリカオン達が容易に想像できた。俺はリカオン達のことを考えると、胸が張り裂けそうだった。
「……父上と母上、悲しむだろうな……」
「考えても仕方あるまい。今は生き延びることに集中するのじゃ」
リリスの言うとおりだ。今は考えるのを止めよう……早くバンキン村に移動しよう
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その後、俺はもくもくと歩いた。子供の足では、かなり時間がかかるはずだが、俺は無意識に身体強化魔法を使っていたようで、かなり早く到着。それでも夕刻になっていたが……、とにかくバンキン村の市場内に立っていた。
「オヌシ、身体強化魔法を知らぬ間にマスターしておるのぅ」
「習ってないのにな……」
「うむ、生死の戦いの中で覚えたんじゃろう。さすが龍人じゃ。手間が省けたわい」
「ちゃんと魔法を教えてくれよ」
「教えたいんじゃが、落ち着く暇もないんじゃよな」
「たしかに……」
どこかに拠点を構えたら、魔法をちゃんと教えてもらおう。いまは目の前に集中すべきだ。
さっそく馬車を購入するために馬車屋へ向かった。馬車選びで時間を食ってしまい、時刻は夜になってしまっていた。
子供で馬車を買うのは珍しいらしく、奇異の目を向けられたが、お金を見せたら心よく売ってくれた。この世界は金があればスムーズだ。
「つ、疲れた……」
俺はいろいろ疲れていた……。心身ともに疲労の極致にいた。
「もう夜だし、休もう……」
「じゃな……夜に移動するのは危険じゃ。今日も、魔物の気配を街道で感じた」
たしかにカタナール村からバンキン村に移動するときに、魔物の気配を感じた。襲われなかったのが不思議なくらいだ。これ以上、深夜に移動するのは危険と思われた。
「今夜は、バンキン村で宿泊するか……」
宿屋に一人で泊まるのはじめてではない。過去に、俺はドリペンネ捜索のときに王都レシータで宿泊していた経緯がある。なので俺は気軽な感じで宿屋を探しはじめた……焦らずよさげな宿屋を選ぶ。
「栗の花亭みたいな良い宿屋があればいいんだけど……」
そこそこ大きそうな、良さげな宿屋を見つけたので、そこにすることにした。宿屋の看板に「バンキンバンキン」と書いてある。食堂も1階に併設されているので、夕食と明日の朝食の場所を探さないで良さそうだ……。
「今夜はここにしよう」
チェックインするときに子供一人で宿泊ということで、店員に少し不思議そうな顔をされたが、この世界はお金さえ払えば、あまり詮索はされない。
「馬車を停めたいんですが……」
「どこにある?」
「いま宿屋の前に……」
「ああ、じゃあ。裏に回してくれ。馬車保管代も追加でもらうよ」
「わかりました」
「あとお客さん。ボロボロだが、追いはぎにでもあったのかい?血とドロがすげーな。お湯代はサービスしてやるよ」
「あ、ありがとうございます」
俺は自分の身なりがかなりボロボロだったことに気がついた。服はちぎれまくって、腹なんか血と泥ですごい色になっている。
「あの……子供用の服なんかありますか?」
「服……たしかうちの息子のが一着あったな。あとで部屋に届けてやるよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、一泊8000クランと、馬車保管2000クランだから、1万クランだ」
「え?服代は?」
「いいよ……追いはぎにあったんだろ。それもサービスで付けてやる」
「す、すみません」
「子供で大変だなぁ……」
なんか知らんか憐れみの目で見られているらしい。人の良い店員で助かった。
馬車の保管場所代も追加で払い無事にチェックインできた。以前のレシータでの社会経験が有効に働いている……
その夜は、すぐに寝てしまった。かなり疲れていたので、もうベッドインしたらすぐに夢の世界だった。
宿屋で一泊したあとは、新しい服に身を包む。服装は、一般的な服装で長袖とハーフパンツだった。寒くなるとこの装備では足りないだろう。あとで村で買っておこう。
バンキン村で、服一式・寝袋・水・食料・調理道具一式・ロウソク・松明セット・大きなリュック・麻袋3つ・石鹸。などなど、結構買って馬車に積んだ。馬車はこういうとき便利である。
「よし……これだけ買えば大丈夫だろう」
「そうじゃな……馬のエサは買ったか?」
「あ……」
「あと、武器も買っておけ。今後、戦闘になるかも知れん」
というわけで、武器は子供なのでショートソード1本と、短剣1本、革製の防具を一式買った。
「結構金を使ったな……。30万クランは使ったぞ」
「必要品じゃ、仕方あるまい」
装備も整えたので、俺とリリスは街道を馬車で進んだ。順調に街道を進んでいる……馬車があるのと無いのでは大違いだ。
はじめ、馬の扱いに苦労したが、何とか運転できている。馬車を操る5歳児……結構目立つな……
そんなこんなで、俺は馬車を南へ南へと進めた。目指すは「魔獣の森」だが、まず龍のトンガリ山という岩山を超える必要がある。
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