第41話 リリスの推測 ※※幼年時代完※※
ドリペンネとの戦闘を終えた俺は夜も遅いこともあり、とりあえず朝になるまで宿屋で一泊する必要があると考えた。
(宿屋に泊まるのか?ヤマト?)
(うん。すげー疲れた……さっきの経緯も聞きたいしさ)
(うむ。明日はすぐに村に戻るのじゃろう?馬車を借りねばな)
(馬車か……金はあるから大丈夫だな)
(とりあえず、一件落着じゃから今夜は休めヤマト)
(服がボロボロなんだけど……怪しまれないかな)
(あの宿屋の女なら、便宜をはかってくれそうじゃが……)
(たしかにな。泊まるなら栗の花亭だな……)
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俺は栗の花亭の前まで戻ってきた、再びチェックインをするために入り口に立つ……なんだかこの宿屋にくるとホッとするのは気のせいだろうか。まだ一泊しかしていないのに、あの獣人の美人店員がアットホームだからかな。
(よし……まずはチェックインして、さっきのことをリリスに聞こう)
カランカラン……
扉についている大きな鈴がなる。
すると、カウンターにいたテカンナが俺の目に入った。彼女は、カウンターに頬杖をついて座っていたが、こちらを見ると嬉しそうな顔に変わった。
「あの……今夜も一泊お願いしたんですけど……」
「ヤマト君!約束どおり来てくれたんだね……って……えぇえ?」
テカンナさんが驚いている。何故だろう? 喜んだり、驚いたり……かなり表情が豊かだ。どちらにしても美人さんである。美人というのは、何をしても美人なんだな。
「どうしました?」
「ど、どうしたの?ヤマト君!?服がボロボロだよ?それに顔が血で……だ、だだだ大丈夫なの!?」
「あ…」
(やっぱり怪しまれるよね……)
蹴られ地面で転がって服はボロボロ……顔は血と泥だらけであった。やはりこれは怪しい……。な、なんて言い訳しよう?
「あ、これは……階段でこけまして……」
なんちゅーテンプレ的な回答……かなり動揺している俺……。
「……また盛大に転んだのね……いいわ。チェックインだけ済ませて」
テカンナさんは、明らかに怪しい俺の言い訳について追及をしないでいていれた。部屋に入ると俺の頭についた泥を手で払い、頬の汚れを濡れたタオルで拭いてくれた。ものすごく優しい……テカンナさんに惚れてしまいそうだ……。 ていうか、他の客にもここまでサービスしているのだろうか。だとすると、少し妬けてしまう。
俺は顔を赤くして、テカンナにお礼を言った。
「あ、ありがとうございます」
「……ヤマト君。本当に階段でころんだの?」
ものすごく心配そうな顔をされている。俺が何かトラブルに巻き込まれたのではないかと疑っているようだ。
(嘘をつくのは心苦しいけど、本当のことを言えないもんな……)
「はい。本当です。心配かけてごめんなさい」
「そう……ならいいんだけど。いつでもお姉さんに相談するのよ?」
「はい(うう……すごく心苦しい)」
「わかったわ。じゃあ、服をもってくるから待ってて!」
「服?子供用の服なんてあるんですか……」
「あるのよ、ちょっと待っててね」
「はい」
そして、部屋で待っていると、すぐにテカンナさんが来てくれた。どうやら新しい服を持ってきてくれたようだ。俺はさっそく、その服に着替えた。ごくごく普通の平民の子供が着る服だ。新品なようでとても良い匂いがした。
「この服は?なんで子供服があるの?」
「宿で一応子供用の服なんか何着かそろえているのよ。旅行するのに子供の服を忘れた!ってお客さんがいれば売れるからね。サイズがぴったりだと良いんだけど……」
「サイズは大丈夫そうです。ありがとうございます。あとでお代は払いますので」
「いいのよ。その服全然売れなかったから捨てようと思ってたのよ。無料よ」
「え?いいんですか?」
「もちろんよ、今後ごひいきにしてね。うちの宿屋を!」
ウィンクをして素敵な笑顔と共にテカンナさんは退出していった。部屋にはテカンナさんの良い匂いが残っていた。
(うーんセクシーかつ、優しい美人さん。まさに完璧じゃないか……。ごひいきにって、俺は明日には帰るんだけどね……。なんだか寂しいな……)
テカンナさんもいなくなったことだし、リリスと色々話し合わなければいけない。俺はリリスに先ほどまで何が起きていたのかを詳しく聞くことにした。
「リリス……何が起きたのか教えてくれ」
「まったく覚えておらんのか?」
「ああ、二発やられてから先は全く……」
「そうか……」
リリスは、俺が瀕死の重傷を負ったこと。その後に立ち上がりすさまじい力を発揮してドリペンネを圧倒していたことを教えてくれた。
「すぐに立ち上がったのか……」
「うむ、すぐじゃった。そのときには青いオーラを纏っており、呼吸も非常に荒かったのぅ。まるで獣のようじゃった」
「青いオーラを……そして獣みたいに?」
「うむ。目が爛々と光り、呼吸も荒く、こちらから話しかけてもまるで聞いていないようじゃった」
「それで、俺はどうやって意識が戻ったんだ?」
「それじゃ……」
リリスは、最後は右腕にすさまじい青いオーラをまとって攻撃しようとして、その時に月の糸がスパークして俺が意識を取り戻したということを教えてくれた。まるで月の糸と青いオーラが反発しているようだったとも教えてくれた。
「月の糸が……」
俺は右腕につけてある月の糸を見つめた。これはハイエルフにもらったものだ。この糸が、おれの暴走を止めたらしい……俺はもしかして?と思った。
「まさか、あのハイエルフ。ここまで見越して……」
「どうじゃろうな、ハイエルフは不思議な能力を持っていることが多い。その可能性はおおいにあるじゃろう」
「あの子にもう一度会いたいな。いろいろ聞くことがある」
「うむ……ワシも会ってみたいのぅ。話はここまでじゃ、意識を取り戻してから先は覚えておるじゃろう?」
「うん……しかし、すごく不思議だ。そもそも俺はなんでそんな力を……」
「……怪我もすっかり完治している。普通ではあり得ぬ」
俺は腹をめくり傷をみていた。蹴られたときには黒い痣が大きくあったはずだったが、今みると何もない。擦り傷一つないのが異様だ。
「完全に治ってる……」
「うむ……ワシの推測じゃが。おぬし……もしかすると、厄介な体に生まれたのかも知れぬぞ」
リリスは深刻そうな顔をして俺にそう告げた。
「厄介な?」
「うむ。おぬしの体は、半分は神の血が入っているな?」
「ああ、そうらしい。実感はないけど……オリテリアの体が半分以上使われているらしい……」
「ワシもそれはプラスに作用すれば良いと考えておった。しかし、先ほどの様子を見て思った。オステリアの血が強すぎて制御できないのではないかと……」
「どういうことだ?」
「うむ。おそらくじゃが……あの脅威的な力はオヌシの中にある神の力がそうさせたのだろう。脅威的な回復もじゃ」
「神の……」
「青いオーラは人のものではなかった。あれは神族がもつオーラじゃ。ダリア界で見たことがあるからのぅ。間違いない」
「地上界で持っている奴とかいる?」
「いないと断言できる。神のオーラは、本来地上界では感じることすら出来ぬ。神は地上界に来れぬからのぅ」
「魔力と違うのか?」
「性質はほとんど同じじゃが、地上界の魔力とは比べものにならぬ力を持っておる」
「…………」
俺は両腕を広げて自分の体を見てみる。とても信じられない……どこからどう見ても俺の体は人のものと同じだ。
「なんで急に目覚めたんだろう……その神の力ってやつにさ……」
実際、今はまったく感じない……何かスイッチのオン・オフみたいなものがあるのだろうか……
「おそらくじゃが死にかかったことで神の血が目覚めたんじゃろう」
「おいおい。スイッチは死にかかることかよ……」
「うむ。単純に神の血が目覚めるだけなら良いのじゃが、オヌシはその間まったく意識を保っておらんかった。つまり……狂戦士に近い状態になっておったのじゃ」
「狂戦士……」
「今後、成長するにつれ、オヌシの体が神の肉体に侵食されなければいいのだが……」
「し、侵食?どういうことだ?」
「つまり……いつか、オステリアに取り込まれてしまい。体を乗っ取られてしまわないか、と心配しておるのじゃ……」
「それはないだろう。そんなことをしてオリテリアに何のメリットがあるんだ?」
「オステリアには何か狙いがあるはずなんじゃ。普通にオヌシを転生させて、満足するような奴ではない。何か狙いが…………」
「……」
俺は背筋が冷たくなるのを感じた。
女神は何を考えているのだろうか。敵なのか、それとも味方なのか。俺は窓をあけて夜空を見上げた。その先に神の国があるわけもないのに……
※※※幼年時代 完※※※
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