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イケメンに異世界転生したら森に捨てられてた件  作者: 八条院せつな
第一章 ヤマト幼年時代
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第35話 宿屋捜索

俺が呆然としていると、横からリリスの声がする。


「ヤマト。何を呆けておるんじゃ。アホみたいな顔をしとるぞ」


「!」


俺が驚くと、リリスがそこに立っていた。俺を見つめて呆れたような顔をしている。左手は腰に手を当てて、右手は顎に添えてある。彼女のお決まりのポーズだ。超美人なだけにサマになっている。


「リ、リリス……いつからそこに居た?」


「さっきじゃ、どうしたんじゃ?アホみたいな……」


「それはもういいって!うるせーよ!」


「ははは、怒るな。どうしたんじゃ?何があった?」


「……何でもないよ。ちょっとハイエルフの子に声をかけられてさ」


「ハイエルフ?ほう、珍しい種族に出会ったもんじゃな」


「もう行ってしまったけどな」


「そうか。何か言われたのか?呆然としておるが」


「いや、普通に良い子だったよ。心配ない」


「ならば良い、それよりも収穫があったぞ」


リリスは伝えたいことがあるのか嬉しそうな表情に変わった。


「お?収穫あり?」


「ありありじゃ!喜べヤマト。ターゲットの情報を掴んだぞ」


「!?ま、まじか!?」


「うむ。ターゲットの名前は「ドリペンネ」。30歳のAランク冒険者じゃ」


「ドリペンネ……覚えた」


30歳ってことは、結構ベテランの冒険者かもしれない……。リカオンは20代前半なので、身体的有利はリカオンにあるのかも……。


「ドリペンネは優れた魔法剣士じゃ、相当腕が立つらしいのぅ。まぁ人族のレベルじゃわい。たかが知れていると思うが……」


「魔法剣士……」


リカオンも魔法剣士だ。とても珍しいジョブだ。


「うむ。リカオン殿、危ういかもしれぬのぅ」


「リカオンの剣技も結構すごいぞ」


「うむ、一度見たことがあるが、剣筋は悪くない」


そうなのだ、リカオンは剣と魔法をバランス良くこなす魔法剣士。その腕前はリリスも「人族の中でも高いレベル」と評していた。ドリペンネと戦って、リカオンは負けるとも限らないのだ。


話がそれた……いまは情報だ。


「そ、それで奴の居所は?」


「当然それも掴んできた。しかし、当てにならんぞ」


リリスは少し忠告するかのような口調になる。


「どういうことだ?」


「うむ。ドリペンネはレシータのはずれに住んでおるが、警戒してからなのか。宿屋を転々としているらしい」


そりゃそうか……自分が国に疑われているとしたら、俺だったら住所がわからないようにする。用心深い人物と思われる。これは厄介だぞ……


「なるほど……その情報は、当然リカオンたちも掴んでいるよな……そうだ!?リカオンたちは?どこにいる?」


「残念ながら、すでに依頼に着手していて、ギルドの中でも情報封鎖が行われていて判らんかった。ギルドにはいなかったのぅ」


(あくまでギルド側はリカオンの存在を隠しておくつもりか……失敗したら殺すように……くそ!)


俺は焦りを感じつつ、すぐにでもドリペンネの居場所を突き止める必要性を感じた。


「わかった。そのドリペンネって奴の居所を掴んで、リカオンたちに伝えれば、この勝負は勝ったも同然だ」


「寝床を襲えば、いくら優れた魔法剣士と言えども対応できんじゃろうからな。リカオンも魔法剣士じゃし勝機はあるじゃろう」


「そのドリペンネって奴の顔は?」


「ああ、魔法絵画があったので、それを見てきた。バッチリ覚えたぞ」


魔法絵画とは、いわゆる「写真」だ。相当精密に描かれるので、とても貴重な技術である。一枚の魔法絵画を作るのに10万クランはする。


「良く魔法絵画なんかあったな……」


「どうもギルドではAランク以上の危険冒険者は、管理のために魔法絵画を取るらしいの」


「そうなのか。ということは奴はもともとギルドから危険視されていたんだな」


「そういうことじゃろうな」


「そのおかげで情報がかなり取れた。でかしたぞリリス!」


「ふはは!周囲から見えないから、やりたい放題じゃわい。結構面白かったぞ」


俺達は、さっそくドリペンネって奴の潜伏場所を探すことにした。この街には100を超える宿屋があるらしいが、しらみ潰しに調べるしかないだろう。100くらいであれば、今日一日で調べられると思う。かなり大変だが……こっちにはリリスがいるので、やりやすい。宿屋の部屋に無断侵入をしてもらい、リリスに一部屋一部屋調べてもらえばいいんだから。


10軒目の宿屋の調査に入ったとき、リリスが青ざめた顔で俺に訊いてきた。


「も、もしかして100軒すべてワシやるのか?」

しかし、50を超える宿屋を調べた結果。ドリペンネを発見することはなかった。リリスはぐったりだ。


「も、もう勘弁してほしいのじゃ。結構しんどいのじゃ」


「ど、どうしてだ……宿屋にいないってことはどこか外にいるのか?」


「いや、それはないじゃろう。検問を張っているし、国が街から奴を出さないようにしているからのぅ……絶対、このレシータの中にいるはずじゃ」


「宿屋をこれだけ調べて発見できないとは……」


「まだ半分の宿屋しか見ておらんから何ともわからんがの」


「たしかに……結構時間がかかるな。これ……」


「じゃな……しかし宿屋にいないとすると厄介じゃぞ。このレシータは世界でも二番目に大きい。奴を発見することは不可能じゃ」


「こまったな……すべての宿屋をチェックしたら、次の手を考えるか」


「そうじゃな、今日はここまでにせんか?1日でターゲットを補足すること自体無理じゃ。ワシは疲れたわい」


「く……うまくいくと思ったのにな」


「奴もバカではあるまい、そううまくいかんよ。知恵比べじゃ…………それよりも、夜も更けてきたぞ。どうするんじゃ?」


「どこか宿屋を探して泊まるしか……」


「オヌシ……金を持っているのか?」


俺はそれをリリスに言われて青ざめた。そういえば、自宅から金を借りてくるのを忘れた……、そもそもこっそり出てきたから、借りれるような状況では無かったのだが。


「やべ……持っていない」


「1クランも?」


「うん、1クランも持っていない」


「となると今夜は野宿か……しかし、子供の野宿は危険じゃぞ」


うーん…………今まで暖かいベッドの上で眠る生活をしていたので、そこら辺の固い地面の上で眠れる自信がない。第一、王都の治安は悪い……すぐに追いはぎに遭うか、殺されてしまうだろう……。危険すぎる……。


「困ったな。金……金があれば……」


俺は無いと分かっていながらも、胸ポケットをまさぐってみた。


チャリン…………


俺のポケットから金属音がした。


「うん?」


俺は音がしたので、ポケット上からパンパンと叩いてみる。


チャリ……チャリン……


(た、たしかに金属音がする。しかもコインの音だ!)


俺はポケットから手を取り出してみる。そこには金貨が2枚ほど入っていた。


「は、半金貨だ……」


この世界での通貨は、以下である。ちなみに1クラン=日本円で1円と換算して差し障りない。


半石貨=1クラン 

石貨=10クラン

半銅貨=100クラン

銅貨=1000クラン

半銀貨=1万クラン

銀貨=10万クラン

半金貨=100万クラン

金貨=1000万クラン

半白金貨=1億クラン

白金貨=10億クラン



つまり半金貨1枚で、100万クラン……日本で換算するに100万円どの価値がある。俺のポケットに2枚の半金貨、つまり200万クラン相当が入っていたのだ。大金である。


「おおぉ。やったではないか、それがあれば今夜は宿屋に泊まれるぞ」


「しかし、この金貨はどこから…………」


俺は昼間に出会った。グリーンヘアーのハイエルフの少女の顔を思い浮かべた。


「まさか、あの子が……いつの間に俺のポケットに?」


俺が固まっていると、リリスが面倒くさそうに俺を急かす。


「はやく宿屋で休むのじゃ。ワシは今日は疲れた……」


「お前、実体がないくせに疲れるのかよ」


「失礼な、ワシだって疲れるわい。身体的にというより、精神的にな」


精神的に……なるほど……。俺は変に納得して笑ってしまった。


とにかく、俺は宿屋に向かった。

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