第33話 王都レシータ
王都レシータへ両親は旅立っていった。
ナタルと俺は、村の出口まで両親の馬車を見送りにきていた。馬車が見えなくなるまで見送ると、俺とナタルは手をつないで一緒に屋敷に戻る。ナタルは、俺の手を握りしめ涙目になっていた。
「ヤマト様。リカオン様とマリーシア様が戻るまで、一緒に頑張りましょうね!大丈夫ですからね、このナタルがついています」
「う、うん」
俺が不憫なのだろう。ナタルは俺が寂しくないように、いろいろ提案をしてくれた。
「まずは、今日の夕食は腕によりをかけますからねー!期待してください。明日は、このナタルとピクニックに行きましょう」
「うん……ナタル。ありがとう!」
「さあ、料理が出来るまで自由にしていてください」
「わかった」
そういうと、俺は自室に戻った。部屋には、リリスが腕を組んで、俺が荷造りをするのを黙ってみている。
「…………」
「……わかってるよ……ナタルには申し訳ないと思ってる」
「馬車の手配は済んでおるのか?」
「ああ、行商人がちょうどいたので交渉は済ませてある」
「良く交渉に成功したのぅ」
「一応貴族だから。銅貨一枚で納得してくれたよ」
「銅貨よく持ってたのぅ……」
「家の金庫から借りた」
「悪い奴じゃのぅ」
「両親が死ぬかも知れないんだ……仕方ないだろう」
「まぁ、そうじゃな……」
「まぁ、それは良いとしてナタルだけど。彼女は俺がいなくなったら、とんでもなく騒ぐだろうな……心が痛い……」
「騒ぐどころではないじゃろう。ナタルは、オヌシのことをすごく大事にしているからのぅ……気が触れてしまうのではないか……」
「仕方ない……俺の両親の命がかかっているんだから。一応手紙は書いておく」
「手紙……まぁ、ないよりは良いじゃろう」
俺は簡単な手紙をしたためた。
【ナタルへ】
いきなりいなくなってごめん。ちょっと、隣の町まで社会見学に行ってきます。かならず戻るので安心してね。
手紙を横から見ていたリリスが感想を漏らす。
「むちゃくちゃな内容じゃのう」
「何を書いたとしても、子供がいなくなるんだ。大騒ぎになるさ」
「そうじゃのう……書かないよりはマシかのぅ。これで事件に巻き込まれた可能性で大捜索されたりすることを軽減出来るじゃろう」
手紙を自室の机の上においておいた。そしてナタルの目を盗んで、裏口からこっそり抜け出し、行商人の馬車に乗り込み。出発した。
ガタン……ガタン……
「…………」
「…………」
馬車の荷台のところに乗っているんだが、やっぱり乗り心地は最悪である。王都までの移動時間だが、かなり時間がかかる。おそらく7日以上はかかるだろう。
御者でもあり、乗せてくれた行商人はよく俺の面倒を見てくれた。
7日目の朝、俺は馬車の荷台の中で眠っていた。このころになると、馬車の揺れなど気にならなくなっていた。慣れとは恐ろしい。
「坊っちゃん!坊っちゃん!王都につきましたぜ!!」
「うぅーん」
俺は寝ぼけ眼で、馬車の外をみた。
「おぉ。王都レシータ…ここがそうなのか!」
ブルーに輝く湖畔を後ろに、レシータは巨大な城壁に守られていた。威風堂々とした景観を作っている。
「結構大きいのぅ……」
「……そりゃそうだ。人族最大の都だぞ」
すると、行商人が少し慌てた様子で俺に告げる。
「坊っちゃん!荷台の隅に隠れていてください。衛兵が検問していますので……」
「やべ……わかった。この大きな籠の中に隠れているよ」
「坊っちゃんは小さいのでバレることはねぇと思うけど。念のためだ……まったく厄介ごとに巻き込まれたもんだて」
「悪いね……」
俺は荷台の中にあった、大きな籠の中に隠れた。そこでジッとしている……
外で何やらガヤガヤ音がするが、おそらく検問が始まったのだろう。
「…………」
俺は身を潜めている。外で門兵とやりとりしている声が、聞こえてきた。
「……念のため荷台をチェックさせてもらうぞ」
「へぇ……なんもありませんぜ。何度も王都とは行き来させてもらってますし」
「規則だ」
「……分かりました」
ガタ……ガタ……と荷台に誰か乗ってきたのを感じた。
「ゴクリ…………」
俺は生唾を飲み込んだ。どうかバレませんように……
「ふむ……何もなさそうだな、よし」
おそらく門兵の声なのだろう、許可が降りたようだ。しばらく待つと、馬車が進むのを感じた。
(良かったぁ……緊張したぜ……)
俺は胸を撫でおろす。馬車は無事城壁をまたいだようだ。
荷台から顔を出すと、外は大きな道を直進していた。街道沿いには華やかな店が並ぶ。
「おぉ……あらためて見ると、すごい大きな都だよな」
「そりゃ、そうですぜ坊っちゃん。レシータは世界で二番目に大きい都です」
人族の中では最大の都だが、他の種族と比べれば上がいるということだ。
「そうだよな……」
俺のこの世界に来て4年になる。地理も学習済だ。王都レシータ、人口4000万人がひしめく巨大都市だ。いくつものブロックに分かれており、今通過しているのは「ギルド街」だろう。魔物や荒くれものが多く集まるので、街の中心に寄せたくない王都側が、入口すぐにそのブロックを作ったのだ。リカオンとマリーシアは、このブロックにいる可能性が高い。
(まずはリカオンたちを見つけないと……)
俺は行商人のお礼を言い、馬車から降ろしてもらった。
「ここでいいんですかい?」
「ああ、本当にありがとう」
行商人は、俺のことを見て少し不安そうな顔をしたが、「これ以上厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ」とばかりに去っていった。
俺は馬車を見送ると、リリスとテレパシ―で会話を始める。
(さて、リカオンたちを探さないと……冒険者ギルドにいればいいけど……)
(もうすでに依頼に着手しているかも知れないぞ?)
(にしても、ターゲットは冒険者ということだから冒険者ギルド周辺にいるはずだ)
俺は冒険者ギルドの建物を探した。すると、街道沿いに巨大な建物が鎮座しており。その看板を見ると、盾と剣のマークが特徴的な「冒険者ギルド」のサインがついていた。
「あれだ……すぐに見つかったな」
俺は冒険者ギルドの建物の前で、立ちすくんだ。入り口から出入りする冒険者たちに怯んだ。
(い、いかつい……怖い顔の人達がむちゃくちゃ出入りしているよ)
(そりゃ、冒険者ギルドじゃからのぅ……)
(こ、この中に入るのか……)
(待て待て。ヤマトよ、オヌシ この中に入ろうとしているのか?やめておけ)
(なんでだよ……入らないとリカオンたちを見つけられないだろう?)
(オヌシのような子供が入っていったら目立ちすぎるじゃろう?すぐにリカオンたちに見つけられて、村へ帰されるぞ)
(たしかに……で、でもならどーすんだよ)
(ワシを使え、ワシがギルドに入って情報を集めてくる。うまくいけばターゲット情報を見つけられるかも知れぬ)
考えてみれば、それが一番有効な手だった。リリスは人には見えないので、スパイ活動にうってつけだ。
(頼む……俺は外にいるわ)
(任せておけ、しかしあまり遠くにいくでないぞ。ワシはオヌシから100m以上離れられないからのぅ)
この頃になると限界距離が伸びていて、リリスと俺の限界距離は100mまで可能になっていた。これは実験していたので、はっきりしている情報だ。100m以上離れると、強制的に俺の中に戻ってきてしまう。
(なら、俺はあの建物と建物の間にいるよ、目立たないように)
(そうしておくんじゃ)
そういうと、俺とリリスは別れ、俺は外の建物と建物の間に……リリスはギルドの中に入っていった。
「…………」
俺は暇だったので、地面にすわり込み、ジッとリリスを待つ。他にすることがないので、魔力操作の訓練などをしながら時間を潰した。
(まだかなぁ……リリス長いぞ……)
一人で待っていると不安になる。良く前世で、スーパーの前で待っている犬とかを見たことがあるけど、どの犬も不安そうな顔をしていた気がする。今なら気持ちが分かる……
そんなことを思っていると、俺の前から声がかけられた。
「そんなとこで何してるの?」
「?!」
俺が驚いて顔を上げると、そこにはグリーンヘアーのツインテール美少女が立っていた。
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