第27話 女神からの提案
「……ヤマトがそういうのであれば本当なのじゃろう。分かった……オステリア、ヤマトが成長するまでは休戦としようぞ」
「ありがとうございます。リリスさん。私としても助かります、どうもヤマトさんは師匠を探していたようですが、うまくいっていなかったようですからね」
オステリア……お前、神殿からの状況を見ていたんかい……
俺はオステリアにすべて監視されているようで、背筋が冷たくなってきた。
リリスは俺の眼を見つめながら頷いた。
俺はそれをみて少し安心するのを感じた。何故か分からないが、リリスがいてくれると思うと安心するのだった。
「お前の策略に乗ることは悔しいが……仕方あるまい。つまりヤマトの師匠になれということじゃろう?」
「そのとおりです。リリスさん、カリアースほどではありませんが、あなたの強さは素晴らしいです。先ほどの戦闘もここまで楽しめるとは思いませんでした。ほら……私が傷を負いましたよ。これは誇ってよいです」
オステリアは、右手の甲を見せてきた。傷?どこに?よく見ると若干、右手にキズが見えるが非常に軽傷だ。
「それでもカリアースの劣化版というところですが」
そういうオステリアのセリフに、リリスは憎々し気に返答する。
「く!オステリアよ、ワシの力など知れておる。もとよりカリアースは桁違いじゃった……それにワシは死人、魂だけの存在は、これ以上成長しないのじゃ。じゃからヤマトを鍛えることについてはやるつもりであった」
確かに、リリスは強くて神と殴り合えるくらい強い。けど力の差は歴然だ。リリスのボロボロ加減が答えだ。
(しかし、カリアースとは?リリスがそこまで言う人物だったのか?そんな強いの!?)
話だけ聞いていると、俺はカリアースの生まれ変わりとか?でも、俺の前の人生って日本でブサイク中年だったんですけど……。なんか二人とも勘違いしてない?!
オステリアは、リリスの回答にニコリと笑うと……。
「ありがとうございます、ではしばらく共同戦線ということで……そろそろ地上界に戻します。さっきみたいな女神が寄ってきては困りますから」
「待て、オステリア。カリアースの魂を使って、お前は何を考えているのだ?成長したらヤマトをどうするつもりなのだ?」
だから俺はブサイク中年なんだけどな……。しかし、ここで口を出すとややこしいことになりそうなので、口を噤んだ。
「ふふふ……それはそのときのお楽しみということで……一つ言っておきます。ヤマトフォンカリアースもまた誰かの魂を引き継いでいるということを覚えておきなさい」
「カリアースが……?じゃと?」
俺はそこまで聞くと、口をはさんだ。
「まてまて!女神様!カリアースって誰だ?リリスは龍人でそして、俺の魂と融合した。オステリア様。かつて、あなたはリリスは敵だと言いました。しかし、リリスは信じて良いように思えます。一体あなたは……」
そこまで言うと、オステリアは俺の言葉を制した。
「ヤマトさんいえ、息子よ。私のことを疑っているのですね……多くは語れません。しかし、あなたの魂は自分が思っているよりも貴重なのです。結果としてリリスさんはあなたの魂と融合しました」
「はい、彼女は信用に足りると自分でわかるんです……だから……」
そこまで言うと、オステリアは俺の言葉をさらに遮った。
「結果として融合は成功しました。しかし融合とは大変危険なものなのです、乗っ取られる可能性も十分あります」
「なんじゃと?ワシがそのようなミスを犯すなどと……」
リリスは不平の言葉を漏らしそうになったが、オステリアが制する。
「あなたはすでに死んでいます。生きているときとは勝手が違うでしょう。魂融合論はあなたの十八番ですが……あなたは何度もいいますが、死んでいるのです」
「ぐ……」
リリスは口を噤んだ。言い返せないのだろう。
「それで?その危険を避けるために、あのような嘘を?」
「はい。そのとおりです」
「……」
俺はオステリアの表情を見つめた、彼女は微笑したままだ。意図を読み取れない。一応筋は通っているが、信じていいのか?この女神は?
「信じられないのならば、それでいいです。息子よ。今はあなたが成長するまでを見守るだけです。それにカリアースのことなどは、そこにいるリリスさんに後で聞きなさい。私のことを悪く言うでしょうが構いません。あなたが判断するのです」
「……はい」
確かにオステリアの言うとおりだ、信じられないにしても俺が成長するまではオステリアも何かしてくる気はなさそうだ……もし、何かしてくるのであればすでに行動に移しているだろう。
……永久に思える、時間が流れる。実際には数秒である……
リリスは笑った。
「面白い。ヤマトはワシを信じ、そして女神を疑いはじめた。そして信じられているワシは女神を信じておらぬ。それでもオステリア、オヌシはヤマトを成長させようというのだな?」
言い方によっては失礼極まりない言い方である。リリスは、「お前のことを誰も信じていないんだぞ」と言っているんだ。
しかし、オステリアは微塵も怒りを見せず微笑したまま答えた。
「はい、そのとおりです」
「わかった……ではその意図にあえて乗ってやろう。成長したのちに狙いがあるようじゃが、それは語らぬのだろう?」
「ふふふ……その通りですよ。リリスさん」
「クソ女神めが……」
すると、オステリアは俺に静かに語りだした。
「聞いていたとおりです、息子よ。このリリスさんには全てを教えて構いません。転生も……すべてです。といっても、ほとんどバレていますがね……とにかく、このリリスさんに戦い方を学びなさい。そして成人するのです。話はそれからです」
「女神さまは……あの」
「なんです?息子よ」
「いえ……何でもないです」
俺はオステリアが疑われたまま、そして嫌われ者のまま終わって良いのか問おうとした。しかし、何と言って良いのか分からなかった。
(今は彼女達の言葉に従うほかない……)
「では戻しますよ。眼を閉じなさい、二人とも」
「……」
「……」
俺達二人は言われたとおり眼を閉じた。そして、次に眼をあけたときには俺の部屋の中に戻っていた。
そうして、俺達は地上界に戻された。
オステリアに下界に戻された俺とリリスは、顔を見合わせた。あまりに突然に召喚され、そして突然に戻された。さんざん振り回された感がある。
しかし、無事に戻れたし、俺はリリスという師匠をゲットしたことになる。これはオステリアのおかげ?なのかも知れない。
(なあ?お前、俺が魔法使いになるための師匠になるって言ってたよな)
「確かに言った、オステリアのやつに乗せられた感じがあるが……」
(たしかに……)
「まぁ良い。喜ぶのじゃ。世界最高レベルの魔法を学べるぞ」
リリスは、腰に手をあてて俺のことを覗き込むようにして眼を合わせてきた。
とんでもなく美しい顔の造形なのだが、リリスは表情が意外と豊かで、どこか茶目っ気がある。
俺は、今の状態は赤ん坊なので何も思わないのだが、成人男性ならイチコロだろう。
(お前の魔法ってそんなに凄いの?)
こちらとしては頼れる人がいないので、師匠になってくれるだけで大歓迎だが、ちょっと確認したかった。リリスは、俺がそう質問してくるとは思っていなかったのか、眼を開き顎に手を当てて答えた。
「うむ……そうじゃな。おそらくワシに敵う魔法使いはこの世にはいまい……」
(へぇ……)
「あのな……もう少し感激とまでは言わぬが、喜んでみたらどうじゃ?」
(まぁ、お前の魔法を見てたけど、確かにすごかったよ。世界最高の魔法使いって、本当なのかもな)
「この世界の重要人物が国が買えるお金を用意して、やっとワシの教えをもらえるといったところじゃぞ……まったく」
(あと数か月で魔人がやってくる。それまでどれくらい力をつけられるかだな。ていうか、リリス。お前が退治してくれればいいんじゃないのか?)
「無理じゃ。ワシは可視化されているだけで実際に何かできるわけではない」
リリスは、近くにあった椅子に座りながら机の上をトントンしながらそう言った。
(とてもそうは見えないけどな……だってダリア界でも魔法で戦闘していたじゃん)
「あれは精神世界でもあるダリア界だからじゃ、地上界であるウチラース界ではワシは無力じゃよ)
(そう……なのか。やっぱり自分で戦うしかないんだな。しかし……)
しかし改めてリリスの姿を見て驚きの声が漏れてしまう。オステリアとかを見ていたので美人には眼が慣れていたと思っていたのだが、リリスの美しさはオステリアに迫るものがあった。美人という生易しいレベルではない。
これからこの美女に魔法を教えてもらうとなると、それだけでテンションが上がるというものだ。
「なんじゃ、ジロジロ見て」
セリフがどうもな……もうちょっと可愛い言い方とかしてくれないかな……
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