第25話 リリス vs オステリア神
俺がリリスに話しかけようとすると、リリスは俺を押しのけ、すさまじい殺意を込めた眼をオステリアに向けた。
「オステリアか!キサマぁー!!やっと会えたぞ!」
大音量…………龍の咆哮のようだ。あの顔で、その音量は想像していなかった。
「うわわわ!」
俺は思わず両手で耳を塞いだ。さらにリリスは叫んだ。
「お前に!!お前にどれだけの龍人が!カリアースの命だけは奪うべきではなかったのだ。あやつがいれば魔王も!」
シュアア…………
リリスの両手に何かすさまじい力が集まるのを感じた。すごいオーラだ。
「あらあら?リリスさん、久し振りに会ったというのに……さっそく戦う気ですか?」
「神界にワシを連れてきたのが間違いよ!」
「神崎さんの魂と同化したから、一緒に連れてきてしまったのですね」
「覚悟を決めよ、邪神が!」
「ふふ、怒ってらっしゃるのね、確かにカリアースを殺したのは私。あなたの可愛い弟子の仇ですものね。あれは忘れられない戦いでしたわ。もう、体が疼くくらいの……最後は首ひとつになっても禁忌魔法出してましたっけ。すごい男でしたわぁ」
…………リリスはそこまでオステリアの言葉を聞くと、動きだした。
「殺す!!邪神めが!ヤマトよ、離れてるのじゃ!」
ドン!
俺はリリスに突き飛ばされると、10m以上吹き飛ばされた。
「ぐふ!?」
俺はそのまま地面に転がった。
俺が離れたのを確認したリリスは、オリテリアを睨みつけ。そして両手に眩い光を纏った。
「思い知れ!オステリア!!」
リリスがその両手を上にあげた。
「【龍雷の雨】(ドラゴンサンダーレイン)!!」
すると、天に龍の形をした雷がいくつも発生した。まるで電気で構築された龍のようで、一つ一つがまばゆく光っている。数十、いや百は超えてる……
その龍の雷が落ちてきた。
「!?」
ドガァ!ドギャオン!!!!
「うわぁぁあ!!」
リリスの魔法がはじまった。無数の龍の形をした雷がオステリアに襲いかかる。
ドギャン!!!ギャン!!!
爆音だ……落雷の中にいたことある?まじで怖いよ?!
「つーか冷静に分析している場合じゃねー!やべーー!死ぬ!」
引き続き落雷がオステリアを襲っていた。
すさまじい爆音と共に、オステリアは落雷にのまれた。
ドギャ!!ギャオン!!
聞いたこともない音、大爆音だ。俺は思わず耳を塞ぐ。
「オステリア様…………死んだんじゃ」
俺が心配になっていた。オステリアは基本、俺の味方であるはずだ。それがリリスに襲われているんだ。止めるべきであろうか……。しかし、リリスは信頼してよい人物だ。どっちに味方すりゃいいのよ!
迷っていて視線を上げると、リリスが俺の眼の前に立っていた。
「あれくらいで死ぬ奴ではないわ!来い!」
「うわ!びっくりしたぁ!?」
「来るのじゃ!」
そしてリリスは、ヒョイ!と俺を片手で抱きかかえた。
「うわ!」
俺の体は、大人になっているのでそれ相応の体重があるはずだ、それを難なく持ち上げるリリスの腕力に驚いた。
リリスは俺を片脇に抱えると猛烈な速度で走り出した。
シュン!
まるで瞬間移動のように、かなり離れた距離に移動した。すさまじい腕力と脚力である。
俺はリリスから解放され、目の前に立つ。
「リリス、お前一体?女神様に逆らうなよ、神だぞ?何とんでもないことしてるんだ!?」
「逃げるんじゃ。ヤマト、あやつの言葉を信じるでない。あれは楽しむために人や下界の人間を弄ぶ悪神じゃ」
「え?悪神?」
「神にも色々いる。善良な神もいるがの……オステリアは純粋な武と美を求める神じゃ。そのためなら手段を選ばん!ワシにはそれが許せん!!」
「一体過去に何が…………」
オステリアの性格はリリスの言うとおりかも知れない。言っていること自体は凄く分かる気がする。しかし、リリスの激怒の仕方は尋常ではない。一体過去に何があったのだろうか。
「とにかく逃げろ!ワシが盾になる!お前だけはもう殺させない!」
「あ、待て!」
リリスは言うだけ言うと、また消えた。
見ると、はるか向こうでオステリアがいたあたりに移動して戻っている。すさまじい速度だ。リリスはもくもくと上がる土埃の中を睨んでいた。
すると…………、平然と立っている女神の姿が見えてきた。
「女神オステリア……」
信じられないことに、あれだけの落雷の中、まったくの無傷でオステリアは立っていた。眼を閉じて眠っているようにさえ見える。
「やはり効かぬか…………くそめが」
リリスは憎らし気にオステリアを睨む。
すると、オステリアは眼を開けた。その目は光り、怪しい色を含んでいた。俺が以前みた「破壊神モード」のオステリアの眼だ。すさまじい殺意を感じる。
「やってくれましたね……龍人めが!死ね!」
そして、オステリアは手を前方に出すとそこに銀色に輝く剣が握られていた。オステリアの身長くらいの長さはあろうかという長剣だ。
「ッ……シャナ王の剣か…………」
その剣をみてリリスは少しだけ怯んだ。
(シャナ王の剣?)
俺が疑問に思うのを他所に、オステリアが叫んだ。
「死ね!!龍人の長よ!!」
オステリアが膝を曲げたかと思うと、超高速でリリスに向かって走り出す。
ドン!
まるで弾丸のような速度でリリスに迫るオステリア。
しかし、リリスは動じることなく両手を前に掲げ叫んだ。
「【土の壁】(ソリッドウォール)!!」
ドン!!目の前に突如土が盛り上がり、みるみるうちに土の壁に仕上がった。高さ3m 厚さは1m以上はあるブ厚い壁だ。それをリリスは、一瞬で土の壁を眼の前に展開したのだ。
「ふん!面倒!!」
すると、オステリアは剣を横にひと振り。
ドシャー!
土の壁は一瞬で崩れさる。
(な、なんだ?!あの剣は?!すごい威力だぞ!)
しかし、壁の後ろにリリスはすでにいない。
「どこだ!?」
オステリアが左右に首を振りリリスを探すが、リリスの姿は見えない。
「ここじゃ」
そのときリリスはすでにオステリアの上空に移動していた。上空で両手を上にあげて滞空している。
(あれは!?今度は何の魔法だ?)
リリスの両手の先には、龍の形をした大きな炎が何匹もいた。
「【龍炎の雨】(ドラゴンフレイムレイン)!!」
すでに展開していた龍炎たちが、オステリアを襲う。
「く!!?」
オステリアは、避けるのは間に合わないと判断したのか。剣を自分の前に掲げて防ぐつもりのようだ。
肉薄する龍炎
ドン!!!ドガァン!!
爆発しながら、四方へ爆炎をまき散らす。その熱風が、遠く離れたここまで押し寄せてきた。
「く……す、すげぇ……リリスめちゃくちゃ強ぇ……」
俺はただ呆気に取られて見ているしかなかった。
神と龍人の激しい戦いが始まっていた。
リリスは魔法で攻撃と防御、オステリアは長剣を振るってリリスに襲いかかっていた。炎や落雷のオンパレードだ。すさまじい轟音が響きわたる。
どうも、リリスは雷系の魔法が得意に思える。魔法の種類が半端ない……。彼女はきっととてつもない魔法使いだったのだろう。それを防ぎながら攻撃を続けるオステリアには、余裕すら見える……。女神の力は底が知れない……。
超高速で動く二人は、俺の眼からはたまに消えて、違う場所に現れる。瞬間移動者の戦いにも見えた。
「す、すごい…………リリス。神と対等に戦ってる」
しかし、俺はリリスに言われたとおり逃げるべきか迷っていた。リリスを放って逃げてもいいのだろうか……
しかし、俺に出来ることなんて無い。あんなバケモノ達に付き合っていたら、即俺は死んでしまう。
(ここは逃げるべきだろう)
しかし、この地平線が続く空間で一体、どこに逃げればいいんだ???
俺は、キョロキョロみていたら、俺の前方100mくらいのところに、誰か人がいることに気がついた。
「あ、あの人は?聞いてみようか……すみませーん!?」
「?」
俺が駆け寄ると、その人物に俺は驚いた。金髪ロングの美女だった。腰は折れそうなくらい細く、胸がはちきれそうなくらい大きい超絶美女が立っていたのだ。
(す、すげー美人だ)
彼女は彼女で、俺の姿を見て驚いている。
「あ、あのー?」
「すごい音がするから来てみたら……あら?人間?なんでこんなところに?」
「あ、これはですね(しまった!ここは神の世界なんだった、だったらこの人は敵?いや……神なんだから味方か?)」
俺が迷っていると、その美神は俺のことを見てうっとりとしている。
「超イケメンじゃない!ジュル……人ではないわね、龍人か……珍しいわぁ」
「じゅる……って……」
なんだか、とんでもない人(神?)に声をかけてしまったようだ。




