第24話 リリス再び
(え!?な、なんだ!?)
周囲を見渡すが、誰もいない……今の声は?!
(ワシじゃよ、ワシ。呼んでおいて驚くでないわ)
再び声が脳に響く。
(え!?俺の考えていることが伝わってる?その声は……リリス!?)
(ようやくじゃな。声をかけるのがキーなんじゃが、長かったぞ)
(どこよ?どこにいるんだ?)
俺は部屋中をハイハイで探してみたが、どこにもいない。
(どこを探しておる?……ヌシの右手の中じゃよ)
俺は驚いたが、「まさかぁ」という風に思った。そんなバカなことがあるものか……リリスは俺のことをからかっているのか?
(右手のなか?勝手に入るなよ。ノックはしたのか?)
(ふははは!面白い)
なんか、ウケた……
(訳わからないこと言うなよ、どこにいるんだよ!いいから出てこい)
俺が脳の中で怒り気味に言うと……
「ホレ、視覚化したから見えるはずじゃが?」
そうして、俺の目の前に現れたのは女神のように美しいピンク髪の女性だった。
(び、びっくりした!!)
これは最後に会ったリリスに違いない。リリスが突然に目の前に現れた。
俺の口はまだ、たどたどしいので先ほどまでのようにテレパシーで伝えることにした。どういう原理か分からないけれど、リリスとはテレパシーで意思疎通ができる。
(ど、どこから出てきたんだ?!いったい!!脅かすなよ)
「じゃから、オヌシの手の甲からじゃよ。察しの悪い奴じゃな……」
リリスは腰に手を当てて呆れ気味にそう言った。リリスの口が動き、それはテレパシーではなく実際の声として聞こえた…………
(おい。テレパシーじゃないのかよ。今度は……)
「ん?視覚化すると実現している状態に近いのじゃ、テレパシーもできるが……」
(俺はテレパシーで、俺の声帯はまだ成長していないから……)
「それで構わん、信じられん知能指数じゃが。オヌシはまだ赤子じゃったよな」
(おまえ、本当に俺の手に中に入っていたのか?どういうことだ?)
よくよくリリスを見てみる、本当に美しい……まるで女神のようだ。しかし、喋りかたが「~じゃ」という語尾で、ロリババア的なポジションになりつつある。
「うむ。ワシはオヌシに自分の魂を捧げた。それは覚えておるかな?」
(あの、最後のときか……お前が龍になって俺の中に入ってきたよな?)
「ああ、ワシのすべての力をオヌシにやろうと思っての……それでワシは自分の魂が消滅と引換えに、オヌシに全能力を授けたんじゃ」
(俺は、お前が俺の体を乗っ取ろうと狙っていたのだと思っていたんだが……、そうじゃないんだな?)
「乗っ取る?」
(そう、お前は現世に未練があって、それで俺の体に乗り移ろうとしているって、ある人に言われたんだ)
「……それは誰に言われたんじゃ。ワシはそのようなことを考えたこともないぞ」
俺は女神のことを言おうと思ったが、女神とはそれを言わない約束なので慎重になった。
(ある人だよ…………)
「ふむ…………まだ、ワシのことを疑っているようじゃの。どういう訳か、ワシの現在の状態は、オヌシの魂と同化しておる。オヌシとワシは、一心同体なのじゃ、何も隠しごとをすることはないぞ?」
(そういわれてもな…………)
「…………感じよ。それが本当だとオヌシの魂に訊け。理解できるはずじゃ」
(魂に訊く?)
「そうじゃ。眼を閉じよ。そして内なる魂に訊くのじゃ」
……俺はリリスの言うとおりにするべきか迷った。彼女は信用して大丈夫なのだろうか?しかし、俺はなぜかリリスの言うことに従うべきだと思った。なぜかは判らないが…………。
俺は眼を閉じ、そして言われたとおりにしてみた。すると、「それ」はすぐに感じられた。自分の中に何か別の「何か」が存在していることを感じたのだ。
(こ、これは……!?)
「それがワシじゃ。それに意識を向けてみよ」
俺は眼を閉じたまま、先ほど感じた「何か」に意識を集中しようとする。
(か、感じる……これは……間違いなくリリスだ!俺の中にリリスがいることを感じる!お前は俺の一部になったのか!?)
「そうじゃ、どういうことか分からぬが、ワシはオヌシの魂と同化しておる」
なんてことだ…………俺とリリスの魂が同化している。俺はその事実に驚いた。
(どうしてこんなことに……)
「ワシにもそれは判らぬ」
(そうか…………)
理由はどうあれ、リリスは信用していい。俺はそれを強烈に感じていた。これは理屈じゃない。そう感じるんだ……。
「それで?先ほど申していた、オヌシの体を狙っているといった輩は誰なんじゃ」
(すまん…………それは言えないんだ)
「どうしてじゃ?この部屋にはワシとオヌシしかおらぬではないか?」
(その人は、人ではないので今こうして会話していることも聞いているかも知れない…………)
「なんと…………そこまでの人物なのか」
(そうなんだ。リリス。お前のことは信用しているが、理由があって言えないんだ)
「ふむ…………なるほど。しかし大丈夫じゃと思うがのぉ……この会話を聞ける存在など、いないに等しかろう」
そうなのか…………話しても大丈夫なのか? 俺は「迷って」しまった。それ自体が問題であった。俺は女神の力を見誤っていた。
すぐに、俺の頭の中に声が響く。
「神崎さーーん」
(…………!この声はオステリアの声!!)
俺が変な反応をするので、リリスが心配そうな顔をした。
「ど、どうしたのじゃ?ヤマトよ」
(こ。声が…………奴がくる)
「声!?奴? どういうことじゃ!?」
どうやら、この声はリリスには聞こえていないようだ。俺にだけ聞こえる声……。俺のことを「神崎」と呼ぶ人物など一人しかいない。
「神崎さーーん」
もう一度、脳に話しかけてきてる。どこ!?どこにいる?オステリア!?
「落ち着くのじゃ!ヤマト!」
「殺される…………」そう思った瞬間、俺は視界がブラックアウトした。
バタ!
「ヤマト!?」
俺は気を失って倒れた。
気がついたとき、俺は白いどこまでも地平線が続く空間にいた。
「うーん……ここは!?」
キョロキョロ
俺は自分の体を見てみる。
「あれ?いつもの俺の体じゃない?!赤ん坊じゃない!?」
いつも見ている俺の視点とも違った。とても背が高くなっているようだ。
「どういうことだ……、大人になっているのか?」
「神崎さん、神崎さん!」
振り返ると、そこにいたのは美と武の女神オステリアが立っていた。
「女神様…………ここは!?」
「ここは神界の僻地です。魂だけ無理やり召喚させていただきました」
「なんか俺の体が大人になっているんですけど……」
「ああ、魂だけ召喚したので、精神年齢に合った形になっているんでしょう。とても私に似ていますね……やはり血を分けただけはあり、美しく成長しています」
そうなの?顔は見えないけど、自分の体を見てみるとスタイルは凄い良いように見える。
「それはそうと……」
柔和な表情だったオステリア。それが突然、真剣な表情に変わり、俺へ殺意を込めた言葉を投げかけた。
「約束破ろうとしました?消しますよ?」
ニコリと殺害予告をするオステリア。
「ちょ!!まってくれ!!まだ破っていない!話していないぞ!?」
「少しお仕置きが必要ですね」
「え!?ちょっと!!」
オステリアが、手に何やら光を集めはじめた。
(やばい!!消される!?)
そう思った瞬間、オステリアが何かに気がつく。
「うん?誰か後ろに隠れていますね?その方は?」
うん、後ろ?
振り返るとリリスが立っていた。しかも、先ほど会っていた状態よりも若い!一瞬誰だかわからなかったが、間違いなくリリスだ。神界にくると、若返るのか!?15歳か16歳に見える。とにかく若くて綺麗だ。
外見は、さらに幻想的だ。長髪のピンク髪はキラキラ輝いていて、目は濡れたように艶やかだ。パッと見、美しい女神のようだ。オステリアと見比べても遜色がない。リリスは鬼の形相で、オステリアを睨みつけている。
「リリス?」
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