第22話 全属性
俺はハイハイモードなので、四つん這い状態。エンジストーンの真下で、マリーシアの顏を下から、ご機嫌を伺うかのように仰ぎ見る。
「あのー……」て感じで。
マリーシアは、アゴを前に出した。
クイ……
(早くやれって言ってるよぉ、マリーシア笑われたのキレてるよ)
俺は後ろをまた振り返る、リカオンに助けを求めてみた。
「!!」
リカオンは、両手で頭上に円を描いてOKサインを出していた。
(ていうか、俺は魔力の出し方しらねーし。無理言うなよ!)
まあ、言われなくても出来るだけを力いっぱいやるしかない。ちゃんと全力でやらないと、本当の適性が分からないと思うしな。俺の本来の目的は、魔力属性を知ることだ。半年後に来る魔人に備える必要があるのだ。
俺はさっそく、両掌をエンジストーンに当てた。たしか魔力を通すんだったよな……しかし俺はまだやり方を知らない。
「ヤマトちゃん、体の中にある魔力を感じるのよ。あなたなら出来るはず」
マリーシアがうしろアドバイスをくれた。
「うん」
俺はお礼を言うと集中した。
(体の中の魔力……魔力……)
集中しても感じられないので、軽く焦りを感じるが。
(あわてない……あわてない、やれるはずだ!)
俺が手の平を当てたまま一向にエンジストーンが反応を示さないので、興味を持ってみていたギャラリー達が騒ぎだす。
「おいおい……やっぱり茶番かよ」
「さっさと次に順番変われー」
「まったく……たまに変な親がくるのよね。迷惑よね」
神父も、顔をしかめて止めようとしているようだ。
「Aランク冒険者だから、言うとおりさせたのです。そろそろ降りてください。このことはギルドへ報告させていただきますよ」
すると、マリーシアが慌てる。
「もうちょっと、もう少しだけ待ってください!」
「そんな時間はないのです。ほら、子供を引き下がらせなさい」
「待って、本当に!」
「ほら、見なさい。エンジストーンが何もはんの……え?」
神父の言葉が途中で切れたので、不審に思ったマリーシア。すると、リカオンが叫ぶ。
「マリーシア!エンジストーンが!」
マリーシアが、エンジストーンとヤマトのほうを再び振り向くと、そこには……。
エンジストーンの内部にロウソクほどの光りが灯り、その光が色を帯びていた。色は、赤青色茶色と次々に色が変わっていく。徐々のそのスピードは上がり、そのうち狂った壊れた信号機のような慌ただしさに変わった。
(よし……魔力って奴の通しかたは判ったぞ。あらら、こんな感じなの?ん?これって普通のことなの?)
俺は魔力を通すコツを掴み、ご満悦だった。小さいロウソクみたいのが灯っているから成功だな!ちょっと色が変化してるけど。うん!これは成功だ!
ご満悦に、両手を当てている赤子。
赤子にエンジストーンが反応を示すはずがないのだ。しかし、ガッツリ反応しているエンジストーン……。
その様をみて、司祭が驚愕の表情で声を出す。
「なぁ!?」
やがて、エンジストーンの色変化が激しくなっていく。
パ……パ……パ……
司祭が若干叫び気味に声を上げる。
「な、なんだ。こんな色の変化は!?見たことないぞ!」
(そ、そうなの?)
「そもそも、こんな赤子に魔力が備わっているなど……聞いたことが……」
ギャラリー達も驚いた声を上げている。
「おい!あれ!」
「何だ!?あれは!」
「あの赤子……魔力があんのかよ!」
「人……なのか?」
「1種類か2種類光るのが普通なのに、あれは変だぞ!」
「綺麗……」
交互に光るエンジストーンは、徐々に光量を上げてきた。
ロウソクくらいの大きさだったが、やがて、ストーン全体が激しく光り始めたのだ。
パァ―!!ピカァ!!!
「うわ!」
「キャア!?」
「まぶし!!」
神殿中に光が満ちあふれ、そのあまりの輝きから神殿にいた皆が眼を覆った。
まるで強力なフラッシュのようだ。
かくいう俺もまぶしくて顔を伏せている。ぶっちゃけ手を離したい……しかし、今離すと検査ができなくなると思い、必死に手を当て続けた。
(魔力の出力はこれくらいでいいのかな?ぶっちゃけ、まだ全然力を込めてないけど……まぶしいからこれくらいでいいかな)
光の暴力はしばらく続いたが、徐々に収束してきた。最後は淡く光る状態で、輝き自体は安定してきた。
「な……なな……」
驚きのあまり口を開ける司祭。
「神レベルの潜在魔力?そんなバカなありえない」
そしてエンジストーンが色を変え、まだらな色になってきた。まるで、いろいろな絵の具を水の中で溶かしているかのようだ。
そして、それも徐々に安定してきた。出来上がった色は、虹のような色合い。
とても美しいものに仕上がった。さまざまな色が混じっているエンジストーン……全体的に銀色の輝きを見せて、赤 金 青 茶 黒 白 紫とグラデーションをかけて、素晴らしい芸術作品のエンジストーンとなった。
「ここここ……これは!?」
ペタン……
司祭は、腰を抜かし座り込んだ。かなり驚いているようだ。周囲で笑っていたギャラリーも固まっている。ザワザワと、あの色は何だと騒ぎはじめていた。もはや、何色というよりグラデーションで表現されているエンジストーン。
これは何属性なんだろう?だれか教えてくれ。
後ろをみると、両親ともに驚愕の表情だ。ギャラリーは発狂しかかっている。
司祭は、動揺しまくっていて発音がおかしい。
「そそそそそんなことが、あああああるわけが。しししかし」
だめだ、コイツ……
「ママ?」
「ヤマトちゃん、これは……たぶんだけど……」
「?」
「全属性よ……」
……へ??……
ぜ、全属性??
マリーシアは喜びに打ち震えているかのように見える。笑顔と恐怖が入り混じった表情にも見えた。リカオンのほうも見てみると、同様の表情だ。
マリーシアが全属性と叫んだことで、神殿内の声が止んだ。
……シン……
「…………」
「…………」
神殿内に静寂が流れる…………
逆に、俺はどーしていいのか分からない。
(も、もう帰っていいのかな?司祭さん、腰抜かしてるけど)
ジーっと司祭を見つめながら、そんなことを考えていると。
司祭は、はっと我に返り立ち上がる。
「……名前を聞いていませんでしたな」
(そういえば名前を名乗っていない……)
「司祭様?うちの子の能力は全属性ってことなのでしょうか」
マリーシアは、その質問に答えず質問で返した。あまりに失礼な対応だが、それに気が付くものはいなかった。
「信じられないことに、そうだと思います。このようなこと私も初めてなので、いえ……先ほどは疑って申し訳ありませんでした」
どうにか立ち上がり、頭を深く下げる司祭。
「いえいえ、いいんです。それでうちの子の魔力は?すさまじい発光でしたが」
「はい、このエンジストーンは「潜在能力」を映しだすものです、いま現在どの程度魔力があるのかはわかりません。しかし、この子は神レベルまでの魔力を持つ可能性があると、このエンジストーンは言っております」
「神レベルまで……」
そういうと、司祭は熱を帯びた眼でマリーシアに宣言した。
「とりあえず!王都の教会本部に来てもらいますぞ。この子は神の化身だ。きっとそうだ!」
ワァァ!!
と神殿内のギャラリーは叫び出す。
「え?」
マリーシアと俺は顔を見合わせる。
「本部へ?」
すると、司祭はマリーシアへ熱のこもった目を向けた。
「ええ!ええ!王国へ知られる前に、教会で保護してもらいます。国王に渡してなるものですか。ささ!奥へ部屋があります、そこでもう一度さきほどのギルドカードを」
「……いえ、お断りします」
そのマリーシアの反応に、司祭ははじめ何を言っているのか判らない様子で、聞き返した。
「は?今……なんと?」
「ですから。ヤマトはうちの子です。教会本部になんて連れていくつもりがありません」
「な、何を言っているのですか!お母さん!この子は教会へ渡すべきです。そう!それは神の思し召しなのです!」
「…………」
「…………」
無言のマリーシアと、リカオン。
すでにマリーシアは、俺のことを腕に抱えている。
そこまで聞いていた俺は、マリーシアの胸の中で焦りを感じていた。
(え?本部?渡す?どういうこと?それはヤバいぞ……)
マリーシアは、リカオンの目を見つめると。二人は頷き合った。
「…………リカオン!」
「了解!」
「え?」
俺の両親をナメていた……この両親はこのような事態も想定していたに違いない。マリーシアが声をかけると、リカオンは人間とは思えない速度で、マリーシアから俺を受け取る。
「パ、パパ?」
「大丈夫だ、ほら!」
バ!
なんと、リカオンは祭壇から飛び降りてジャンプしたのだ。
ドン!!
床に着地すると脱兎の如く逃げ出した。俺はリカオンの胸に抱かれたまま、神殿の入り口にむかっていく。
「え?」
その様子に呆気に取られていた司祭が、慌て出す。
「に、逃げた!?神殿兵!捕らえろ!!」
(神殿兵?)
俺がリカオンの肩ごしに奥を見ると、奥から槍をもった神殿内の兵が出てくる。
(やばい!本格的にやばそうだぞ……)
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