第21話 神殿で笑われました
バンキン村。あっさりと入ることができた。ちなみに大きな都市だと厳格な審査などがあるが、ここは入口に二人見張りがついているだけだ。別に何も言われることなく入れた。見た目が余程怪しくないとチェックされることはないらしい。
要は、魔物とかの襲来に備えているだけで、人間であればほとんど入れるらしい。セキュリティが甘いのは村だけで、都なんかは結構厳しいらしいけど。
村に入れたのはいいが、結構俺は疲れていた。まだ赤ちゃんだし、外の世界に出たのも初めてだ。思ったよりも体力を消耗してしまったようだ。
「あらあら、元気ないわねヤマトちゃん?どーしたのかしら」
と本当に心配そうにするマリーシア。
「もう夕刻だし、今日はどこか宿屋に泊まるとするか」
リカオンがそう提案する。
(おいおい、ここまで来て休めるか、このまま行こうぜ!)
「ぼくいきたい」と、お願いしてみる。
「お?偉いぞ、ヤマト。ガッツがあるな。」
「ヤマトちゃん!偉いわ!でも本当に大丈夫?」
マリーシアとリカオンは、俺のあたまをグリグリなでる。
「うん、だいじょうぶ。いきたい」
その俺の言葉で決定した。俺たち家族は、このまま神殿に直行することになった。神殿に向かう途中、村の中をキョロキョロ確認してみたけど、なんだか村っていうか、工場町って感じ。空気も良くない……。そこかしこに、作業服を着た村人が元気に歩いている。顔とかススだらけだし。労働者の村ってのは本当なんだな……。
飲み屋とか、バーとかも結構ある。労働者用の娯楽なのだろう。そんな村見学をしながら、神殿に到着。
これが神殿か……って……
……で……でかい…………
おおーい?村に比べてバランス悪いだろ!!
これ、おかしいよね!? 絶対おかしいよ!
俺が見た神殿は、5階建ての大型ビルディングのような大きさであった、外壁は堅牢な城のように城壁で囲われている。入り口は、オークでも入るのかってくらいデカイ。とにかくデカい。
神殿って儲かっているのかな…………ちょっとビックリだぜ。
俺が驚いていると、マリーシアが説明してくれた。
「ステルア神は、王国の守護神様。ステルア教は王国民であれば絶対に一度は訪れるものよ。神殿はね、王都からの支給が手厚いの。それに周辺の富豪たちが寄付をするから結構裕福なのよ」
驚愕の事実……!なんと、あのオステリアを崇める神殿だったことが判明。しかも国教的なポジションだとか……。あのオステリアが? まじか……。
しかし、ここまで大きくする必要はないような気がするが……。
両親に抱っこされたまま入口に入ると、礼拝堂への足を進める。その礼拝堂へ両親とともに入った瞬間、それが起きた。
ピカァ!!
神殿の内壁や、銅像や絵画が光りはじめたのだ。
「な、なんだ!?どうしたことだ!?」
中にいる礼拝堂の人達と、神父たちがザワめく。
しかし、光は一瞬ですぐに収まった。
ザワザワ……ザワザワ…………
ザワめく周囲。 うちの両親も驚いていた。
「な、何かしら……いまの」
「私たちが礼拝堂に入った途端に光ったような……」
驚いたのは俺のほうだ。びっくりしたぞ。そういうギミックでもあるのかと思ったが、周囲の反応をみるとそういう訳でもないらしい。
ザワめきも暫くすると収まったので、両親は気を取り直して、一際大きな石像がある祭壇のほうへと足を進めた。
祭壇には司祭がいて、次々にくる子供を連れた親への応対をしていた。どうやら、エンジストーンを使って魔力適性試験をしているようだ。
並ぶほかなく司祭がいる祭壇までの長い行列に入った。見れば、親に連れられている子供達が多い。年齢は10歳~12歳くらいの子供ばかりだ。皆 適性検査をしに来ているのだろう。
待つこと30分、長い行列のわりに早く順番がきた。司祭は、意外にも若い男性だった。
ちなみに個室ではなく、祭壇に並んでいるので会話は周りに筒抜けだ。非常にオープンだね。プライバシーとか、そういう概念がないのかもね……
司祭は、ニコやかにリカオン達に語りかける。
「お待たせいたしました。本日はどうしました?治療ですか?」
「いえ、魔力適性検査に参りました。司祭様」
「ほう、ではどの子供を審査いたしますか」
「あの、この子です」
そういうと、マリーシアの胸に抱かれている俺を指さした。
俺は、とりあえず営業スマイルをしてみる。
ニヤーーーーー
い、いかん……営業スマイルなんて苦手だから、ニヤってしてしまう。
「……………………」
「…………あの?司祭様?」
「…………プ…………」
ドワハハハハ!!!!
暫くの沈黙のあと、神殿内は大爆笑につつまれた。
「ははは!これはお腹が痛い。ありがとうございます」
「ありがとうございます?司祭様?」
「面白いジョークですね。私、こんなに笑ったの初めてです」
神殿内は、笑う声で満たされている。なんだか、むちゃくちゃ笑われて、恥ずかしくなってきたぞ。もう帰りたい…………
「あの、笑われるのは分かるのですが、本当なのです」
「え?」
司祭は、そこでお前本気か!?って顔をした。周囲の笑い声も収束していく。
「ですから。本気でこの子の適性検査をして欲しいのです!本気で言ってます」
おお……リカオン……お前すげーーな、この雰囲気の中、立派だよ。お前たしか20歳だったよな。俺の前世35歳だったけど、ここまでシッカリしていなかったぞ。
「お父さん、我が子の才能を大きくみてしまうのは良くあることです。この子は見たところ、赤子ではないのですか?ご冗談が過ぎますぞ」
次第に、司祭の声が固くなっていく。少し怒ってる?
「いえ……本当なのです。司祭様。検査をお願いします」
「そんな時間はありません。さぁ、出口はそこですよ」
さっさと帰れと言っているようだ。そんな非常識なことなのか? この対応には腹が立つが、周囲の反応を見るとウチが悪いような気になってくる。
そこでマリーシアが口をはさんだ。
「司祭様、本当です。信じてください」
「しかし…………」
「いいでしょう、司祭様。もし勘違いならA冒険者ランクの、このカードをお返しいたしますわ」
すると、マリーシアが冒険者用の証明カードなのだろうか?一枚のカードを取り出した。ゴールドに輝くカードだ。それを見せられた司祭は驚く。続いてリカオンもカードを取り出して司祭に見せる。彼のカードもゴールドだ。
「Aランク!…………」
すると、司祭は顎に手をおいて考えはじめた
「Aランク冒険者が嘘をつくとは思えません……でも、こんな……、よろしい!わかりました。とても信じられませんが検査をしましょう」
「ありがとうございます」
「でも……もし勘違いの場合はギルドに報告させていただきますよ?いいですか?こういった茶番は他で行われては迷惑です」
「神に誓いましょう、なぁ?マリーシア」
「誓いますわ」
「わかりました……ではこちらのエンジストーンの前へ…………」
俺とマリーシアは、エンジストーンと呼ばれる、巨大な石の前へ……
そこで、俺はマリーシアに床におろされた。
俺は、まだ立てないので、四つん這いのハイハイスタイルでエンジストーンを見上げる。石というから大理石みたいのを想像していたが、これは……金? 巨大な金の塊のようにみえる、それを球体にしたものだ。金の球体……金のた…………いや、言うまい……
「それでは、その子の両手をエンジストーンにかざしてください。まったく時間の無駄だとは思いますがね」
神父は捨てセリフを残して。一歩下がった。
マリーシアは、四つん這いの俺のところまで口元を寄せて、しずかに俺の目を見ながら言った。
「ヤマトちゃん。こいつら腹立つから、全力出してしまいなさい」
え、えぇ?……そんなん平気なの?ママん……。
ふと振り返ると、リカオンも同意のジェスチャーをしていた。
(いや!お前ら夫婦おかしいんかい!?さっきまでと言っていること違うし!)
かくして、俺の魔力検査がはじまった。




