第18話 神龍大戦 ※歴史資料
今はもう絶滅した、龍人族の最後の長の話。
名前はリリス・フォン・ドラガラム。
隻眼龍と言われている。
今から3500年前に生まれた龍人族の女性である。
【龍暦元年】
このリリスが生まれた年を龍人族の一つの節目として、龍暦元年と呼ぶ。
リリスは龍人族のなかでも、幼いときから天才龍だった。魔力、知力、戦闘能力、そして何より仲間を思いやる優しさ。彼女はリーダーとしての必要な資質を持っていた。
【龍暦150年】
150年の年齢を超えたあたりから、当時の長よりも強い力を持つようになり、龍暦150年、リリスは龍族初の500歳を下回る最若年の長老となった。
【龍暦500年】
リリスは、とりわけ知能が高く、魂への研究は非常に高レベルであった。実際、それまで誰もなし得なかった発見をいくつも達成しており、学者としての気質も兼ね備えていた。神界の存在をいち早く発見し、次元転換機を発明し、神界へ行けるようにしたことは神をも驚かせた。
リリスは真実を知りたかっただけであり、純粋な科学者の気質を持っていたのだ。しかし、神々はリリスに警戒の色を濃くした。
神への領域に踏み込み始めたリリス、ならびに龍人族の存在を危険視する意見が強くなったのだ。リリスは平和主義であり、神に目をつけられていたことに種族の存続の危機を感じてはいたが、その温度が高いことを悟り責任を感じた。自らの発明が神の怒りを買ったことに、種族の危険と責任も感じていたのだ。
神々が龍人族を滅ぼそうとする決意を固めていたときだった。
その意向を知ったリリスは、とある行動に出る。
【龍暦600年】
神々とリリスの最終交渉の場所で、リリスは自らの眼をくり抜いたのだ。
龍人族が神に逆らわない証明として、自らの右目を神に捧げたのだ。
驚く神々の使者は、リリスの言葉に嘘がないことを悟る。神々はその右目を受けとり、龍人族と神々の不可侵契約を結ぶ。その誓いの象徴として、リリスの眼玉として大切に保管した。
【龍暦1350年】
不可侵契約から750年もの間、平和が続いていた。この龍暦1350年に龍人族最強の男、ヤマト・フォン・カリアースが若干50歳にして軍に入隊。軍力が大幅に増強される。これにより龍人族は盤石に見えた。しかし、神界にあるリリスの眼玉が新たな悲劇を生む。長い平和の間、神々は、その眼玉が徐々に神界の力を蓄えていることに気がつかなかった。やがて、眼玉は意識を持ち始め自我が芽生えていたのだ。しかし、眼玉は狡猾で外見上、何の変哲もない眼玉であり、神々はまったく気がついていなかった。
それにいち早く気がついたのはリリスであった。
【龍暦1400年】
ある日、神界で神々と会議を開いている際に、自らの眼玉を見学する機会があったのだ。その際に、リリスは眼玉の異変に気がついた。
自らの眼が、神界において害をなす可能性を危惧したリリスは神々に告げた。
「神界に保存してある眼玉を返還せよ」
神々へ幾度となく警句を促すリリスだが、神々は受け入れない。
「和平の象徴である眼玉を返還とは、宣戦布告か」
と、神々は怒り狂い。そして、再度、龍人族を滅ぼそうと決意した。
「悪龍人リリス、ならびに龍人族は滅びよ」
神々は龍人族との戦争を決意し、ウチラース界つまり地上界へ神々は進んだ。
誤解であると何度も告げたが、すでに戦争がはじまる。その流れは変えられないところまで来ていた。
「神龍大戦」の勃発である。
リリスと龍人族は、一族の存亡をかけて神界へ戦いを挑む。優れた龍人族で総力をあげて、神々と戦争を開始したのだった。
龍人族は、下界では敵なしであったが、神々に敵うはずがない。その強さに圧倒されていた。特に、戦いの神達は嬉々として戦争を楽しんだ。美と武の神オステリアは、その手で何百もの龍人達を殺した。
次々に優秀な龍人が討たれていく。
【龍暦1430年】
戦闘能力ではリリスを凌ぐ実力者、龍人族軍最高司令官ヤマト・フォン・カリアースが討たれたことが決定打となった。
ヤマト・フォン・カリアースは、異常であった。莫大な魔法力と戦闘力は龍人族では群を抜き、あろうことか神とも対等に戦えていた。いや、むしろ神をも圧倒していたが、奸計にはまったのだ。
もともと孤児であったヤマトは、子供達への愛情は人一倍であった。その子供達を人質に取られたのだ。
自らの戦闘力を活かし、子供たちの居場所をつきとめ。なんとか取り返そうとするが、神々は深く進攻してきたヤマトを包囲することに成功する。
子供達を盾にされたヤマトは、必死に抵抗するが、人質がいるため実力を発揮できない。ヤマトは両手、両足を切り取られ、最後は首のみになっても子供達を守るため戦った。
なかなかヤマトを打ち取れない神々に、絶対神ゼナースは怒り狂う。
「首一つに何を手間取っている!」
自ら戦線に向かうが、ヤマトの姿にゼナース自身も驚いた。
首一つになったヤマトは、禁忌魔法を連発して、多くの神々相手に一歩も引かなかったのだ。ゼナースを尻込みさせるほどだった。しかし、徐々に力を失い、壮絶な大爆発と共にヤマトは死んだ。龍人族の寿命は1000年ほどであるが、享年130歳という若さであった。
ヤマトが多くの神々を道づれにした事実をリリスが知ったとき、驚きはしなかった。むしろ、ヤマトが普通に戦っていれば死ぬはずもない。奸計にはまったのだろうと、怒り悲しんだ。
カリアースに次ぐ実力者は。もはやリリス一人であった。しかし、リリスはヤマトの力を頼りにしていたため、龍人族の滅亡を予期せざるを得なかった。
ヤマト・フォン・カリアースが居れば何とでもなる。…そう思っていたところは否定できない。
【龍暦1450年】
戦況が龍人に圧倒的に不利に傾いていたころ、リリスの恐れは的中し、悪いことが神界で起きていた。眼玉が変化し始め、自我を持ち、とうとう手足を持ち、人の形を作りだしたのだ。そして神界で暴れはじめた。
魔王の誕生である。
もはや神々は地上界で戦争している場合ではない、神々は地上界から一斉に引いた。自らの城が危ういと判断したのだ。
ダリア界(神界)に戻った神々は、魔王の強さに驚く。ゼナース神であっても、舌を巻く強さだったのだ。しかも、ダリア界にいる魔力を吸い取りはじめ、さらに強くなっていく始末だった。
神々は、この魔王をダリア界においておくのは危険と判断し、最後まで悩んだ末に転移魔法を使い。魔王を地上界に解き放った。
そして、魔王は魔族を取り込み。部下として一大勢力を作った。そして魔王は組織だって下界のものを殺しはじめた。リリスは、至急に地上界のすべての種族と協定契約を結び、龍人族、人族、エルフ、ドワーフと連合軍を結成。かくして魔王軍との戦争を開始した。
【魔王戦争】の勃発である。
地上界の人々は魔王との戦うため、全ての種族が手を結んだ。神々の中でも、魔王戦争に手を貸すべきだという意見があったが、ここにきて「地上界不介入主義」を掲げはじめた。先日ほどまで、龍人と戦争をしていたのにである。
この戦争のなか、魔王と唯一力が対抗できる龍人族は次々に倒れていく。神々との戦争ですでに龍人族の力は弱まっていたのだ。
他の種族を盾にすることなく自ら前線で戦っていた龍人族は、みるみるうちに数が減っていく。
最終的には・・・・・・・・・・
リリス、リリスの養子リーラン、ヤマトの弟子マクロン
この3人のみという絶望的な状況に陥った。リリスは生涯独身を貫いていたたため、この養子のみが家族であった。ヤマトの弟子であるマクロンも強い力を持っていたが、ヤマトほどではなかった。
繰り返すが、神との戦争で、ヤマトを失っていたのは痛恨であった。ヤマトがいれば魔王とも良い戦いができたはずであった。
リリスとマクロンは、地形が変わるほどの戦いのなか、魔王と最後の戦いを繰り広げる。
そして、リリスの次の実力(才能的にはリリスを凌いでいた)を保持する、マクロンも殺された。リリスはリーランと二人きりになってしまった
しかし、すでに長く生きたリリスは弱っていた。1000歳を超える老龍であったが、秘術により若々しいリリス。しかし、ここに来て年齢を数百年取ったかのようであった。徐々に追い込まれていくリリス、持前の知能の高さ、知略、強力な武器の製造などを駆使して、近い力をもつ龍族とエルフの力を借りて必死に戦う。ドワーフ、人族も必死に戦い、なんとか土俵際で耐えていた。
しかし、世界は滅亡間近であった。
【龍暦1500年】
そして、今からちょうど2000年前、戦争は終結を迎える。魔王に追い詰められ、
「もはや、これまで」と死を覚悟したリリスはリーランに別れを告げた。
自爆覚悟で魔王との最後の決戦をしようとしていたとき、神々が動きだした。
ここにきて傍観を決めこんでいた神々は、やっと動き出したのだ。
リリスの劣勢を知るや、神々は地上界が魔王に滅ぼされてしまい、次は自分たちと危惧したのだ。しかし、表立って地上界に攻め込むことはできない。
神々は地上界援助のため人族の女に強いスキルを授けた。そして、その戦争に間接的に援助することにした。
封印と結界の力を神レベルまで持つ人族
「レシータ巫女」である。
リリスはレシータ巫女と共同で戦うが、最終局面で死亡してしまう。
その後、残されたレシータ巫女は5大英雄と生き残りであるリーランとともに戦い。魔王を封印することに成功した。リーランは、そのとき戦死したと言われているが確認される資料などはない。伝説では、魔王はかつてあった龍人族の里にリーランと供に封印され、龍族が厳重に管理していると言われている。




