第170話 里?
俺が叫ぶと、横にいるリリスも天を見て驚く。リリスは唖然とした表情で、ふわふわと降りてくる少女を見つめている。
「あれは!?リー……いや、そんなはずは」
リリスは茫然としてる。
「え?知り合いか??」
「……」
リリスの返事がない……。冷静なリリスが、先ほどから動揺しっぱなしだ。
「な、なんで雲の隙間から女の子が降りてくるんだ?」
「……」
リリスはその少女を遠目に見つめたまま動かない。
「リリス……!お前さっきから変だぞ!しっかりしろよ」
「……う、うむ……すまぬ」
返事がないリリスを俺は無視することにした。
(くそ……なんで空から少女が……)
位置的にかなり遠いところに落ちていっているように見える。落下速度は驚くほど緩やかだ。あの少女のところまで、俺の足なら間に合いそうだ。
(と、とにかくあの少女の落下地点まで迎えにいこう!落下速度がかなりゆっくりだから間に合う!)
「リリス!あの少女のところまで行くぞ!腕に入っていろ!」
「う、うむ!」
シュン!!
リリスが腕に格納されたことを確認すると、俺は足に強化魔法をかける。
「むぅぅ!」
ズァ!
両足に十分な魔力が満たされたのを確認すると、俺は膝を曲げて勢いよく伸ばす。
「はぁ!」
ドン!!
土煙をたてて俺はロケットのように走り出す。目標は少女の落下地点だ。
ドン!ドン!
地面を蹴り上げるたびに、地面がえぐられていく。速度がどんどん上がっていく。
シュン!!!
周囲から見れば、まるで風のように見えたかも知れない、ステータスが上がり続けている俺は走る速度も尋常ではない。おそらく時速30キロは出ているだろうと思う。
ズア!!!
落下地点に入り、俺は急停止。
ブア……!!!
土煙を上げて、俺は完全に停止すると上空を確認した。
「はぁ!はぁ!よし!間に合ったぞ!きた……落ちてくる……」
少女がフワフワと落ちてくる。まるで綿毛が空を舞っているようだ。日本のアニメ映画を思い出す。
「うわわわわ……」
俺は両手を前に出してフワフワ落ちてくる少女を抱きとめた。
フワリ……
まるで綿毛のように軽かった。しかし、その刹那。
ズン!!
重力を突然帯びたのか、少女の重さが俺の両手にかかる。
「うわ!」
とっさに両腕に力を込めて抱きとめる。
「ふぅ……あっぶね……」
俺は両手をゆっくり地面におろし、少女を地面に寝かせる。
「この子はいったい……」
少女を観察してみると、髪の色は桃色、リリスと同じ色だ。目を閉じている顔は妖精のように美しかった。年齢は13か14くらいだろうか……。肌は透き通るように白く、見ているだけで吸い込まれそうだ。
「なんて美しい子だろう……」
俺は少女の美しさに驚き、そう呟いた。目元は長い睫毛が太陽の光で輝いており。眉目のラインは、まるで国から依頼を受けた名工が10年の時をかけて削り出したかのような美しさだ。細い顎は、全体バランスを失っておらず、すべてが完全な配置に美のバランスを保っていた。
「リリス!出てこい!」
シュン!
腕から出てくるリリス。顔は驚いていた。
「や、やはり……!リ、リーラン!」
「え!?」
俺はその単語を聞き、地面に寝ている少女を改めて見つめた。
(リーラン……あの?)
「な、なんということじゃ……リーラン……生きておったのか」
「さっきから、リーランって……まさか、2000年前に死んだはずの?」
リーランという少女は、目を瞑って眠っている。
「うむ……しかし、死んだと思ってばかりいたが生きておったとは……」
リリスはかなり動揺している。
「魔王が出てきたと同時に、この子も落ちてきたよな……。まるで一緒に封印されていたかのように……」
「!!むぅ」
リリスは、思い当たるのか顎に手において悩み始めた。
「ん……」
少女が口を開き、くぐもった声を出した。
「あ……リリス、気がついたようだぞ」
そして、リーランと思われる少女は、ゆっくりと目を開いた。俺は警戒されないように極力おちついた様子で言葉をかける。
「……君!大丈夫か!?」
俺を見た少女は、俺の顔を不思議そうに見つめた。そして腕をあげて俺の頬を撫でる。
「な……え?」
頬を撫でられた俺は動揺を隠しきれない。
「カ、カリアース……いいえ?違うわ……貴方は誰?」
そう呟いた少女の顔は驚きと期待が入り混じっていた表情だった。
これがリーランとの出会い。2000年以上の時を経た奇跡の再会だった。
「リーラン!ワシじゃ!わかるか!?」
リーランと呼ばれた女の子は、叫ぶリリスを見る。そして、ただでさえ星のように大きい目を開いて凝視した。
「は、母上?!」
「リーラン……!」
お互い見つめ合う二人。
リーランは、ペタペタとリリスの顔に触れる。目からは涙が零れている。
リリスも、表情は驚いているが、目からは涙があふれている。
俺はそれを見て、もらい泣きしそうになってしまった。
「母上……死んだとばかり」
「うむ。死んだ」
「え?」
訳がわからないといった様子のリーラン。
「リリス……これはどういう……」
「ワシにも判らん」
・
・
・
(ちょっと整理しよう)
・里の封印を解除した。
・魔王が雲から出てきた
・雲からついでにリーランが出てきた。
・リリスもリーランもお互い死んだと思っているから驚く。
「これどういうこと?」
「うむ……なんとなく理解してきたぞ……。おそらくリーランと魔王、そしてリューグーは封印されておったのじゃ。解除によって、それぞれ解放されたということじゃろう」
「なんで、一緒に封印されているんだよ?」
「それはリーランしか判らんじゃろう。ワシ……リーランより前に死んでしまったし」
リーランは,俺とリリスが話しているところに、申し訳なさそうに口を挟んだ。
「母上……あの。その点については私が説明できると思います」
「そうか。では、あとで説明しておくれ。リーラン」
「はい。もちろんです。母上……、それと私から質問よろしいでしょうか?」
「なんじゃ?」
「母上は、死んだということですが。現に母上は今そこに……」
「説明が難しいのじゃがのぅ。ワシ死んでおるのよ」
リリスは俺に説明してほしそうに、チラリと見た。たしかに、今のリリスの状態を説明するには相当難しい。
「お、俺にそんなこと振られても……」
「そうじゃな……里に入ってからじゃな。すべては」
俺はそれに待ったをかけた。
「魔王が復活したことを全世界に共有しないと!俺らだけ逃げるわけにはいかないだろ?」
すると、リリスが頷いた。
「もっともじゃ。しかし大丈夫じゃ。里には発信機能がある。まずは里へ入るのじゃ」
リーランも口をはさんだ。
「魔王の傷は深くまだ癒えていません。数十年は動けないでしょう。それよりも!魔王がまだ近くにいる可能性があります。母上、はやくリューグーへ」
リリスは焦りだした。
「そうじゃ!早く。早く里に入るのじゃ。リューグーに」
「リューグー?」
「安心するのじゃヤマト、あの門がすでにリューグーじゃ」
「え?え?……どういうこと?里だろ。里の名前がリューグーなのか?」
俺は謎ワードである「リューグー」の説明を求めた。
「まぁそうじゃ。里とリューグーは同義じゃよ」
「でもどこにも里なんてないぞ?」
「そりゃ、そうじゃ。リューグーは地中に埋まっておる」
「ち、地中に!?」
「そうじゃ。封印されておるから起動せんとイカン」
・
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再度 フリーズ中のヤマト
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「リリス、もしかしてだけど。里って、村みたいなものをイメージしていたんだけど?もしかして……」
「龍人の里とは、巨大空中戦艦のことじゃが?つまりリューグーじゃ」
俺は口をあんぐり。
「早く言え!」




