第17話 二匹のドラゴン(ヤマト視点)
//////ヤマト視点//////
シーーン………
(え?光らない?うそだろ?)
そういや、女神も俺に魔力があるとは断言していなかったな………まさか俺って魔力ないの? いや………ないとは限らない、まだ10歳になっていないからだ………でも、いま時点では魔力がないということに
「え?」
思わず口から、絶望の言葉が出てくる。両親の顏を見てみると、苦笑をしている。
(おいおい………ここで諦めたら、魔人に喰われるってこと?)
魔物のお食事とか、ぜったい嫌だ!それは何とか回避せねば!
俺はムキになって水晶に手を押し付ける.
(うおおおお!)
そんな俺の様子をみて、リカオンが俺に語りかける。顔は苦笑いしているままだ。
「ヤ、ヤマトー?」
呆れたような声を出しているが構うものか!俺は死ぬか生きるかなんだ!せっかく転生して、そのまま死ぬなんてそんなのあり得ない!なんでこの水晶は光らないんだよ………くそ!
(光れ!ひかれ!光れ!生き残るのに、魔法がいるんだ!)
ぐぬぬぬぬ!
しかし、水晶はいっこうに光らない。俺は絶望の黒い影が迫ってくるのを感じた。
(そんな………………)
俺は目を見開いたまま、絶望の帳がおりるのを感じていた。魔力がない………、ということは死が確定………。そんなそんな………。
そのとき、俺の脳内に声が響き渡る。
(オヌシ………オヌシよ)
(だ、だれだ!?)
(オヌシ、オヌシよ。ワシの声が聞こえるか?)
(リリス?!スキルを俺はいつの間に………)
俺はリリスを無視するスキルを解除した覚えはない、なのにリリスは俺に話しかけてきていた。
(無意識に解除しちゃったのか。悪いが、お前に構ってる時間はない!
引っ込んでいろ)
(なぜそこまで嫌われてしまったのか分からぬが、おぬし。魔法を使いたいのか?)
(うるせー!話しかけるな!)
(オヌシには伝えなければならぬことがある。ワシはオヌシのことを2000年以上前に知っておった)
………?
リリスは何を言っているんだ?俺のことを2000年前に?俺は35年前に地球で誕生した、どうしようもないサラリーマンだぞ?
(お前なにを………?いかん話しかけてはいけないんだった)
俺はとっさにリリスの言葉をシャットアウトしようとしたが、なぜかリリスの言葉に無視してはいけないニュアンスを感じ取っていた。とても大事なことをリリスは俺に伝えようとしている………、それだけは認識できていた。
(オヌシが龍人として誕生したことに疑問を持っていたのじゃ、そしてヤマト。オヌシの名前はヤマトというんじゃな?)
(………)
(これは偶然ではあるまい。そうか………オヌシがヤマトか)
(………)
(ワシの名前は、2000年前の龍人族の最後の長、リリスフォンドラガラム。ワシの魂をお前にやろう。さらばじゃ!最後の龍人の子よ!願わくば龍人族の復興を!そして、頼んだぞ!カリアースよ)
カリアース!?それってだれのことだ?と俺が疑問に思うと突如、周囲の光景がすべて真っ黒にブラックアウトした。
(マリーシア!?リカオン?!)
宇宙空間に放りだされたかのような錯覚を覚える。ここは? 女神と最初にあったときのような不思議な空間だった。真っ黒だが、不思議と不安感はない。
(ここはオヌシの精神世界。オヌシの中じゃ)
俺に話しかける声が聞こえたので、俺はその声の方向に顔を向ける。
(!?)
目の前に世にも綺麗な女性が現れた。髪はピンク色で長く、透き通るような肌は輝いている。顔の造形は、まるで画家が丹精を込めて描きだした女神のように美しい。
(だ、だれ?!)
俺はキョロキョロと周囲をみるが、うっすらと見えてきたシルエットは両親のものだ。しかし、そのシルエットは動きが止まっている。まるで時間が停止しているかのようだ。
(こ………これは!?)
すると、そのピンクヘアーの美しい女性は薄い唇を動かした。その仕草だけで、まるでそれが奇跡のように感じた。女神と直接話しているような………、そんな高揚感を覚えた。
彼女を俺のことを見つめ、驚きと喜び、そして懐かしさを感じているような表情を浮かべた。
「こうして………」
そして音楽のような、美しい声を発した。
「こうしてみると見える。感じるぞオヌシの魂はカリアースのものだ間違いない」
女性は美しいブルーアイズから涙を流しはじめた。その表情は嬉しさと、そして悲しさをミックスさせたような顔だ。俺はこの女性がリリスなのではないかと推測した。
「もしかしてリリス?………リリスなのか!? お前、女だったのか!?それにカリアースっていったい?」
ピカ!!
「うわ!まぶしい!?」
リリスと思わしき女性が光ったと思うと、俺は思わずを目を閉じる。すぐに目を開けると、眼の前には巨大な龍が浮かんでいた。
「な!?ド、ドラゴン!?………」
驚く、俺の眼のまえで龍は咆哮を上げた。
「グオオオオォォォン!!!」
「うわ!?」
大きく赤と銀が混じったような色で輝く、赤銀の龍。凛々しく、知性溢れる龍だった。俺は思わず逃げようかと思ったが、振り返ると二体の龍が現れていたことに気がついていなかった。
「うわ!?こっちにも龍が!?二体も!?」
白い龍と、黒い龍だ。その二体と、先ほど現れた赤銀の龍に俺は挟まれていた。
突然、三体の龍が目の前に現れ、おれはポカンと口を開けることしかできなかった。怖れというより、見とれているといったほうが正しいかも知れない。
「グオォォォ!!!」
「グロォォォ!!!」
「グァァァァ!!!」
三体の龍が咆哮をあげると、その声に俺は驚き、身動きが取れなくなった。そして、三体の龍が俺の体の中に入ってきた。
ズァァ!!!
「うわぁぁぁ!!!!」
俺は何か巨大なエネルギーが体内に入ってきて融合するのを感じ、そしてあまりの苦痛に耐えきれなくなり気を失った。
そこから先は記憶にない………気を失ったのか起きたときには、俺はベッドに戻っていた。
しばらく呆然としていた。
「さっきのは夢?じゃないよな………」
夢にしては、あまりにリアル過ぎた。先ほどまでいたリリスとあのドラゴン達の関係はいったい?
(リリスを呼んでみるか………)
俺はスキル解除をしてリリスを呼んでみた。
「リリス、リリス」
でも、リリスはどこにも居なかった。
「おい、リリス!話してやるから出てこい!」
俺はいくら呼んでもリリスは出てこなかった。俺は不思議と、リリスとはもう会えないんだと認識していた。
「さっきの夢で………リリスはお別れを言っていたな?」
俺は夢の中の出来事を思いだし、リリスの最後の姿と表情を思い浮かべた。彼女は、とても敵には思えなかった………。彼女は真剣に俺のことを見つめ、そして優しい表情をしていた。女神の言葉は正しかったのだろうか? とてもそうは思えない。
なんだかリリスが居なくなった事実を認識すると、少し寂しかった。
(もう………会えないのかな………)
ウザい奴だったけど、あの綺麗な女性。あれが、リリスだとすると、俺のイメージと違い過ぎる……てっきり、クソジジイだと思っていたら、女神チックな美女なんて詐欺だろう!?
考えてみれば、リリスは2000年も独りだったんだな………可哀想なことをした。
「ん?」
ふと右手をみると、右手の甲部分に大きな古代文字のような紋が刻まれていた。




