第100話 服飾店アルガル
城壁の中に入り、ブルーサファイア城下町に俺は立っている。俺の想像していた森の住人エルフの国とは違い、石造りの大きな建物が多く、大体が3階建て以上のビルディングだ。俺のイメージしていた木々と共生する自然を愛するエルフとは違っている。
ザワザワ……
人通りは非常に多く、にぎわっているのが伝わってくる。俺がいた首都の繁華街と大差ない人の多さだ。
当たり前の話だが、どちらを向いてもエルフばかりだ。たまに人族なども見かけるが、国際都市としても機能しているのだろう。
「へぇ人族も結構多いね……」
俺はそうルシナにつぶやくと、ルシナは笑った。
「あの人族に見える種族は、ドワーフだよ」
「え!?ドワーフ!?」
「うん。人族と大差ないように見えるよね。ボクもたまに間違えるんだ」
俺のイメージだと、低身長の種族ドワーフ。しかし、ルシナが告げたドワーフたちは、足は長いしスタイルは超いい。顔の造形ははっきりしていて、俺が地球にいたころだとすると西洋人っぽい顔立ちで美しい。
「じ、実際見てみないと分からないもんだな」
「ヤマトのイメージだと、ドワーフってどんななの?」
俺のイメージをルシナに伝えると、ルシナは嫌な顔をした。
「それ……ドワーフの人に言わないほうがいいよ……。怒ると思う」
「俺もそう思う……」
「残念ながら、エルフの国と、ドワーフの国はそれほど仲が良くないから数は少ないけどね。人族は……ほとんどエルフの国にいないかな。そんな感じだよ」
それはラノベの王道でもあった。ドワーフとエルフ。何故か仲がよくない。しかし、この世界でもそうなんだな……。
「龍族は?」
「龍族。ああ……彼らはプライドが高いからね。絶対に他国に来ることはないでしょ。エルフの国でも本当に見かけるのは年に2、3人だよ」
どうやら龍族さん達は、ちょっと面倒くさいらしい……。
「そうなんだ……ということは、このブルーサファイアにいるのはエルフとドワーフがほとんど?」
「うーん。たまに海底王国の人がくるけど、本当にたまにだね。うん。ほとんどエルフだけと思って構わないよ」
俺は改めてブルーサファイアを見回す。かなり発展しているようだ。
「完全に巨大都市だよな……すごいね」
俺が改めて感想を漏らすと、ルシナは胸を反らして誇らしげに言った。
「ふふん、ここがエルフ王国ブルーサファイアだよ。ヤマト、君はこの国の王を無視しようとしていたのよ」
「はぁ……」
実際、俺はエルフ自体には興味があるのだがエルフ王とか興味がないんだが……それは言わないでおく。
ちょっと待てよ?俺こんなすごい国の王と謁見するのに、みすぼらしい服装しかないぞ?
「ルシナ。俺 服装がこれしかないんだけど……」
自分の服を指し示す。
今来ているのは、長袖の平服と、長ズボンだ。それもかなりヨレヨレになっている。綺麗に洗濯はしていたけど森で暮らしていたので仕方ない。
「あ……そうだね!それは大丈夫、エルフ王ご用達の服飾店へ案内する予定だよ」
「お願いする。このままいくと恥かきそうだし」
俺達は、服飾店へ移動を開始した。
移動する間、エルフたちとすれ違うが、こちらを凝視する連中もいた。
「な、なんか目立ってる?」
「君達は容姿が目立つからね……。服を整えたらもっと目立つかも」
「な、なんでだろう?」
俺が疑問を口にすると、ルシナが笑った。
「ヤマトやリリスは、自分の容姿をあまり気にしていないんだね、そういうところ好きだよ。ボクは」
服飾店に案内されている間も、街並みをキョロキョロみていた。店なんかも見たことない店が多かった。精霊グッズとか売っている店があるけど、あれ何!? すげー気になる……。あ、エルフの市場なのかな?見たことのない果物が売ってるぞ……。出店とかもの凄い数だ。今日祭りなのかな?
キョロキョロ……キョロキョロ……
リリスが俺の様子をみて苦笑いをする。
「ヤマト……あまりキョロキョロするでない迷子になるぞ」
「あ、すまん。ところでルシナ、今日 祭りか何かなのか?あの出店の数は?」
「いえ?いつもあのくらいだよ。ここはカジスン市場っていうんだ。遊ぶには楽しい場所だよ」
そして、王家ご用達という服飾店とやらについた。とても由緒正しい店らしく1000年続く名店なのだそうだ。店構えは立派だ。レンガ造りの壁に、店の入り口は大きな一枚ガラス。見るからにお高そうな店。
俺は店の前に立ち、怯んだ。ここでの買い物は危険な気が……。
「ル、ルシナさん? 俺、お金あまりもってないんだけど……」
「ああ、大丈夫よ。王が出してくれるって言ってたし」
な……なんて気前の良い人なんだ。龍人でなければどうなるのだろう。
「さあ、入るわよ」
ガチャ……
ルシナと俺とリリスは、店に入っていった。
チャリン…… 部屋に入るとドアの呼び鈴が鳴る。
「ん?良い匂いがする……」
店に入ると、何か良い匂いがする。優しい品のある香りだ。
カウンターから、一人の店員がゆっくりと歩いてきた。ザ・執事のような美しい容姿をした男性エルフだ。年齢は30代前半? エルフなので何百歳ということもあるけれど……。
「いらっしゃいませ……ふふふ、香油を少しだけ撒いておいたのですよ、お客様」
「香油……(アロマオイルみたいなものかな)」
ルシナが笑顔で応対する。
「やあ、アルガルさん。王宮から話が言ってるはずだけど」
「ようこそ、おいでくださいました。ルシナ様、お話は伺っております」
アルガルと呼ばれたエルフは優雅に一礼する。なんともキザなエルフである。しかし美形なので似合っているから文句は言わない。
「いらっしゃいませ、私の名前はアルガル、当店アルガルの店長をしております」
優雅に一礼をするアルガルという店長。アルガル店長が営む、服飾店アルガル。
「アルガルさん。この二人だよ。王に謁見するからさ宜しくね」
「王に謁見なさるのですか!?」
「あれ?王宮から話が言ってなかった?」
「いえ、二人の来客に対応せよ……とだけ」
「なるほどね、そう!王様に会うんだよ」
「太陽王にあうのであれば、それは腕がなりますねぇ」
「太陽王?いや?エルフ王ですけど……」
俺がそういうと、リリスが解説してくれた。
「エルフ王は、別名『太陽王』と言われている」
「ふーん……。なんでだろう」
「金色の甲冑で戦場で活躍している姿から、そう名付けられた」
リリスがそういうと、ルシナが感心したような声を上げた。
「リリスさん。詳しいね!」
「あの……お客様……」
アルガルは、俺とリリスのほうが気になって仕方ないようだ。どんな人物に洋服を仕立てるのか気になるところなんだろう。
「そう、そう。ごめんね。アルガルさん。この二人を宜しく」
俺とリリスは、ルシナに押されてグイっと前に出される。挨拶をする。
「よ、よろしくお願いいたします」
「ふん……早くせい」
俺とリリスを見つめたアルガルは、口をポカーンと開けたまま数秒間停止する。
「……」
「……」
少し待ってみたが、リブートする様子がないので俺は話しかけてみる。
「……あの?」
「な、な、な……」
「な?」
「なんて美しい二人なんでしょー!!!???」
アルガルの叫びが店内に響き渡った。




