其の名はライ麦畑!!
御殿差し置いて主人公に大出世でゴザル!皆々様よ、拙者の活躍、かっぽじって良く拝んでくれよな!でゴザル!!
蜘蛛と人間とを混ぜ込んだ様な異形が少年に迫る!
《大熱波》によって文明が滅んで後、何処からか現れて地上に蔓延る、意志疎通の出来ないモンスターであった!
危うし少年!興奮した異形の口吻が、粘液でヌラリと光り、柔らかい部位から体液を啜ろうと少年に伸びる!
「覇ぁいやぁ!忍者カッター!」
闇夜を切り裂く正義の叫び!その発声の勢いすら乗せて手裏剣が異形の目に突き刺さる!いや!それだけでは無い!少年を救った何者かの投擲は、伸びた口吻にも一本突き刺り異形の襲撃を確実に阻止していたのだ。
何たる技量!この崩壊した世界でこれ程の忍者テクニックを維持しているのは彼しかいない!
「忍者大名、ライ麦畑、参上!」
マフラーたなびかせ、歪み圧し折れた鉄塔に立つ最強の忍者。行方知れずの少年神が寵童。サイバーパンク美少年くノ一、ライ麦畑だ!
「とうゎ!」
美しくしなやかな忍者アクロバットジャンプにて地上に舞い降りた妖精、いやさ美少年くノ一。ピンとウサ耳を立てた、少女と見紛う悪実最強の戦士が異形の蜘蛛人と対峙する!
その姿に見合うだけの強靭な、そして人間とは異なる肉体構造の異形。果たして人体破壊のスペシャリストたる忍者は太刀打ちできるのか!
(そう、忍者カッターや忍者ブレードでは力不足だ。こいつの出番か……隙あり勝機!)
不敵な笑みとは裏腹に内心慎重、冷徹に思考する僕らのライ麦畑!懐まさぐるはかつて、ビギナーの誰もが女神により下賜されし《もちもの鞄》、の発展系。その名も《超立方もちもの鞄》!その夢幻の鞄より、秘密の忍具、必殺の一手を掴みとる!
「覇ぁい!コンクリートブレーカァァァァ!!」
\\リンピョートーーッシャー♪//
九字護法SEによる仙道バッファーが秘密忍具の破壊力を底上げ!全てを破砕する杭打ち機が異形を大地に縫い付け、そして蜘蛛の巣ならぬ蜂の巣にする!
「ナハハ!雑魚雑ァ魚でゴザルー!」
(速攻で叩き潰して正解だったな。負けはしないが、逃がしていたかもしれん。蜘蛛の異形、恐ろしい相手だった)
外面と内面のこの落差!面の皮は厚く、そしてリバーシブル、流石は、仙道詭道何でも御座れの忍者大名、いやさ、サイバーパンク美少年くノ一、ライ麦畑だ!
気に入ったからもう一回言うね。流石はサイバーパンク美少年くノ一だ!
「やあやあ無事かねそこな少年。ここは大変危険でゴザル。どれ、送っていこう」
「ッ!」
踞る少年、ボロの肉体に活を入れ、おもむろに懐を開く。そこから煌めくは一振の白刃!すわ不意打ちかと手に汗握る僕ら視聴者を他所に、ライ麦畑はどこ吹く風。いや、体はいつでも臨戦態勢、しかしその目、その口その心臓は驚愕に震えた!
「少年、どこでそれを」
「やはリ、あなたこそガ伝説の悪実、ライ麦畑」
ボロの少年が手に握るはかつて、ライ麦畑が主君の為に振るいし宝剣《流星刀》!かつての弟子に授けた剣が、いま、目の前に戻ってきた!
「どうか、どうかワタシの仇討ち、見届けテ頂きたい!」
過酷な世界で、過酷な運命のなか出会った少年とサイバーパンク美少年くノ一、ボーイミーツニンジャ活劇、開幕だ!