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神の恩寵によって旅している



中で腰かけていると、不思議と祈りたさを覚えます。私はカトリックの小学校に通いましたけれど、カトリックの教会に行った経験が殆どありませんでした。(東京で一番という大聖堂に一度だけ行きましたが、その時は少しも心が動きませんでした。)カトリック建築は仏教建築と同様に、私の目には異世界のものでした。


だからでしょうか、フランス人の宣教師が建てたというサイゴンのそれに魅了されました。信じる気になったという意味ではなく。空間が魅力だったのだと思います。そして、信じているとも言えない神に向かって首をたれ、祈りました。「もしあなたがいるのなら、私たちがあなたの御計画通りになりますように。」


おかしな話です。いないはずの神なのに、その神がクリスと引き会わせてくれたような錯覚に陥っていました。これから神の計画に従って、クリスと人生を歩むようになるのだろうと、聖堂の高い天井を見上げているうち、そのように思われました。おもてへ出た時の、居合わせた物乞いに施しをする私は、神の恩寵によって旅しているに違いないと、ひとり決めしていました。




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