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第35話 大きくて速い

「合体した……こいつ……こいつ!」


 記憶が無いアークスは別にして、戦争や喧嘩を含めた戦いの経験が多いトワ、オルガス、そしてアシリアにとって、「相手を見上げる」ということは別に珍しいことではない。

 女の身である彼女たちにとって、体格の良い男や、種族ゆえの巨体を誇る者はいくらでも見てきた。

 しかし、それでも彼女たちは驚愕した。

 相手の体格にではない。


「ど、どういうことじゃ?」

「複数のキカイが……」

「一つに……なん、なんなのよ、これは!」


 自分たちからの反撃を受けて殲滅されかけたキカイたち。

 アークスたちの活躍によって残り三体になったところで異変が起こった。

 残る三体が「合体」という言葉と共に変形して一つになったのだ。

 腕回り、足回り、更には背丈まで通常の三倍の体躯を持った合体キカイ。

 これまで数多くのキカイを見てきたトワですら、初めて見る存在であった。



「捕獲」


「ッ!?」


「デリート、デリート、デリート―――――――デリート」


「「「「ッッ!!??」」」」



 合体キカイが見下ろしてくる。

そして、アークスを見て「捕獲」と一言呟くも、その他トワたちに対しては「デリート」と呟く。

 その違いについてはアークスたちも疑問を抱くところではあるが、今はそれより優先すべきは、「未知の巨大な敵が現れた」ということだ。


「救世主様、姫様、お下がりください! ここは小生がッ!!」

「ま、待って、オルガス! いきなり特攻しても―――」

「先手は譲りませぬッ!!」


 様子見も含めて先手必勝。まずはオルガスが動く。

 これまでキカイたちを切り裂いてきた、アークスより渡された剣を信じた。

 力強く跳躍し、剣を交差させながら合体キカイの頭部に斬りかかる。

 だが……


「ッ!?」

「あっ……」

「オルガスッ!?」


 激しい金属同士がぶつかり合う音が響くも、オルガスの剣は合体キカイの頭部に受け止められた。

 斬り裂けない。ヒビも入らない。


「こ、こやつ、これまでのキカイよりも更に強固な――――」

「デリート」

「ッ!?」


 次の瞬間、キカイの巨大な腕が変形し、筒状に。それはこれまで何度も見てきたキカイの攻撃。

 その攻撃の口に三つ連なって、今まで以上の大きさになっている。

 それだけで、百戦錬磨のオルガスもゾッとした。

 これまで一人のキカイが放つ礫一つで当たり所が悪ければ死んだ。

 それがこの大きさならば?



――消滅


「させぬわぁ!! 槍五月雨!!」


「獅雷牙突!! っ、か、硬い……」


「あっ!?」



 咄嗟にトワとアシリアがキカイの腕を突く。

 だが、今まで容易く貫いていたトワの槍ですらキカイの腕を貫けない。

 しかしその衝撃で、何とかキカイの腕を方向転換させる。

 次の瞬間には、合体キカイが斜め上に向けて爆音響かせて礫を放つ。


「つっ、なんと……」


 もはや礫の壁だった。

 もし、あと一瞬でもトワの判断が遅ければ?

 肉片すら残っていなかったかもしれないという予感が、オルガスに鳥肌を立たせた。


「デリート」


 そして、合体キカイの反応も早い。

 攻撃回避されても、即座に腕を下に降ろし、その矛先をアークスたちに向ける。


「ちぃ、こやつめ硬いわぁ! 儂が救世主殿より賜った槍でも貫けぬとは……ぬわははは、やってくれるの~」

「これまでのキカイたちとは違う……合体……こんなことまでできたとは……」

「くっ、せっかく希望を……だけれど、退くわけにはいかないわ!」


 キカイを葬り去れる武器を手にしたトワたちは、無双気分で戦っていたところで、更に強大な敵が出現したことに、まだ強気な態度は崩さない者の、内心ではかなり動揺していた。

 キカイがこれまで自分たち相手に使わなかった力を見せたということは、自分たちはキカイたちにとって脅威と判断されたと言える。

 しかし言い換えてみれば、これまで何百何千と同胞や民たちの命を奪い、抵抗する自分たちもまるで寄せ付けなかったキカイたちは、まだ全力を出していなかったともいえる。

 もはやキカイは怖くないと思っていたところで、まだ底も見えないキカイたちの力に、トワたちは改めて戦慄した。

 しかも、硬いだけではない。



「なら、俺がもう一度穿って砕いて喰らって……そしてもっと強い武器を造ればいいだけだ! そのために、俺がぶっ壊すッ!!」


「「「ッッ!!??」」」


「メチャカテービッグドリルッッ!!!!」



 アークスが腕を掲げ、鋼鉄の腕を巨大変形させる。

 その腕には巨大な螺旋。轟音響かせて激しく回転する。


「おっ、流石は儂の救世主殿じゃ!」

「たしかに、小生らでは無理でも、救世主様なら……」

「なっ、す、すごいわ……こ、これがご主人様の……」


 自分たちはダメでもアークスならばいけるかもしれない。

 そう思ったトワたちが期待を込めた目でアークスを見る。

 巨大な螺旋を掲げて走り出したアークスは一気に合体キカイへ向けて……

 

「デリート」

「えっ?」


 すると、その巨体で合体キカイはジャンプして、アークスたちの後ろに回り込んだ。


「うそっ!?」

「なんじゃと!?」

「は、はやいっ!?」

「馬鹿な! オークよりも遥かに巨体であの軽やかな動きを!?」


 大きく、硬く、更に速い。

 そして……


「デリート」

「させるかぁぁああ!! ドリル――――」

「デリート中断。捕獲」

「あっ!?」


 ドリル片手に皆を守ろうと飛び出したアークスだったが、合体キカイは素早く腕を伸ばしてアークスの身体を掴み取ろうとする。


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