第27話 第二の合体
ちょっとはしゃいで、大事な幼馴染であるオルガスと追いかけっこをしていたトワ。
しかし、一頻り満足したことで、二人もそろそろ浴場へ。
旅の疲れを癒し、明日へと備えるためにと、先に入っているクローナとアークスと合流しようとした……のだが……
「お、おおお、おおおお……」
「あ、あわ、あわわわ、あが、が……こ、これは……」
脱衣所の陰から中から覗き見る二人。
そこには、激しい嬌声と大きな音を立てて、ネットリと交わり合うクローナとアークスの……
「な、なんと!? ちょっと目を離した隙に、が、ガッツリとあの二人はヤッておるではないか!?」
「ひ、姫様、が、あ、ちょ、こ、これは……互いに互いの……う、う、ウロボロスッ!?」
「ちょっ、おい、クローナの奴、救世主殿のあんなところを舐め……え、しかも笑顔で?!」
「ちょぉぉおお、救世主様がクローナ様のあんなところに……か、顔をッ!?」
「あっ、態勢変わって……クローナが上になりおった!? うお、あんな動きを……」
「あ、あの、可憐で無垢なクローナ姫が……あんな淫らな微笑みを……しかも、姫様自らがあんな激しく……品のないポーズで」
アークスの実年齢は分からないが、容姿からも恐らくクローナと同年代。
そんなクローナよりもずっと年上のトワとオルガスだが、男性とのそういった経験は皆無。
ゆえに、二人も知識としては知ってはいるが、実際の経験がないどころかそういうものを見たこともこれが初めてである。
特にトワからすれば気になっていた男を妹に先にヤラれてしまったという想いもなくはなかったが、それ以上に濃厚濃密ネットリ激しく愛し合うクローナとアークスに目を奪われてしまっていた。
「ク、クローナも蓋を開けたらスケベだったのじゃな……」
「なんとも……し、しかし……確か淫らではありますが……」
クローナとてこれが初めてである。
既に何回ぶっ続けなのかは正直分からないが、初めてにしては濃すぎると狼狽えてしまう。
だが、同時にアークスとキス一つ、抱き合う行動一つ取ってみても、クローナの表情は蕩けているものの、狂っているわけではない。
「「幸せそう……」」
それは、姫としてでも、魔王軍の戦う者としての立場ではなく、一人の女としてただ単純に惚れた男と愛し合うという幸福を掴んだ姿だった。
「まさか皆と別行動の初日でこうなるとはのう……あやつはもっと段階を踏んで互いの気持ちを近づけてとか、そういう感じになるとおもっておったが……」
「トワが悪い……」
「は? なんでじゃァ!?」
「あなたが救世主様を手籠めにしようとするから、姫様はきっと焦ったのだ!」
「い、いや……そ、そんなこと言われても……」
トワもまたアークスを気に入っていた。
普通に操をくれてやってもよいし、体も別に抱いて抱かれたの関係になっていいと思っていた。
クローナもアークスに対してほのかな想いを寄せているのを姉として知ってはいたが、別に構わないと思っていたし、天然で色々とこういったことに無頓着な妹は大した脅威ではないとすら思っていた。
しかし、トワの予想から大きく外れ、クローナはちょっと目を離した隙に大人の階段を駆け上がっていた。
姉である自分でも経験のないことを、目の前で曝け出していた。
それは、全てトワが原因だったかもしれない。
トワがアークスに対して大胆な行動を取らなければ、クローナもそれに触発されて暴走することもなかったのだ。
気づいたところで、もう遅い。
―――♥♥♥
そんな一部始終を見られていることなどお構いなしな二人の行為もやがて一区切り。
トワとオルガスも見せつけられて自分たちも熱くなってしまっていたところ、まさに「精魂解き放たれた」かのような様子のアークス。
しかし、
「お、終わったのか? ……ぬおっ、で、デカ!?」
「な……あ、な、なんと逞しい……あ、アレが救世主さまの……」
「な、なんとも、めんこい顔してエグイ……」
「し、しかし立派で……わ、ひ、姫様が、あ、あんな!?」
「事後でもイチャイチャと……あ、ぬ? なんじゃ? 救世主様が甘えたように、お、おお……」
「あ……キカイ相手にもあれほど勇猛だった救世主様が、あ、赤子のように姫様に甘えて……っ、こ、これはクる……」
その後もなんやかんやでまったりとイチャイチャする二人に、トワとオルガスは悶々とさせられる。
そして、トワはもう開き直ったかのように……
「あ~~、もう、行くぞ!」
「え? トワ?」
隠れて覗きをしていた二人だが、トワは急に浴場へと足を踏み入れる。
その行動に立ち上がれずに乗り遅れてしまったオルガス。
しかし、トワは構わずスッキリした二人へ……
「あ……トワ……」
「あら、お姉さま~。……えっと……御覧のとおりです♪」
ピトっと抱き合いながら、ニッコリと微笑むクローナ。
その微笑は女神そのもの。
しかし、姉であるトワからすれば……
――もう、遅いです♪
と勝ち誇られたように見えた。
「あん?」
そこで「失恋」なんどと傷ついて泣いて引き下がるようなか弱い乙女であれば、クローナのソレは有効であった。
しかし、相手はトワイライト。
現役魔王軍最強の乙女。
「よいっしょっ、ぶちゅっ」
「んごぉ!?」
「へ……え、え!?」
遅かろうと、むしろそれがどうしたと飛び込んだ。
トワイライトは横たわるアークスの上にのしかかって、そのまま二度目の濃厚なキス。
「ちょ、お、お姉さま、何をしているのです?! 離れてください! アークスと私はもう両想いさんなんです!」
「んふふ~♡ ぷっは~、甘露じゃ~!」
「えっ、あ、こほっこほっ……え、え?!」
突然のキス。
慌てて引きはがそうとするクローナに、何が何だか分からずむせ込むアークス。
そんな状況下でトワはニンマリと笑う。
「ぬわははは、救世主殿。クローナの未熟な身体では精魂も中途半端にしか放てなかったであろう?」
「え、そ、そんなこと、いや、俺はクローナが好きだから!」
「知らぬ! この乳と股と尻が目に入らぬか!」
「ッ!?」
「この裸体をどなたと心得る! 恐れ多くも魔王軍最強にして魔族随一のセクシーボディのトワイライトなるぞ!」
何も羞恥も一切感じず、むしろ見せびらかすように己の裸体を見せつけるトワイライト。
クローナとは全く違うタイプ。
「ふぁ、あ、アークス!?」
「あ、こ、これは!?」
「んもう、どうしてまた臨戦態勢になるのです!?」
「ぬわははは、救世主殿はワシとの対戦を望んでいるようじゃ」
「そ、そうなのですか? アークス」
「え、ちが、た、ただ、こんなの見せられたら誰だって……」
「ほ~れほれ~♡ ぶるんぶるんぶるん♥」
それは、たとえ「クローナが好き」という気持ちに嘘偽りなくとも、男として反応するなというのが無理なもの。
「あ、……あわ……」
「はうっ、み、見てはいけません! アークス、目を瞑るのです! 揺れているものを見てはいけません!」
「はい、見ません!」
慌ててアークスに命じて目を閉じさせるクローナ。
だが、トワにそんなものは関係ない。
アークスの体が既に反応しているのであれば、もうそれだけで十分。
「では、どっこいしょ♥」
「え、え、えあ、え、えええええええええええええええ!?」
「ちょ、あ、うそ、お、お、お姉さまッ!?」
そして、乙女としての初めての経験に対するロマンティックな告白とか、想いを確認し合うとか、そういうものすらトワはすっ飛ばした。
「というわけで、救世主殿……いただきます!」
「ふぁ――――――――ッ!?」
……アッサリと
「こ、ここ、これは、しょ、小生はどうすれば?!」
結局出るに出られず脱衣所で覗き見るしかできないオルガスは顔を真っ赤にして大混乱。
「ト、トワ、あ、あなたは、なな、こ、こんなアッサリと王族の純潔を……し、しかも、クローナ様の前で……あ、あわ、あわ」
目の前で敬愛して幼き頃から仕える主にして、無二の友であるトワが男を喰う姿に、百戦錬磨にして多くの者たちから恐れられている大将軍が腰を抜かしてしまっていた。
「あ、ま、まるで、アレでは……さ、サキュバス……淫魔王……あ、あわ……し、しかし、しかし……クローナ様と同じで……め、目が……目が離せない……」
女としての幸せを見せつけたクローナと違い、トワの所業はどう見ても品性下劣な行いそのものである。
しかし、それでもオルガスは目を離せなかった。
「トワ……そ、そんなに……す、すごいのか? 救世主様は確かに可愛いが……あぅ、救世主様も我慢できずにあんなに乳にしゃぶりつい……ッ……あ、あんなに、しょ、小生も、赤ちゃんみたいに甘えられたい……うぅ……」
モジモジと内股になり、息荒くなるオルガス。
そして、そんなオルガスに構うことなく浴場ではヒートアップ。
「ぬわはは、どうじゃ~? 救世主殿は儂の方が美味であろう?」
「アークスはそんなことありません! アークスには私の方が……」
「しかし、いやだいやだと抵抗していた割には、救世主殿の体は正直じゃ」
「う~、私の方がアークスとお似合いなのです! だって両想いなのです!」
「ふふん、それがどうした」
それどころか、クローナまで鼻息荒くし……
「よし、では部屋に行こうぞ。ベッドの上で、どっちが救世主殿に悦んでもらえるか、儂と勝負するか?」
「望むところです! 私は負けません!」
「あ、あぅ……あ……」
まだまだ夜は終わらない。




