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第26話 泡姫と合体

 もう、体を拭いているのか、体をただ欲望に任せてこすり合わせているのか分からなかった。

 ただ、裸で抱き合い、泡でヌルヌルになった体を互いにこすり合わせながら、人生初めての感覚に二人は蕩けるほど夢中になっていた。


「え、えへへ、アークスの体……あ、あついです……」

「うっ、うお、あ、んひ、ク、クローナ、そ、それ、それまずいぃ!」


 そして、むしろ体を使って動いているのはクローナの方であった。

 アークスを床の上に背中から寝かせて、その上にクローナが覆いかぶさって互いの肌を密着させながら前後する。


「ん~♪ アークス……ん……嫌なら嫌って言うのです。もっとしてほしいのなら、そう言うのです」

「もっとしてほしいです! やめないでぇ!」

「は~い♥」

 

 もう、これは二人とも歯止めが利かなくなっている。

 そして、むしろクローナがここからいったん中断などと言うことは微塵も考えていなかった。

 むしろ、もっとアークスと肌を重ね合いたいという欲望の方が勝っていた。

 だからこそ、こうして抱き合うことで、アークスの体や自分の体にも「異変」が起こっても、そのことで驚いたりしない。

 むしろ嬉しいことだと胸が高鳴った。

 そして……


「アークス……んちゅっ」

「んぐっ!?」


 クローナからのアークスへのキス。

 それは二度目のキス。

 一度目は森の中で唇を軽く触れあう程度であった。

 しかし、その直後に姉であるトワにアークスの唇は奪われ、さらに自分がまだ到達していない濃厚なキスをしていた。

 そのことへの対抗心と、単純に自分が「したい」という想いから、クローナは積極的にアークスとのキスを深く濃厚に求める。


「ぷはっ……はあ、はあ……アークス……」

「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ、あ、あ……クローナ」


 もう呼吸をすることすら忘れるほど濃密にしたキスで、自然と酸欠になりそうなところで二人の唇は離れる。

 そのときアークスの瞳には、蕩け切ったクローナが、口元を涎で濡らして笑みを浮かべている姿。本来それはとてもはしたない下品なものであるはずが、互いの唾液が交じり合った液すらも神々しく輝いて見えた。

 

「アークス……初めてのキスよりもエッチなキスですよね? 舌を、れっ、て入れちゃいました」

「え、えっちなキスだ……」

「ふふ……お姉さまとどっちが嬉しいですか~?」

「ッ!? え、そ、それは……」


 片目ウインクで小悪魔のような笑みを浮かべるクローナ。

 ちょっと意地悪も込めて、


「お姉さまは美人で、おっぱいもお尻も大きくて、せくしーなのです……私は小さいですから……だから、アークスも……」


 だが、



「クローナも胸だってきれいだし、お尻もすべすべだし、俺は好きだし! クローナも美人だし、なによりもすごい可愛いじゃないか!」


「……ふぁ……」


「世界三大美女より美人でかわいいよ! クレオパトラや楊貴妃やヘレネーより美人でかわいいよ!」


「そ、そうですか……その、どなたかは存じませんが……くれおぱとらさんよりですか……」


 

 真っすぐなアークスの嘘偽りのない真っすぐなカウンターに、クローナは逆にやられてしまった。

 心臓の音が加速する。


「~~~、アークス!」

「ひぅ!?」


 クローナの擦り付けも加速する。

 

「く、クローナ、だ、だめだって、や、やめた方が、これ以上は、んぐっ、お、俺が……俺がダメになる!」

「ん、だ、だめって、ん、なんでですか?」

「お、俺が、もう変な気持ちになって……クローナに……やったらダメなことしちゃう! 我慢できなくなる!」

「だだ、だめなことですか? そ、それはいったい……どういうことなのか教えるのです!」

「はい、エッチなことです! もう思いっきりしたいです! 触ったり、キスしたり、舐めちゃったり、くんかくんかとかいんぐりもんぐりもろもろです!」

「ふぁ、ふぁぁ、そ、そ、それを、アークスは……私にしたいと……」

「あ……もう、命令で聞かないでくれぇええええええええ!」


 アークスはもうこれ以上はダメだ、限界だ。理性も肉体もあらゆる全てが限界だと白状する。

 しかし、クローナはもう止まらない。

 クローナは止められない。止めることができない。


「アークス、私はもうあなたになら何でもしてあげたいのです……何でもしてほしいです……り、臨戦態勢というのなら、存分に、か、カモンなのです!」


 体も気持ちも全てを――――



「で、でも、それでもあなたが望みや命令だけでそれをすることに後ろめたいというのであれば……おあいこで、わ、私もあなたに触ったりキスしちゃったり、舐めちゃったり……く、くんか? もんぐり? し、してもよろしいでしょうか?」


「ッッ!?」


「あ、あと……が、がまんできないのは……私も同じだったりなのです……」



 こういうことはしたことなくても、知識が乏しくても、ヤルべきことはクローナも分かっている。

 自分が求めるだけではなく、開放して受け入れるということも。


「……好き……」

「ッ!?」

「あ……」


 そして、クローナはその決定的な言葉を気づいたら言ってしまっていた。

 ここまでのことをしていながらも、その言葉だけはまだ言っていなかったし、クローナも確信が持てていなかった言葉だったのだが、気づけば口にしていた。

 そして、口にした瞬間、確信に変わった。


「く、クローナ……」

「あ、あはは……言っちゃいました……」


 出会ったばかりの二人。

 まだ、互いのことを深く知り合ったわけでも、一緒に時を過ごしてきたわけでもない。

 だがそれでも、クローナはその言葉を口にし、アークスはその言葉が全身に染み渡った。



「わ、わかりませんけど……たぶん……初めて出会ったあの日……あなたが私たちの希望の救世主様で……だけど、その救世主様は……カッコいいだけじゃなくて、かわいくて、一生懸命で……心が不安になったり、私たちと変わらない弱いところもあって……でも、それでも……」


「クローナ……」



 その告白に対してアークスは?

 最初にクローナから「アークスは私が好きですか?」の問いに対して、ハッキリと答えられなかったが、今、アークスの中でも確信に変わった。


「俺も……好きだ……」

「アークス……うふふ……私たちは両想いさんでしたね……」

「クローナ……」

「私、告白なんて生まれて初めてで……成功も初めてです」


 これまで床に横たわっていたアークスに覆いかぶさっていたクローナが、泡やら「それ以外」の滑りも利用して、互いの体を入れ替え、クローナが横たわるポジションに。

 そして、クローナは……


「……ど、……どんなもんだいです!」

「ッッ!!!???」

 

 クローナは両足を左右に広げた。


「アークス……私たちは……両想いさんですから……」

「ッッ!!??」


 その瞬間、アークスの中で切れた。理性が。

 もう、そこから先は命令も何もなかった。



「くれおぱとらさんよりせくしーな、わ、私の、唇も、胸も、お尻も、……だ、大事なところも……私もアークスのことを好きにしますから――――」


「クローナッ!!!!」


「むぐぅ――――――――――♥♥♥」



 気づけばアークスはそのままクローナを抱きしめながら硬い床に共に寝転がり、抱きしめ合い、そして……




――♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥



 もう、二人を隔てるものはなく、深く、深く、濃密に―――――








 大ジャンプで一線を越えた。



 



 姉と大将軍にコッソリ覗かれていると知らずに……

あけおめことよろ。新年一発目は泡姫でした

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