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ラジオ大賞3

寂れた街の交差点




 寂れた街の交差点、逢魔が辻のモノの(かい)

 どうか、私を喰ってはくれないだろうか。

 

 都会の喧騒の中、スクランブル交差点を行き交う人波が全て同じに見えたあたりで、私は壊れていたんだと思うのだ。

 何に疲れたわけでも、殊更、生活に困っていたわけでもない。ただ、青信号に向かって歩いていく、意味を失ってしまっていた。


 どうせ、独り身だ。


 思い切って仕事を辞め、田舎に引っ込んだものの、私の中の虚無感は満たされることはなかった。

 親の形見の懐中時計を見ながら、夜更かしをする私に「逢魔が時には化け物が逢魔が辻には妖怪が悪い子を食べに来るんだよ」と脅かして来たもんだと思い出す。

 

 宮司が居なくなり、すっかり廃墟になった無人の(やしろ)から伸びる参道に夕陽が影を落とす。

 交通量の少ない交差点で信号の作る長い影が化け物のように揺らいでいる。

 

 寂れた街の交差点。逢魔が辻のモノの(かい)

 どうか私を喰ってはくれないだろうか。


 山際に沈む夕陽の階調が道の先に見える。

 深い群青に染められる空に星が瞬く頃には、私の心も夜に溶けてしまえばいいのにと。


 寂れた街の交差点、私はただ立ち尽くした。




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 寂れた街に漂う雰囲気と虚無感がマッチしていて、情景が浮かんできました。
[良い点] ふいに、消えたくなる時が私にもあります。 その感覚をうまく表現していて、何度も読み返してしまいました。 感想返信でおっしゃっているように、詩のようでもありますね。 どうか、私を喰っては…
[良い点] 不穏ながらも、雰囲気にピッタリの空気感でした。交差点は自分も処理したのですが、筆のノリの違いに(;^ω^) [一言] 愛猫家 奴隷乙さまらしい逸品。殊更、筆回しのよさとか、語り口の流麗さが…
2021/12/02 16:44 退会済み
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