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春休み⑤

「知り合いに聞いたが、あの件に関わってる男は罪に問われないそうだ。現場の動画と音声ファイルを匿名で送ったのは正解だったな」


「そうか。まぁ、過剰防衛で捕まる可能性が否定しきれなかったからああいう手段をとったけど問題なかったならいいや」


「向こうはその男とメールの送り主を同一人物として断定して探してるぜ」


「終わったことをいまさら蒸し返しても意味ないだろ」


「それもそうだな。でもいいのか?お前はわざととはいえ暴行を受けてるんだ依頼してくれれば治療費と慰謝料とるぜ?」


「いいよ。特にお金に困ってるわけじゃないし、正体がばれる方が面倒だし」


「お前は相変わらずだな。まぁ、お前の好きにするといいさ」


「心配してくれてありがとね」


「気にすんな。大事なグループの仲間だからな。また、なんかあれば連絡してくれ」


「分かったよ」


「じゃあな」


そう言ってマサさんは電話を切った。


マサさんは親父の大学時代の友人で現役の弁護士、中学の時に知り合って意気投合した俺はマサさんに法律と弁護士の技術を教わった。


マサさんは俺を一流の弁護士になれると言ってくれたが、俺は弁護士になる気は今のところない。


というより、俺はどんな職業にも興味がなかった。


両親の友人たちのおかげで技術的にはどんな業種でも問題ないが、俺の心情はまだやりたいことが見つかってない。


だからこそ、高校生活を楽しんでほしいと美紀さんは言っていたが、正直高校で何か変われると期待するには俺の今までの学校生活はダメすぎた。


だからこそ、俺は特に期待せず周囲のモブとして3年間すごしたいものだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


高校生活への期待など一ミリない俺のもとに美紀さんから電話がかかってきた。


俺はその電話の内容によって高校生になる気をなくした。


なんだらいますぐ中退してどっかの知り合いの会社に入りたい。


そう思うほど俺は今、気力を失っていた。


さて、俺に一体何があったかと言うと・・・


「それじゃあ、午後からそっち行くから一緒に新入生代表挨拶の内容を考えましょう」


そう、新入生代表挨拶を俺がすることになったのだ。


・・・・死にたい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


約束通り、午後1時に俺の家に来た美紀さんはベットにうつ伏せでうなだれている俺を見てため息をついた。


「薄々こうなってるんじゃないかと思ってたけど案の定ね」


「どうやって入った」


「私は理央から君の部屋の合鍵をもらってるのよ、このマンションに一番近い理央の友人は私だからね」


「母さん・・・何してんだよ」


「ちなみに海くんから合鍵をもらってるのはマサよ」


「親父~」


鈴木理央と鈴木海斗は俺の両親だ。


最近連絡がないが恐らく仕事が忙しいのか久しぶりの二人っきりの生活に色々盛り上がってるのかのどちらかだろう。


・・・・十中八九後者だと思うが。


「それじゃあ、さっそく打合せしましょ。起きなさい」


「やだ」


「文句言うなら迂闊に入試で全教科満点出した自分に文句言いなさい」


「第一に俺が入試主席になることがおかしいだろ。ペーパーテストはともかく面接試験でマイナス食らってるはずだぞ」


「それは否定しないし、実質面接試験での君は下の上の成績だったけど、ペーパーテストで全教科満点はやりすぎたわね」


「あの学校なら俺より入試成績高いやつがいると思ったんだよ・・・」


「確かに次席の女の子は君といい勝負してたわね。君が1教科でも95点を下回っていたら主席はその女の子だったし」


「なぁ・・・」


「無理よ」


「まだ何も言ってないんだけど・・・」


「言わなくても分かるわ。新入生代表挨拶を辞退したいんでしょ?」


「なんで無理なんだよ」


「次席の娘の家に配慮してよ」


「家?」


「次席の娘は結構裕福な家なのだけれど、もしあなたが新入生代表挨拶を辞退したらその次席の娘は屈辱を感じるわ。かなり負けず嫌いな娘だったから辞退理由が目立ちたくないからだってバレたらもっと面倒になるわよ」


「・・・これだから女は苦手なんだ」


「とりあえず、あなたなら挨拶の内容はすぐ書けるでしょ?(アスタリスク)先生?」


「その名前で呼ばないでくれ」


「あなたがこうなることは予想してたからね。私が呼んでおいたわよ」


「誰を・・・」


すると、俺の家の呼び鈴が鳴った。


玄関ではなく1階の入り口からの呼び出しだ。


「来たわね」


「おい、まさか・・・」


「そのまさかよ」


そう言うと、美紀さんは慣れた手つきで鍵を解除して、訪問客を迎え入れた。


「いらっしゃい。お宅の売れっ子作家さんがうなだれてるから何とかしてちょうだい」


「わかりました!!さぁ、先生!!起きてください~。お仕事じゃないけど私が来てあげましたよ~!!」


喧しくベットの上でうなだれている俺を揺さぶる彼女の名前は工藤香織。


出版社に勤めている編集者で・・・


「あなたなら高校の新入生代表挨拶程度10分もあればかけるでしょ~!!(アスタリスク)先生!!」


そして、今世間で大人気の小説を書いてる作家(アスタリスク)こと俺の担当編集で母さんと美紀さんの同級生だ。


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