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入学式⑤

入学式初日に絡んできた女につかまった俺は一気に眠気が吹き飛んだ。


そして、すぐにつかまれている腕を振り切り、教室から逃げ出そうとした。


しかし、教室に入口には生徒会長がいて、俺の逃げ道をふさいでいた。


「やぁ、また会ったね。誠也君」


「さっきぶりですね、生徒会長。これから帰るので通してくれますか」


「ごめんね。それは聞けない相談だ」


「なぜですか?」


「私の幼なじみが君に話したいことがあるらしくてね。私は話す場所を提供する代わりにその話に同席させてもらう約束をしているんだ」


「俺には関係ないので通して下さい」


「そういうわけにはいかないね」


俺と生徒会長が押し問答していると再びさっきの女が俺の手をつかんできた。


「今度こそ逃がしませんわ!!さぁ、一緒に生徒会室に行きますわよ」


もう一度、つかんでる腕を振り切ろうとしたが、この女、俺の腕をつかむだけじゃなく、抱きしめてやがる。


・・・胸でけぇなこの女。


すると、何を思ったのか生徒会長までが俺の腕に抱き着いてきた。


制服の膨らみで分かっていたけど・・・この生徒会長、胸デカすぎじゃね。


左右から抱き着かれたことで俺は完全にキャパオーバーし、思考停止してしまった。


こうして、俺が腕に感じる幸せに思考停止している間に生徒会長と絡んできた女、そしていつの間にいたのか会計と書記の先輩まで俺の背後から制服をつかんでいる。


そんなこんなで周りから注目されながら俺は生徒会室に誘拐された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さてと、それじゃあ話をしようか」


俺を生徒会室に誘拐した生徒会長は俺の目の前の椅子に座るなり、そう言ってきた。


ちなみに俺に絡んできた女は俺から見て左側、会計の先輩が右側、そして書記の先輩が右斜め後ろの椅子に座っている。


「俺にはあなたたちと話すことはないですけどね」


「まぁ、そういわずに」


「話を始める前に自己紹介してもよろしいですか、亜美」


「え?聖羅。彼に名乗ってなかったの?」


「タイミングがなかったのです!!」


「そっか。じゃあ、私たちはもう自己紹介しちゃったし、簡単に自己紹介しちゃって」


「それでは、改めて私の名前は林道聖羅。林道カンパニーの社長令嬢です」


美紀さんから大企業の社長令嬢だって聞いてたけど、よりによって林道カンパニーか・・・。


「それで、話が終わったなら帰っていいですね。失礼します」


「ちょっと待ちなさい!!まだ私が名乗っただけで、一ミリも話が終わってないのですが!!」


林道が何か叫んでいるが、俺は無視して生徒会室を出ようとしたが、案の定逃走防止要因の書記の先輩によってとうせんぼされてしまった。


「まぁ、少し待ってくれ。すぐに話を終わらせるから」


帰ろうとした俺に向かって生徒会長がそう声をかけてきたので渋々俺は席に着いた。


「さてと、じゃあ早速だが聖羅、君は彼に用事があったのだろう」


「えぇ、鈴木誠也。あなたが入試主席になったことを聞いた私はあなたに聞きたいことがあります」


「俺に答えられる範囲に質問なら答えます」


「あなたの学力はどれほどなのですか?」


「どういうことですか」


「入試の点数は本来、公開されないのですが私は亜美からあなたの入試の点数を聞きました。全科目で満点だそうですね」


「生徒会長が個人情報を他人にリークしたんですか」


俺がそう言って、正面に座る生徒会長をにらむと、彼女は微笑んでいた。


「いずれ表に出ることになるさ。この学園が設立された30年が建つけど入試で満点を出した生徒は今まで一人もいなかったからね」


「だからと言って、人の個人情報を他人に伝えていい理由にはならないですよ」


「この学園の入試の難易度は普通ですが、満点を取ろうとすると桁違いに難易度が跳ね上がります。だからこそ、あなたの学力がどれほどなのか聞いたのです」


「それを聞いてあなたになんのメリットが?」


「あなたの学力は入試の成績から考えて間違いなく上です。だとすればあなたには私の友人になってもらいたいのです。そうすれば自分の学力をもっと伸ばすことができるはずですから」


「そうですか」


「私の友人になってもらえますか」


林道はそう言って立ち上がり、俺に右手を差し出してきた。


俺はその手を少し見つめ、そして林道の眼差しを見つめ・・・彼女が差し出した右手を叩き落とした。


握手を拒否した俺をその場にいた全員が驚愕の表情で見つめていた。


「話が以上なら俺は失礼しますね」


俺はそう言って、席を立ち、出口に向かった。


もちろん書記の先輩が出口の前に立ちふさがっていたままだ。


「邪魔だ」


俺がそう言って殺気を放ちながら、低い声で言うと書記の先輩は後ずさりながら腰を抜かしてしりもちをついた。


俺はそんな先輩に目もくれず、そのまま生徒会室を出ていこうとした。


「まってください!!」


そんな俺を呼び止めたのは、林道だった。


「なぜですか?」


「俺にメリットがない。むしろデメリットのほうがあまりにも多すぎる」


「友人関係を構築するのにメリットデメリットを気にするのですか」


「これ以上お前の疑問に答える義務は俺にない。だがこれだけは言っておく。金輪際俺にかかわるな。林道だけじゃない。工藤、安藤、安立お前らも同様に俺にかかわるな」


俺はそう伝え、今度こそ生徒会室を出て行った。


生徒会室を出て、そのまま校門まで出てきた俺は美紀さんやマサさん、香織さんからのメッセージに返信しつつゆっくりと自宅への帰路を進んだ。

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