入学式④
新入生代表あいさつは無事に終わり、問題はなかった。
あえていえば、登壇したときに新入生保護者のスペースに沙織さんとマサさんが笑顔でこちらに手を振っていた。
俺は顔が引きつるのを我慢して美紀さんをにらむと美紀さんは顔をそらしてこっちを見なかった。
間違いなく美紀さんが沙織さんとマサさんを招待したにちがいない。
とりあえずあの3人には今度なにか仕返しするとして、今俺は最大級のピンチを迎えている。
なぜピンチを迎えているかと言うと3方向から凄まじい視線が注がれているからだ。
同じクラスから一つ、違うクラスから一つ、そして上級生のクラスから一つの計三つだ。
ばれないように視線の先を見ると思わずため息をついてしまった。
それもそのはず、すべての視線の理由に心当たりがありすぎるからである。
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入学式のほうは特に問題がなく終わった。
そして教室に戻った瞬間、俺は一目散にトイレに逃げた。
なぜなら、教室に戻った瞬間、入学式前に俺に声をかけてきた女がすごい形相で俺の席に近づいてきたからだ。
俺は全力で逃げた。
ちなみに後ろから「まちなさい!!鈴木誠也!!」とさっきの女が叫んでいたのを聞こえないふりをして俺はトイレにこもっている。
しかし、そろそろ美紀さんが教室にもどってくるだろう。
俺はそろりそろりと音をたてないように男子トイレから出て、教室の様子をうかがうとまだ、美紀さんは来ておらずあの女も教室にいなかった。
俺は教室に戻り、イヤホンをはめて、チラチラとこちらの様子を見てくる周りを完全に無視して読書を始めた。
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その後、あの女は美紀さんと一緒に教室に戻ってきた。
あの女は俺を見ると睨んできて、美紀さんは睨んでいる女とそれを完全に無視している俺を交互に見てため息をついていた。
「それじゃあ、改めて入学おめでとうございます。このクラスの担任の遠藤美紀です。一年間よろしくね」
美紀さんはそう言って、簡単自己紹介を始めた。
ちなみにあの女はいまだに俺をにらんでいる。
飽きないもんだなと思いつつ、俺は美紀さんの話を聞きながしつつ、俺は半分寝ていた。
寝ている間に美紀さんの話は終わり、俺たちの自己紹介や今後のことなどは明日からということになり、明日の日程の話をした後、解散になった。
寝ていたため、初動が遅れてしまった。
そのため、恐れていたことが起こってしまった。
「もう逃がしませんよ。鈴木誠也」
そう、ウトウトしている間に近づいていたあの女につかまってしまったのだった。